新しい生活の始まり
これは日本の少子高齢化が進み、更には技術の発展により様々な職がAI化した未来の日本のお話。
日本各地にあった学校は閉校していき、様々な希望溢れる夢の職業は次々とAIによって乗っ取られていった、子供達は学び舎だけでなくその先の未来も奪われてしまった。
そんな中突如として日本海に現れたひとつの島が日本に希望を与えたのだった、AIによって職を無くした大人達がその島に学生の為の学び舎と大人の為の職の場を創ろうと計画を立てた、その結果その島は「学びの島」と呼ばれるようになり、子供達が学び大人達が働ける島が出来上がった。
学びの島は四つの区域に別れており、東の東過、西の西弦、南の南鏡、そして北の北屑、各区域に一校づつ学園が設立されており毎年四月になると十二歳を迎えた子達に四校のうちの一校から入学許可証が送られる、学びの島は学園が出している専用フェリーに乗船している人のみ上陸が許可されている。
自然も多く区域によっては日本の都市部よりも栄えている所もある、職を失った人々が生徒の為に島を発展させようと日々開拓している為、学びの島の発展は止まらない。
今年も新しい新入生達がそれぞれの学園の制服を身にまとい港に集まっているようです。
ー四月中旬ー
港には四つの大きなフェリーが、各学園の紋章が描かれた旗を揺らしながら停まっている。
「僕の学校のフェリーは虹のマークの紋章か」
橘 芭流、今年から学びの島の東過にある「五虹学園」に入学する新入生だ、既に湊は沢山の生徒で溢れかえっており、僕は人混みをかき分けるようにして五虹学園のフェリーへと向かった。
フェリーの中に入ると、既に仲の良い新入生や高学年の先輩で座席は埋まっていた、僕は空いている席を探して奥へと足を進める、しばらく歩くと二人しか居ないコンパートメントを見つけ、僕は扉を遠慮気味に開けた。
「ここ座ってもいいかな?」
僕の声に少し癖毛で可愛らしい顔立ちをしている少年は慌てて「どうぞ」と席を開け、もう一人の少年は目にかかる綺麗な黒髪の隙間から視線だけを向けて「どーぞ」と軽く返事をする。
僕は癖毛の少年の隣に座ると二人を交互に見たあと少し気まずい空気を変えようと口を開いた。
「二人の名前を聞いてもいい?」
僕の質問に二人は先程までの強ばった表情を緩め少し姿勢を整えた後、黒髪の少年が先に自己紹介をした。
「俺は天馬 星那、よろしく」
星那は軽い挨拶をしたあとニカッと無邪気な笑顔を浮かべた。
「星那、よろしくね!僕は橘芭流、君の名前は?」
僕は癖毛の少年に向き合うよう少し体を傾ける。
「あ、僕は久遠 凛音、よろしくね」
凛音は手をいじりながら少し恥ずかしそうに自己紹介をした。
「凛音、よろしく!もうすぐフェリーが出航するって、さっき先輩達が言ってたよ」
しばらくすると、僕達を乗せたフェリーがゆっくりと動き始める、窓の外では生徒達の案内をしていた人型ロボット達がそそくさと各自の持ち場に帰る姿が見えた。
しばらくすると窓の外に「学びの島」が見え始めた、島の全貌こそは大きくて見えないが、東渦のカラフルな街が少しづつ見え始めた、その中でも目を引いたのは大きな城のような建物「五虹学園」だった。
フェリーが港に着くと僕達はすぐに荷物を持ちコンパートメントから出る、船を降りるとすぐに学年ごとに集められ専用のバスに乗り学園へと向かった。
バスに揺られていると先程フェリーから見えた城のような建物が見えてきた、近くで見ると城と言うよりいくつもの形の塔が組み合わさって出来た洋風の建物のようだ。
バスを降り学園に向かうと大きな石のアーチが見え始める、アーチの上部には五個の石が埋め込まれており、左から順に青、緑、赤、紫、そして白と黒、アーチを潜るとすぐに綺麗に手入れをされた庭が目の前に広がる、庭の真ん中にある大きな噴水は虹を出しながら出迎えてくれた。
大きな塔のすぐ手前まで来ると扉には「本源塔」と書かれている。
僕は隣にいた凛音に声をかけた
「ねぇ、本源塔って書かれているけどこれが校舎なのかな?」
僕の質問に凛音は小声で答える
「本源塔は生徒達の寮塔だよ。校舎はまた別なんだ、他にも沢山敷地内に建物が建っていたでしょ?」
僕も少し声のボリュームを下げて話す
「そうなんだ、全学年が同じ寮で過ごすのかな?」
僕の質問に後ろを歩いていた星那が得意げに間から顔を出した
「フロアによって学年で別れてるけどな。高等部に上がると学年関係なしに各学部によって別れるんだよ」
その時冷たい声が星那の話を遮る
「そこ、静かに」
短く放たれたその声に恐る恐る顔を上げると、獲物を見つけた爬虫類のような目でこちらを見る大柄な男と目が合った。
「すみません先生、少し興奮してしまって」
星那は慣れたような口調で短く謝罪の言葉を告げた、先生はその言葉を鬱陶しそうに聞き流すと先を歩き出す。
本源塔の中心にある大きな螺旋階段を少し登り二階のフロアへ行くと、太陽のような笑顔を浮かべた優しそう女の先生が待っていた。
「新入生の皆さん初めまして二階フロアの寮母『獅子尾』と言います、さっそくこれから皆さんが過ごす寮部屋を決めてもらいます」
先生は新入生の顔を懐かしそうに見渡しながら話す。
「寮部屋は中等部の間、皆さんのお家になります。慎重に決めてくださいね」
獅子尾先生の話が終わると、新入生は一斉に寮部屋を決め始めた、部屋は四人部屋から最大八人部屋まであるが、「大人数の方が楽しいだろう」という単純な考えから八人部屋に人気が偏っていた。
「芭流くん、星那くん、同じ部屋にしよう?」
凛音の小さな声がみんなの騒音に掻き消されながらも僕の耳に届いた。
「あったりまえだろ」
隣に居た星那はニカッと笑い凛音の背中を叩く
少し見渡すと、騒音に一線を引いたような静かな角部屋を見つけた
「向こうの奥の部屋は人気がないみたいだよ、あっちに行こう」
僕は二人を連れて角部屋へと足を踏み入れる、予想通り部屋にはまだ先客がおらず一番人気のない四人部屋だった、中央には四人が腰をかけて勉強が出来るほどの大きさの丸テーブルが置かれており、そのテーブルを囲うようにしてダブルサイズ程のベッドが四つ並んでいる、僕達はそれぞれ好きなベッドに腰をかけ一息ついた。
その時ドアの方から少し慌てたような声が響く
「この部屋まだ空いてる?」
その声に僕は横になろうと傾けた体を慌てて起こしドアの方を見る、そこには息を少し荒くしドアの縁に手を置いてこちらを見つめる少女が居た。
「空いてるけど、ここ男子しか居ないぞ」
僕が答えるよりも先に、星那が答える
「あー、まじ?でも他の所埋まっちゃっててさ、君らが嫌じゃないならここ入ってもいいかな?」
少女は綺麗に腰まで伸びた黒髪をいじりながら困ったように眉をあげている。
僕達三人は互いの顔を見あった後、少女に向かって軽く頷く。
「まじ!ありがとう!」
少女はぱぁっと顔を明るくして空いているベッドに飛び乗った。
「君の名前聞いてもいいかな?」
僕の質問に彼女は枕から顔を上げる。
「そうだね言ってなかった!私の名前は、神木 琴奈。よろしくね」
琴奈の自己紹介の後に僕達も改めて自己紹介をし握手を交わした。
「一年生の皆さん、部屋が決まり次第廊下へ並んでください」
獅子王先生の声がドアの隙間から部屋へ入ってくる。
その後僕達は入学式が行われる体育館へと向かった、中等部の先輩や高等部の先輩達との初めての対面、十二歳の僕達にはとても大きくて大人に見えた。




