とある勇者のはなし
初めての投稿になります。
誤字脱字や読みにくい等々のアドバイスありましたら、教えていただけると幸いです。
「それでも、あなたは勇者だった」
これは、呪いなのだろう。なぜならぼくはそのひとの顔を、今でも忘れられないのだから。
一人の道化の話をしよう。
その愚者は生まれつき勇者だった。というと語弊があるだろうか。馬鹿馬鹿しいことに、この世界での英雄とは功績で語られるものではなく、初めから役割としてあたえられているものだった。
母親の足の間から這い出てきた瞬間に精霊からの祝福をもらい、まるでげっぷをするくらいの容易さで魔法を繰り出し、しゃべりだすのと同じタイミングで伝説の武器を操ってしまう。そんな子どもをヒーローにしたてあげるのに誰も反対はしない世の中なのだ。
そしてそのクソ餓鬼も、当然のようにそれを受け止めていた。
病気一つせずすくすくと成長してしまったそれは、ちょうど成人の儀を終えたのちに国に命ぜられ旅に出ることになる。
何のためか。
もちろん、魔王退治のために。
ちょうどそのころ、我が国では隣国との戦争真っ最中だった。小競り合いならともかく、国と国を挙げての総力戦だ。近隣諸国を巻き込みつつ、途中王位継承(先王が死んだから)や一時休戦(あまりにも物資が不足してしまったため)を挟みつつ、しかしだらだらと、しかし犠牲者を増やしながら。もはや何のために戦っているのか、疑問を感じながらも惰性的に(なんと100年目に突入してしまった)惨劇を繰り返していたある日。とある噂が王都を覆い始めた。
―――この戦争は、魔王が仕組んだことなんだって
あまりにも突拍子もない話で、すぐさま消え去るものと思われたが。
「なんでも、人間を根絶やしにしようと、昔の王様をそそのかしたって」
「ぞっとするような美しさで惑わしてくるらしいぜ」
「常に隣にとてつもなくおっきなドラゴンをはべらせているんだってよ」
「背丈は小さいが、子どもだと思って甘く見てたらぱくり!そのまま食べられておしまいさ」 「肌も髪も真っ白なのに、目だけは真っ黒」
「おまけに、口は常に人の血で赤い」
「魔王だ!」
「そいつは間違いなく魔王だ!!」
「俺たちの敵だ」
「恐ろしい!」
「この長く続く惨たらしい戦も、そいつのせいだというのか」
「誰か助けてくれ、この戦争を止めてくれ!」
「勇者さま、勇者さま!」
「勇者よ、魔王を倒し、この世界に平和を」
「御意に」
彼は、勇者は、つまりぼくは。
家族のために、国のために、世界のために、そして愛する姫のために。
あれこれすっ飛ばし次回にはもう小学生です。
短い文ですが、ここまでお読みくださりありがとうございました。