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黒いトースト @ 斎藤さや

 一年前の夏、二週間ほどオーストラリアにホームステイをしに行った。行く前の説明で、オーストラリアで有名な食べ物として「VEGEMATE(ベジマイト)」が紹介された。私は名前から野菜を使った物かと思っていたが、それ以上は何も思い付かなかった。ただ、大半の日本人が嫌いな味――不味いと言われただけで、具体的にどんな味かも分からなかった。けれど、行った時に食べられるだろうからと調べはしなかった。


 ホストファミリーの家で生活して二日目、早くもベジマイトと遭遇することになる。


 その日の朝食はトーストだったのだが、「ベジマイト塗ってみる?」と何やら黄色いラベルの貼られた瓶を渡されたのだ。中を見ると黒いものが入っている。その色と瓶詰めというところから、私は海苔の佃煮を連想した。受け取って恐る恐る匂いだけ嗅いでみると、珈琲をぎゅっと凝縮したような苦い匂いが鼻を突き抜けた。

 先ほども言った通り私は海苔の佃煮を連想していたので、味も甘いのかなと思っていた。なので予想が外れて意外だったこともあり、顔をしかめてしまった。それでホストファミリーのお母さんは、私が嫌いな匂いだったと思ったのかベジマイトを仕舞ってしまった。驚いてしまっただけだと伝えたかったが、咄嗟に言えなかった。


 数日後、トーストにジャムを塗るかどうか聞かれた際、思いきって「ベジマイトが良い」と伝えてみた。先日のことがあったから大丈夫?と言いたそうな顔をしていたが、ベジマイトを塗ってくれた。

 トーストにバターを塗り、その上から薄く塗られた黒いもの。やはり苦そうな匂いのするそのトーストを一口かじってみた。



   『美味しい』



 塩気が強く若干苦いが、それがトーストと良く合っている。先に食べた友達がもう食べたくないと言っていたのが嘘のように美味しい。

 お母さんに美味しいと伝えると、「本当?良かった」と笑顔で返してくれた。何だかオーストラリアの人達に一歩近付いたようで嬉しかった。


 お土産にとチューブに入ったベジマイトをいただいたので、帰国してからさっそくトーストに塗ってみる。当たり前だけれど、同じしょっぱさが口一杯に広がる。日本の物では無い味に懐かしさを覚えるという初めての経験。一度に沢山食べたいとは思わないけれど、たまに無性に食べたくなる思い出の味だ。





VEGEMITEは一部の輸入品店にて日本でも買うことが出来ます。皆様のお口に合うかどうかは保証しませんが(笑)


作り方


1食パンをトーストする

2バターを塗る

3ベジマイトを薄く(必ず薄くです)塗る

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