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第85話 自由の矛編4-08 「頼れる小さな背中」

第85話を公開致します。



20150816公開

   挿絵(By みてみん)



あらすじ

 巨人から奪った砦での生活が始まって24日目。

 取り残された現代人は、異世界での生き残りの為にラミス王国への外交団を派遣する。

 王族との会見で主導権を握った外交団は、最大の難関を超えていた。



11-08 『頼れる小さな背中』 西暦2005年11月19日(土)昼


 私たちにとっての最大の難関は何とか突破出来た様だった。

 その後も導入する食材や芥子の実などの細かい交渉は続いたが、おおむね問題無く打ち合わせは終了した。


「これでほぼ交渉の大筋は纏まったな? では、こちらから一つ、要望するぞ。ハルカと言ったな、其の方、この後に行われる式典に参加せよ」


 ハルちゃんの通訳を聞いた貴志君の答えにはいぶかしげな声音が混じっていた。


「その式典の事は聞いておりませんが?」

「そうであろう。元々はネキフィスとアラフィスの王都帰還に合わせて行われる凱旋式典だったからな。それにハルカを登場させる」


 さすが王政と言うか、即決過ぎるでしょう、デュラフィス王・・・・・

 貴志君はあっさりと受け入れた様だった。


「で、どの様な登場の仕方にする気ですか、王よ?」

「我が国民は其の方たちの事をほとんど知らぬ。ここまで深い交流を持つ予定では無かったので、其の方らの到着自体も夜の内に済ませたからの」


 やっぱり・・・

 確かに、ラミス王国にとっては、いざとなれば押し潰そうとしていたのだから、わざわざ国民に知らせる必要性を感じていなかったのだろう。

 占領した後で『消えたラミシィナの天地』を発見して、その地を版図に加えたと大々的に宣言すれば、劇的な効果を得られると考えてもおかしくは無かった。

 ラミス王国にとって、『ラミシィナ(主神に加護された一族による信徒たち)』とは、ラミス王国にとってそれほどの影響力を持っている筈とハルちゃんも言っていた。


「だが、さすがにここまでの交流を持つとすれば、お披露目は不可欠と言わざるを得ん。だが、組む相手が侮られる様な力しか持たぬと思われては面倒だ」

「仰る通りでしょう。グザリガ族に対抗する新たな勢力が現れた事、その勢力が信頼に足る武の力を持っている事を知らしめる事も政治の上では必要な事は理解します」

「そこでだ。其の方らの中で一番の武を持つハルカの力を披露する事は、其の方たちにとっても意味の有る事であろう?」


 この辺りの認識は、どちらかと言えば『個の武』を重んじるラミス王国と『組織の武』を重んじる私たちとの違いだった。

 ハルちゃんに聞いた事が有る。


『色んな隊員から聞いた話からすると、ハルちゃんて自衛隊よりも強いんじゃない?』


 答えは、変な事を言い出す素人に呆れる様な表情と共に帰って来た。


『まさか。昔の偉い人が言った言葉に《百発百中の砲一門は百発一中の砲百門に勝る》というものが有るのですが、それと同じ間違いをしていますよ。《戦いは数だよ、兄貴!》が真理です』


 多分、私の顔には?マークが浮かんでいたのだろう。

 ハルちゃんは解説をしてくれた。


『さっきの言葉は精神論と一緒なんですよ。《百発百中の砲》は《百発一中の砲百門》に対して100回撃たなければなりませんよね? 同じペースで《百発一中の砲百門》が撃つとすれば、どうなりますか?』

『えーと、最初に100発の砲弾が《百発百中の砲》に降り注ぐから、その時点で勝負が付くわよね?』

『万が一、最初の砲弾が命中しなかったとしても、2発目には確率論的に《百発百中の砲》に命中弾が当たります。それと一緒で、私がいくら強くても、個対個で戦わない限り、私に勝ち目は有りません』

『個対個なら、勝てるんだ・・・・・』 


 ハルちゃんはニヤリと笑った。

 その笑顔を思い出した私は、心の中で苦笑いを浮かべた。その後に知ったハルちゃんの最大火力たるパチンコ玉を加えれば、ハルちゃんは『1人でも数を凌駕する』としか思えなかった。


「分かりました。春香を式典に出させましょう」

「とっておきの紹介にしてやる」


 この時の私は、まさかハルちゃんがラミス王国内で異常な人気を得るとは全く思い及ばなかった。

 王族との会談が終わり、貴志君とハルちゃんの2人が部屋に残って数分だけ王族の6人とだけで話をして(打ち合わせでもしたのだろうか?)、元の部屋で待機した私たちだったが、1時間くらいしてから連れられた先は、ローマに在るコロッセオの小型版の様な円形の闘技場だった。

 収容人員は多分、2~3万人くらいってところだろうか? 本家のコロッセオで5万人くらいだから、本家を見た事のある私からすれば、小さく感じられた。

 ただし、ローマのコロッセオと違う点が有った。

 それは実際に観客が入った時の熱気だった。

 王族の登場に伴う熱気というか、歓声がローマンコンクリートにそっくりな建材に跳ね返って私たちの耳を何度も打っていた。

 しばらく待っていると、誘導の為の兵士が闘技場に繋がる場所に設置された私たちの待機場所にやって来た。



「いいか、春香、やり過ぎるな。無難に演舞すればいいんだからな」

「分かっているよ、貴ニィ。おしとやかにするって」


 そう言って、ハルちゃんは円形の闘技場の中央に向かった。




 その小さな背中がやけに頼もしく思えたのは、きっと、私だけでなかったと思う・・・・・・


 


 


如何でしたでしょうか?


 大急ぎで書いたので、プチコロッセオ登場までしか辿り着けませんでした。

 次回は、春香嬢が賜る事になる二つ名誕生の話です。

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