第一話 雪国の影
本小説及び動画ではAIの補助を受けて製作しています
暗闇の中、かすかに灯る行燈の光だけが、その場にいる二人の姿を浮かび上がらせていた。
「来たか、玲夢」
低く、慎重な声が闇の奥から響く。
「まったく……明日も忙しいのよ。用件は手短に済ませてちょうだい」
そう返した少女――玲夢は、周囲を一瞥しながら歩みを止めた。人目はない。少なくとも、今のところは。
「確認だが……誰にも見られてはいないな?」
「ええ、問題ないわ」
玲夢は即答した。
声の主――青年は、わずかに息を吐いてから本題に入る。
「実は……例の件だが、説得がうまくいっていない」
「例の件……」
玲夢は小さく復唱した。その言葉だけで、事の重大さは十分に伝わる。
「今はまだ表に出てはいない。しかし、このままではいずれ――あの方に立っていただかねば、安東家は滅びる」
「大殿には、もう相談しているの?」
「大殿も、何度も言って聞かせているようだ。しかし……本人が戦を嫌っておられる。血を見ることを、心の底からな」
その言葉に、玲夢は一瞬だけ目を伏せた。
「そればかりは……どうしようもないわ」
「し、しかし……!」
声を荒らげかけた青年を、玲夢は静かに制した。
「あなたと出会って、どれくらい経ったかしら?」
「……十年になるか、ならないか。そのくらいだ」
「ということは、そろそろ元服ね」
謎の男は黙り込む。
「あなたと“あの方”は同い年。だからこそ、急いでいるのでしょう?」
「……ああ」
青年は顔を上げた。
「時間がない。長くて……あと三日だ」
空気が、凍りついた。
「医師ははっきりとは言わない。だが、このままでは――大殿は持たない」
玲夢の指先が、わずかに動いた。
「……そう」
それだけを返す。
「私が元服する前に、どうしても決断していただかねばならない。あの方は優しい。しかし――」
「その優しさが、この戦国では欠点になる」
玲夢が言葉を継ぐと、青年は苦々しくうなずいた。
「玲夢……君は私にとって、恩師であり、親代わりでもある。そして命の恩人だ」
深く頭を下げる。
「この家を、どうか救ってくれないだろうか」
玲夢はしばし沈黙し、やがて口を開いた。
「……さっきも言ったはずよ。私にできるのは、本人に自覚してもらうこと。それ以上は無理」
「それで? 緊急の用事は、それだけ?」
「……そう、だが……」
「なら失礼するわ」
玲夢は背を向け、その場を後にした。
外は、雪混じりの激しい雨だった。
軒先に立ち、降りしきる闇を見つめながら、玲夢は一人、思案に沈む。
(このままでは、安東家は滅ぶ)
それは、もはや疑いようのない未来だった。
(優しさだけでは、生き残れない)
だが――
(それでも、あの人は……)
玲夢は目を閉じる。
脳裏に浮かぶのは、争いを嫌い、民を想う“あの方”の姿。
(……きっかけさえあれば)
拳を、強く握る。
(ほんの一つでいい。何かがあれば、あの人は必ず変わる)
そのときだった。
――館の奥から、鈍い音が響いた。
何かが、倒れたような音。
玲夢はゆっくりと顔を上げる。
「……今のは」
視線が、闇の奥へ向けられる。
誰も立ち入らぬはずの一室。
そこから、確かに音がした。
雪は、まだ降り続いている。
だが――
何かが、もう始まっている。
もともとニコニコ動画で公開していた物語を、小説として再構成しました。
小説化にあたり、映像では伝えきれなかった描写や設定も追加しています。
動画の#1は小説の1~4話に相当します
4話投稿後にURLを掲載しますので、よろしければぜひ動画でも物語の世界を体験してみてください。
文章だけでは伝えきれない、キャラクターたちの動きや戦いの迫力も楽しめます。




