父のカレー @ 足軽三郎
うちの父は料理をしなかった。
まあいわゆる戦後の生まれの男である。この世代だと男子厨房に入るべからずという主義の人も結構いることを考えると、無理からぬところだ。
子供の目から見て、という断りをつけるが料理が嫌いというよりはむしろ料理する機会がないまま育ち縁遠くなった、というように見えた。
しかしである。
私が高校生くらいの頃からそんな父が時折厨房に立つようになった。専業主婦の母がおり、もちろん料理は母の方が上手なのであえて父が作る必要はどこにもないのだがたまに「自分が作る」と嬉々として言うのである。
私や弟や妹は最初何が起こったのかと思ったが出された料理が意外にまともなこと、別に悪いことをしているわけではないのでまあたまには父が作ってもいいよねーと流していた。
しかし何回か続くうちに一つの疑問が生まれた。
カレー
カレー
カレー
そう。父が作る料理は常にカレーしかなかったのだ。それも別に特別手がかかった特殊なものではなく、ごく普通の市販のカレールーを使い、具も牛肉、じゃがいも、ニンジン、玉葱の何の変哲もないカレーだ。
ああ、そうか。父はカレーが好きだから自分で作りたかっただけなのかと何故もっと早く気付かなかったのだろう。
一週間に一回はカレーが出てほしいと希望する父にとってカレーを自作して家族に振る舞うというのは自分もこれくらいは出来るんだぞ、というささやかな自慢だったのかもしれない。そう思えばあの少し水分少なめでルーが重たく、母よりじゃがいもが大きめに切られた父お手製のカレーもほほえましい。
たまに母が所用がありいない時があると「今日はお父さんが作るから」と言い、言わなくても分かるのに「カレー作るから」と毎回言ってたなあと家を離れ家庭持ちになった私は思い出す。市販のカレールーでも違うブランドのルーを半々に混ぜたりして工夫していたなあ。父は子供の頃苦労していたようだから、もしかしたらカレーくらいしかご馳走が無かったのかもしれないな。
家を出て東京で暮らす私は結婚して家庭を持った。父よりは作れる料理のレパートリーは多いとは思うものの、カレーだけは未だに勝てる気がしないのはきっとカレーに対する思いが違うからだろう。しかし傾向は似ているらしく、やはり私が作ると水分が少なめのどろりとしたルーになる。
争えないのは舌の記憶かそれとも血か。今度は少し本気でカレー作りに挑んでみようかと思っているが未だに実現していない。そのうちそのうちと繰り返しつつも私のカレーは何の工夫もない普通のカレーに止まり続けている。
レシピ
牛肉カレー用、じゃがいも、にんじん、たまねぎ、市販のカレールー二種
1 カレールー以外の材料を適切な大きさに切る
2 牛肉と玉ねぎを鍋にいれて炒める
3 炒め終わる→水入れる。沸騰させる→じゃがいも、にんじんを投入
4 茹でる。じゃがいもに箸が通るくらいの柔らかさになったら火を止める
5 カレールーを入れてさらに煮込む(あまり手をかけたくないなら5分でもOK。10分やれば結構十分。15分以上の人は時間に余裕があればの話)
6 ごはんにかけて出来上がり!
必要なスキル
野菜の皮むき カレーが好きなこと ルーは好みによるがJワカレーとBモントカレーを両方使うことが多かった。