夏のごちそう @ 酒人月歩
我が家で夏のごちそうと言えばチャージャー麺。
本場中国では発音はチャージャーではなくツァージャンになるようだが(と言っても地域によって発音が若干違う)、麺に肉味噌をかけて絡め、茹でたりした野菜と食べるという基本は同じである。
盛岡にも名物としてじゃじゃ麺があり、ほぼ同じ料理と言っていい。
母の料理でもご馳走の一つであり、私や兄だけではなく、母と不仲な父もこの料理は大絶賛する。
そんなチャージャー麺は中国の家庭料理。餃子と同じようにそれぞれの家庭でトッピングや肉味噌の味が違う。
私の家の味つけは専ら和風の甘辛だ。
甜麺醤という甘い味噌は使わず、赤だし味噌と白味噌(正確には信州味噌)にみりんや砂糖をいれる。
店やコンビニなどで売られている物と違い、肉味噌の水分は少なめでぽろぽろぽってりしている。片栗粉も使わない。
肉味噌の具は豚ひき肉又は鶏ひき肉を使い、茄子、椎茸、生姜、ネギ、にんにくを入れる。時折タケノコもいれるが、なくても問題はない。
麺は我が家では素麺または冷麦。兄曰く、素麺よりも冷麦の方が纏う水分量が少ないので味噌の味が薄くならないので冷や麦が最適らしい。その代わり、中華麺には面白いほど合わない。
トッピングは薄焼き卵を焼いて細切りにした錦糸卵、キュウリの細切り、モヤシを茹でたもの、白髪葱、季節により茗荷など簡単なものばかり。
肉味噌さえ作ってしまえば簡単な料理だったりするが、野菜を刻む手間がやたらとかかるのが難点だ。
さて、高校生の時だったか。チャージャー麺を友人たちに振舞ったことがある。
一口食べたあと、友人たちはただひたすら、かなりの勢いで麺を啜っていた。勿論無言で、だ。
余りの勢いの良さに呆然としながら
「皆の家でも出るでしょ?」
と聞くと
「出ないよ!」
と全員にハモられてしまった。
チャージャー麺は小さい頃から夏の食べ物として出されていたので、その頃の私はてっきり各家庭でも出るもの……例えるならハンバーグのように普通に出るものだと思っていたのだ。
もちろん、似たような料理も出ないという。
その時感じた衝撃が、恐らくカルチャーショックというものだろう。私はこの時まで、ラーメンや酢豚の如く日本に馴染んでいる料理だと思い込んでいたのだから。
その後アジアの麺類がシリーズとなった袋麺が発売され、その中にジャージャー麺がありようやっと「チャージャー麺は日本の食卓にはあまり出ないものだ」と納得したのだった。
家庭によって違う料理などいくらでもあるが、そもそも食卓に上がることがない料理があるという認識を初めてしたと言ってもいい。
各国・各地域の文化から更に、各家庭の中で築かれた文化の違い。一番解りやすいのはやはり料理なのだろうと思い知った出来事だった。
【チャージャー麺の作り方】
肉味噌(家族4人分くらい?)
・豚か鶏のひき肉…250~300g
・長ネギ…1本
・生姜…ひとかけ~ふたかけ
・にんにく…生姜とおなじくらい
・茄子…中くらいのものを3~4本
・椎茸…3,4個
・赤だし味噌…大匙1~2
・白味噌(信州味噌?)…1~2(味噌は同量入れる)
・酒、味醂、砂糖…適宜
トッピング
・キュウリの細切り
・錦糸玉子(薄焼き卵を千切りしたもの)
・白髪葱
・茹でもやし
・(あれば)茗荷を刻んだもの
麺
・冷麦でも素麺でも細めのうどんでも。
・味噌を合わせて酒で柔らかいペースト状にしておく。
・長ネギの白いところの外側で白髪ねぎを作り、中心と青いところはみじん切りにします。
・生姜、にんにく、椎茸、茄子もみじん切り。茄子の皮は剥いてもそのままでも。
・フライパンに油をひき、弱火で加熱する。
・生姜、にんにくを入れ、香りが出てきたら葱を入れて炒める。
・茄子と椎茸を入れて炒め、茄子から水分が出てきたらひき肉と酒を入れて更に炒める。
・お肉が半生くらいの時に砂糖とみりんを入れる。目安は大匙1~2だが、甘めがいい人はもう少し入れても。(味見しながら入れてください)
・水分があるうちに味噌を入れる。水分を飛ばすように炒め、味見してちょっと味が濃いかも?と思うくらいなら出来上がり。
・麺を茹でている間にトッピングを作ってできあがり!盛り付けは一人ずつでも各々取り分けるようにしても。
・肉味噌が余ったらご飯にかけて食べても美味しいですよ。