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青空はマイハート

作者: 夢二つ

 屋根の上で仰向けにゴロン。

 俺は雲を眺める。ゆっくりと時間を気にすることなく青を漂う。

 俺の感情は雲に出る。

 今の気持ちが雲の表情であらわされるのだ。

 例えば、こうだ。

 朝もはよから、屋根の上で寛ぐ変人。朝ごはんも食べていないので、お腹がなる。

「はらへった~」

 この感情が雲の形として表されてしまう。

 自由な雲がくっついたり離れたり、変化する。

「タコ焼きかな」

 雲の造形がタコの絵と火の文字を表す。

 こんな感じに、ちょっと遠回しな俺の心。それを表現する。

 母親が庭に降り立ち、俺に声をかける。

「早く降りなさい。時間にルーズなんだから」

 うるせ。

 また俺の感情を反映して、雲がうろうろとする。

 ヘッドフォンの形を象っている。

 うん。確かにヘッドフォンだな、リアルタイムな俺の気持ちです。

 この時間帯はノラネコがたまに屋根の上でたむろしていることがある。今朝も先客が来ており、ごろごろと喉を鳴らしひなぼっこを楽しんでいた。

 しかし、自由気ままなノラネコは俺に擦り寄ってくる。

「なんだお前」

 喉をこしょこしょしてやる。

 雲がまた変化しはじめる。

 カタカナでツンデレと書かれる。自分の心からばかにされたようで少し腹立たしい。

 なんだよ。ノラネコから顔を背け、横向きの体制に変える。

 ノラネコは寂しそうな一声。

 これじゃ、本当にツンデレだ。男のツンデレなんて気持ち悪いだけ。

 おじいちゃんが朝の散歩を始めるのか、玄関からこちらを見上げ、手を振っている。

 麦藁帽子がかっこいいぜ、ジーちゃん。

 手を振りかえす。

 雲が姿を変える。

 100と読むことができる。

 もうすぐで、おじいちゃんは一世期も人生を経験してきたことになる。それでも朝の散歩を堪能するおじいちゃん。尊敬します。

 うたた寝をしそうになりそうな頃合いに曲がり角から顔をだすは、俺の幼なじみだ。

 俺の家に向かってくる。そして呼び鈴をその手が鳴らした。

「今朝は朝食抜きか」

 急いで俺はパジャマを脱ぎ、学制服を身につけ、そして学生かばんを引っ張って玄関に出る。

 彼女は玄関前まできていた。

「学校にいこう」

「おう」

 慌ててスニーカーを突っかけ、外に出る。

「あの雲の形面白いよね」

 彼女が広い空の雲を指さす。

 その雲はハートマークの形状をあらわしていた。

「いいから。いくぞ」

「なに、そんなに慌ててるの」

 彼女がおかしそうにからからと笑う。

 落ち着け俺。落ち着け。

 また、彼女が声を上げる。

「見て、あの雲私に似てる」

 指さす雲は、確かに彼女に似ていた。

 結局、心を落ち着かせるには彼女と普通な毎日を過ごすことなんだ。

「あ、おはよう」と、俺はいつもの顔にいつもの挨拶。

「うん。おはよう」と、これまたいつもの声にいつもの笑顔。

 思い出したように俺たちはいつもの朝の挨拶を交わしあった。

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