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第一章14 襲撃編『魔人の襲来』


 朝だ。カーテンの隙間から淡い光が差し込んでいる。俺は鞄に必要なものを詰め、リーガを起こして寮の朝ごはんを摂ったあと、学院へ向かった。


 学院には、まだ試験の余韻が残っている。休み時間になると噂が途切れず、リアナの周りには常に人だかりができていた。


 放課後、俺たちは結界の件を確かめるため、職員室へ向かう。


コンコンコン――

「アリア先生、いらっしゃいますか?」


「どうしたの? ジンくん、リーガくん」


 アリアの表情は不思議そうだ。声が小さくなるのを抑えつつ、問いかける。手のひらにじっと汗が滲んでいた。

 

「少し誰にも聞かれないところで話ができないでしょうか?」


「いいわ。来て」


 アリアは何かを感じ取ったのか、執務室へと向かった。俺たちもそれについて行く。


 執務室に入ると、アリアは真剣な目で二人を見つめた。


「どうしたの?」


 リーガは結界に感じた違和感、経緯を淡々と話す。アリアはそれを聞くと驚きを隠せない様子で呟いた。


「そう……あなた、魔眼持ちだったのね。しかも、この学院の魔術は侵攻前の結界よりもひどく、結界として機能していないか……」


 アリアは結界の件を認知していなかったようだ。


「これは、重く見るべきね。少し待ってて、校長先生に話してくるわ」


 アリアはそう言い残し、執務室を出ていった。


「やっぱり……教師陣も把握していないみたいだね。薄々そうは思っていたよ。あの結界は誰かの憎悪によって作られていた感じがしたから」


「憎悪か…少し嫌な感じだな」



◇◇◇◇◇



 別室にて、校長とアリアが会話していた。その雰囲気は少し険悪なものとなっていた。


「そうか。結界が……これは私も知り得なかった。この国に結界を視認できる魔眼を持つものはそのリーガくん以外いないだろうからな」


「ならば一体誰が……」


「私は国王に報告してくるよ。少し学院をあけるから、何かあったら火球を空に放て。すぐに向かう。この話は他言無用だと二人に伝えといてくれ」


 校長はそう言い、飛行魔術で王都まで飛んでいった。その速度は凄まじいものだった。


「少し、警戒すべきね」


 アリアはその後、執務室に戻り、事情を話した。


「他言無用ですか。分かりました」


 俺たちは頷き、執務室を出た。


 外はもう夕闇に染まり、星が輝き始めている。だが――その星の一つが、異様な速さでこちらへ向かってくるのを、俺は見逃さなかった。


「なんだあれ……何かおかしくないか?」


「ああ、僕も変な気配を感じる」


 猛スピードで接近してきたのは、隕石のような光ではなく、意志を持った何かの気配だった。


 轟音とともに、それは学院付近の地面に落ち、爆風が辺りを揺らした。


 ジンとリーガは瞬時に危機を察し、学院へ走る。学院自体には外見上の大きな損傷はない――だが、空気が異様に冷たく、本能が『逃げろ』と危険信号を発している。


「二人とも逃げて!」


 アリアの叫びが響く。だが周囲の生徒たちの体は固まり、動けなくなっていた。俺の身体も、一瞬思うように動かない。


 その時、二つの巨大な気配が近づく。片方は大柄な男で、漆黒の翼を背に宿している。片方は少女の姿をしていて、角と鋭い尾を携えているが、発する魔力は尋常ではない。


「いやはや。本当にあの勇者の子ですか?これは思ったより楽しめなさそうですね。面白くありません」――男は嘲るように言う。


「そう。初めてあなたと気が合った。ヨルアスが来る前に片付けてしまおう」――少女が静かに続ける。


 それが「魔人」だと一瞬でわかった。気配が重く、周囲の空気を引き裂く。


 俺は本能のままにリーガの手を取って走り出すが、逃げ切れない。魔人は一瞬のうちに間合いを詰め、二人に襲いかかる。


 だが、そのとき、光と炎が同時に放たれた。光の柱が魔人の刃を弾き、火炎が黒い翼を焼く。アリアとリアナだ。教師たちも次々に駆けつけ、魔人の前に立ちはだかる。


「校長が来るまで、とにかく持ちこたえて!」


 アリアが叫ぶ。詠唱を紡ぎ、火球や防御結界が辺りを彩る。


 ここに、魔人と学院の生徒・教職員の戦いが幕を開けた。


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