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ネモの軌跡  作者: 桔梗
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不穏な内々示

頭が痛い、寝不足と二日酔いのせいなのは間違いない。しかし、さんざん引っ掻き回された書類の整理が一向に終わらない。

残業はしないように組み立てるのがモットーではあったが今日に限ってはどうにも残業になってしまいそうだ。

さっさと帰ることで同僚や上司からは空気を読めなどと言われてきたが、俗人化してしまっている今の体制では特に手伝うこともできず、ただだらだらと全体が落ち着くまで机に座ってのんびりと時間をつぶすことが我慢できなかった。

家事もあれば育児もある。家事も育児も残っている。今日はそれだけで十分だった。

だんだん腹が立ってキャビネットを乱暴に開けたとき

「ちょっといいかな」

いつもは何か感じ買いしたエリートを自称するような派手なスーツをきた部長が不気味というか餌を飲み込む前のカエルのような顔で、おそらく本人は最大の笑顔のつもりなのだろうが。声をかけてきた。

「見てわかりませんか?昨日の処理でそれどころではないんですけど」

「まぁまぁ君にとって決して悪い話ではないから少し付き合ってよ」

と小会議室に連れて行かれる。

「一体何なんですか?」

全く身に覚えがない上に体調も悪い、二日酔いを咎められたとしても仕方ないことだ、車を運転することもない。覚悟を決めて先に口を開いた。

「君、公共工事関係の積算やっているよね?そのことでお願いがあるのだけど」

「積算ってほど物のではないです、必要な数量を設計図書に書いてある数値に入れ込むだけです。そもそも趣味の延長の範囲なので正確かどうかもわかりませんよ、実際公共工事の入札積算なんて積算部の仕事ではないんですか」

「そうなんだけどね、会社の方針で今後は積算の基礎が分かっている人間を公共工事の営業担当にしようと」

「しかし、公共関係の営業は課長以上ですよね。私には関係ないのでは」

言い終わるときに取り調べ担当官の

「あんた、昇進するだろうよ」

あれはこのことか。

「・・・・・でそういうことにしようと思うんだけどどうかな?」

考え事をしていて全く聞こえていなかった。

「申し訳ございません、少し考え事をしておりまして聞き逃しました」

部長は少しイラつきながら

「だから、今後君を官公庁の入札案件の窓口にしようと思うんだよ、ついては急ではあるけど来週の月曜日付けで課長にするから」

「ずいぶん急ですね、本来ならば四半期ごと、最低でも締め日ごとの人事異動では?」

「今回は特例だから、手当については今月からつくように人事には話をしておくから」

「しかし、経験もありません。そもそも課長といっても部下はいないのですよね」

「そうだね、しかし、営業部の課長になるんだから役職としての命令権はあるよ」

このカエル、何を企んでいる。少なくとも名ばかり役職なのは間違いない。しかも出世ルートから外れて、目標ギリギリの数字のみ、さらに定時退勤の私を昇進?必ず何かがある。

「ありがたいお話ですが、本日は火曜日なので木曜日の午前中まで最終返答は待っていただけませんか」

「しかしね、会社が決めた・・」

みなまで言わせる前に畳みかけた

「私の能力と職責に問題です。軽々に覚悟なく受けることは猶更、会社のためになりません」

「わかった、良い返事を期待しているよ」

苛立ちを隠しきれない様子で部長は自席へ戻っていった。


昼はどうしよう、二日酔いで食欲はない、しかし空腹ならばイライラで判断ミスも増える。

近くの立ち食いうどん店に肉吸いがあるのを思い出した。

あそこなら近い、安い、すく食べて公園で少し昼寝をしよう。そう思い暖簾をくぐる。

「あらら」

間の抜けたような、無機質で人を馬鹿にしたような声がきこえた。

唯一外部で信用できる部材会社の担当だ。彼は決して人が悪いわけではない、しかし頭が切れすぎる。先を見すぎている、だから内部でも、こちらとしても扱いづらい。

しかし、指示を出せば、こちらが考えるより先まで進んでいる。

資料はいつも過剰だが、その分こちらは考えなくて済む。

多分、彼はお調子者のふりをして本心では相手を馬鹿にしているか、その程度すらできない人間を見下しているのだろう。それでも何も隠さないことが私には最大のメリットだった。

隣に座り、肉吸いを注文する

「うわ、酒臭」

お調子者が笑いながら声をかけてくる。

「やっぱり臭う?」

「いや、言ってみただけ、でも目は赤いし、全体的にむくんでいる。何より二日酔いでもなければ肉吸いなんて頼まないよ。昨日深酒でもしたの?」

見返すといった本人も二日酔い丸出しの見た目の上に同じように肉吸いを注文している。

「あんたもそうでしょ」

「まぁそうなんだけど。ちょうど相談したいことがあってさ。仕事が終わってから20分くらい時間ないかな?」

今日は早めに帰ってゆっくししたかったが、カエルの持ってきた昇進案件について何か知っているんではないか?とも感じた

「ないわけではないけど、乗換駅の喫茶店で18時からなら少しは時間があるかな、でもこちらも聞きたいことがある。昨日の件でわかる?」

少し雰囲気を変えて軽くうなずき返された。

「わかった、じゃぁ18時、それじゃ」

それだ開け言うとさっさと食事を済ませて店を出て行った。


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