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第二話 悪知恵が役立つ瞬間



斎藤と知り合って数日後。

俺は半ば押し切られる形で、とあるオフィスに連れて行かれた。


「ここは?」

「防犯関連の会社だ。俺はコンサルタントをしている」


なるほど。そういう立場か。

どうりで“人を通せば価値になる”なんて言えるわけだ。


応接室で出されたコーヒーをすすりながら、俺は状況をうかがっていた。

テーブルの向こう側にはスーツ姿の社員たち。

どうやら新しい防犯システムの企画会議らしい。


「……で、斎藤さん。例の人材ってこの子ですかい?」

「そうだ。頭の回転は保証する」


社員たちの視線が一斉に俺に集まる。

おいおい、いきなり舞台に放り込むなよ。


「じゃあ、君。泥棒が好む家ってどんな家だと思う?」

「……簡単だ」


俺は思わず笑った。

こんな質問、俺にとっちゃ朝飯前だ。


「まず、カメラがあっても死角が多い家。

 次に、隣人が無関心な家。

 あとは……センサーが設置されてても、“慣れ”で住人が無視する家だな」


社員たちの表情が一瞬固まった。

けどすぐに、メモを取る音が広がる。


「なるほど……確かにそれは盲点だ」

「センサーの過剰反応を逆手に取るなんて、普通じゃ思いつかない……」


斎藤がうなずいた。


「だろう? 彼は裏の発想をする。だからこそ、対策を考える材料になるんだ」


社員たちがざわめき、俺の言葉を次々と“商品アイデア”に変えていく。

死角を減らすためのカメラ配置。

住人が異常に気づきやすいセンサーの改良。

隣人の協力を引き出す仕組み。


……気づけば俺の「悪知恵」が、立派なビジネスプランに変わっていた。


「おいおい……マジかよ」


俺自身が一番驚いていた。

今まで“危ない発想”としか扱われなかったものが、初めて人の役に立った瞬間だった。


「どうだ?面白いやつだろう?」

隣で斎藤がにやりと笑った。


「お前の頭は、やっぱり“価値”になる」


その言葉を聞いたとき、胸の奥で何かが少しだけ変わった気がした。


――俺の人生、まだやり直せるのかもしれない。

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