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第三話 初めての喝采



「……できたぞ」


俺のノートには、ぎっしりと図や数式が書き込まれていた。

本来なら犯罪に使われかねない発想が、斎藤さんの助言で不思議と形を変えていく。


「侵入口を探すんじゃない。“安全に逃げる道”を考えるんだ」

「詐欺の仕組みを逆にすれば、人を守る仕組みになる」


その言葉に導かれ、俺は思考をひっくり返し続けた。

やがて生まれたのは、災害時の避難をシミュレーションできるアプリだった

犯罪思考な俺の発想が、人を救うために使われたのだ。



数週間後、市の防災イベント

会場の大画面のスクリーンに、俺たちのアプリが映し出されていた。


「これなら子どもでも避難できる!」

「すごい……まるで本当に逃げてるみたいだ」

「役立つぞ、これは!」


人々が夢中になってタブレットを操作している。

その光景を見ながら、俺はただ立ち尽くしていた。


――俺の思考が、人を助けている。


「見ただろ」斎藤さんが低く笑う

「お前のアイデアは、壊すだけじゃない。救うこともできる」



イベントの最後

司会者がマイクを掲げた


「今回のシステムを考案したのは――こちらの青年です!」


視線が一斉に俺へと集まる。

拍手やフラッシュ...歓声


震える声で「ありがとうございます」と呟き、俺は頭を下げた


――初めてだ。

この思考が、誰かに認められたのは...

お前は、生きていていいと認められた気がした


だがその時――


人混みの奥に、一人の男性が立っていた

拍手もせず、ただ無表情で俺を見つめている

黒いコートに無駄のない姿勢で

冷たい眼差しが、俺の心臓を射抜いた


会ったことはない。だが直感で分かった。


――あれは、親父に繋がる人間だと...


視線を外した瞬間、男性の姿はもうなかった。

残されたのは、歓声と拍手だけ。


その中で、俺の背筋だけが凍りついていた。


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