第1話「一番大事なのは」
「一番大事なのは……」
水色の服を着た少年に会えたら嬉しいのに……
私は通学路の道路の脇に生えているタンポポ。
いつも小学生たちが学校へと歩いていくのを静かに見守っている。
ある日、、あの少年は私にペットボトルから水を撒いてくれた。
本当に嬉しかった。
みんな知らないのね。
私たち植物にも心があるということを。
痛覚はないけれど、、心はあるのよ。
私がどんなに嬉しいか、、あの少年に恋焦がれているか、、伝えたい。
でも、、植物に伝える手段はない。
人間はコミュニケーションが取れるから、、本当に羨ましいわ。
私たち、、植物はコミュニケーションを取って楽しむということができないの。
「心」しか与えられてない。
人間たちは他の者たちと手を握り、話し、どこにでも移動できる。
羨ましくて仕方ないわ。
そして、、五感で様々なものを感じることができる。
それがいかに、いかに喜ばしいことか、、気づいているかしら。
人間は植物と違い、、五感を感じて、、生きていけることを当たり前になりすぎていて、、有難さがわからない人が多いと思うわ。
ある日、、少年を見ることがなくなった。
学校を卒業してしまったのかもしれない。
寂しいわ。
私はあなただけが生きがいだったのに。
私たち植物は動けない代わりに、、あらゆる知識を仕入れることができる。
霊界から知識を学ぶことだけは許されている。
でも、、人とのコミュニケーションはやはり取れない。
いくら、、学校のことや、、卒業とか知っていても、、そんな知識、、
コミュニケーションが取れなかったら、、宝の持ち腐れで意味がないわ。
他の者と共感して、、共有することが生物としての一番の喜びなのに。
学校に行ってみたい!! 卒業式とか体験してみたい。
ある日、、少年がいきなりやってきた。
「ああああ、会いたかった」
私は心の中でそう発言する。体をくねくね動かそうとするけど、、当然、動かせない。
「話がしたい!!」
「どこに行っていたの??」
って聞いてみたい。
すると、、少年は何か物をバッグから取り出した。
私は、、その機械みたいなものを少年に装着させられた。
すると……
「何するつもりよ??」
心の中の声が機械から音声として流れた。
「これは植物音声機だよ。植物の心の声を伝えることができるんだよ。これからはいっぱい話そうね」
「えっ??」
あまりに予想外の出来事に言葉がなかなか見つからない。
「ありがとう!! そんなものがあったなんて……これ以上の幸せはないわ。最後に会話ができて嬉しかったわ」
「えっ?? 最後ってどういうこと??」
「私は、、もう寿命なのよ。だから、、もうすぐ死ぬの!!」
「なんで?? せっかく植物音声機を大金はたいて、、買ったのに!! これからたくさん会話して、、君を喜ばせてあげたいと思っていたのに……」
「私のために、、その気持ちだけでこのタンポポに生まれてよかったと思うことができるわ。ありがとう。私は先に天国に帰っています。次は人間に生まれ変わりたいと思うわ。植物になって、、人とのコミュニケーションが取れることがいかに有難いかを学んだわ。私たち植物は人間になるまえの魂で生きているのよ。今度は人間になります。残された僅かな時間、、あと何日か、、一緒に話しましょう。何にも代えられない幸せをくれてありがとう」
「どういたしまして。君が天国に行くまで、、なるべく一緒にいて話してあげる。僕の黄色の服はタンポポの色と同じだろ?? 気持ちは一緒だってことだよ!!」
それからの数日間は、、「会話ができる」というだけでいかに嬉しいことかを実感したわ。
でも、、私が人間に生まれたら、、きっと、、その人とのコミュニケーションが当たり前になり、、嬉しいことだという感謝を忘れてしまうかもしれない。
当たり前だと気付かないわよね。
人と話せる幸せを。。
五感を味わえる喜びを。
ちなみに「あなたのことが大好きだったの。結婚はできないけれど、、あなたに喜びをたくさんもらったわ。本当にありがとう」
と伝えたわ。
「君と結婚式を挙げるためにプチケーキを買ってきたよ。僕たち2人だけの結婚式をしよう。黄色のケーキだ!! 君の色だよ!!」
と言ってくれたわ。
「どうしてそこまで私のことを思ってくれるの?」
「学校を通るたびに君が立派に花を咲かして生きている姿に救われてきたからだよ。君がいるだけで凄く元気になれた。だから、感謝の結婚式だよ!!」
気持ちが嬉しかった。
やはり一番大事なのは「気持ち」なのよ。




