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第一章12 試験編『光線と詠唱』


 会場に入った瞬間、胸の奥がひゅっと鳴った。三体目のゴーレムは、今までとどこか空気が違っていた。腕に刻まれた紋様が赤く光っている――その色だけで嫌な予感が胸を刺す。


「ジン……あの魔術刻印、嫌な感じがする」


 リーガが囁く。リーガは魔眼で刻印を覗き込むように目を細めていた。俺も視線を向けると、たしかにただの魔術刻印ではない気配が漂っていた。


 合図が鳴った。その瞬間、ゴーレムは動かずに片手を地に突いた。地面に触れた掌から赤い光がにじみ出した。リーガの顔が変わる。


「ジン、横へ跳べ!」


 リーガの声が耳に届くより早く、身体が横へ跳んでいた。耳をかすめる熱風――赤い光線が頬を撫で、会場の壁に亀裂が走った。砂の匂いとは違う、焼けた鉄のような臭いが鼻を突いた。


 観客席からどよめきが上がる。


(なんだ、何かおかしい……?)


 それでも俺は剣を振るった。いま出せる一番速い一撃で。だがゴーレムの動きは想像以上だった。剣は空を切り、ゴーレムは重く長い拳を振り下ろした。


 その一発は、胸を裂くような一撃だった。息が抜け、視界が少し白くなる。倒れそうになった足を必死に踏ん張る。


 リーガが火を放ち、ゴーレムの腕を焼いたが、傷は浅い。刻印を帯びた側は、炎を宿していた。


「まずい……」


 リーガの息が荒い。魔術を連発するごとにその呼吸が早まっていくのが分かる。掌の血管が浮くように、細い白い線――魔力消耗の兆候が見えた。


 次の攻撃で、俺は一瞬の隙を突いて渾身の斬撃を入れた。腕の一部が断ち切れ、会場がざわつく。だが切れたのは刻印のない側だった。


 刻印の付いた腕は、まだ温存されていた。


 瞬時に、ゴーレムの赤い刻印が震え、そこから波のような衝撃が放たれた。リーガはそれをかわしたが、その反動で詠唱が乱れ、身体が痙攣する。


 俺は咄嗟に防御魔術を展開して衝撃を軽減したが、リーガの魔力の消耗は想像よりも早かった。


「ぐっ」


 腹に鋭い衝撃が走り、リーガはひざまずいた。息が詰まる。リーガは必死に立ち上がるが、瞳に焦点が合わない。俺たちは連携し攻撃を与えることにした。


 リーガの表情が一瞬、引き攣る。目が揺れている。もう動ける余力が残っていないように見えた。


 二人で連携し、最後の一手を狙う。だがゴーレムの魔術は速かった。俺たちは爆発に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる衝撃で意識が遠のく。


 観客席から一斉に吸い込むような息が聞こえた。


 そのまま、視界が暗くなる。救護の声、足音。気づけば担架に乗せられ、運ばれていく感触があった。


 医務室で目を開けると、リーガの顔が朦朧とこちらを向いていた――はっきりとは見えないが、唇がかすかに動いた。


「……ごめん、ジン」


 その声は風に消え、俺の意識は暗闇に深く落ちた。



◇◇◇◇◇



 別室にて、校長とアリアが話している。


「校長、試すような真似はよしてください! 試験で使ったゴーレム……あれだけ異常に強く作られていました!」


 アリアはかなり怒っているようだ。アリアは校長を睨みつける。


「いやいや。勇者の子と聞き、少し実力を見たかったんだ。見た通りで判断するならば、まだまだ実力が足りなく見える」


 その言葉は、アリアの怒りを増幅させた。


「校長……いい加減にしてください。私の生徒が危険な目にあったんです。怒りますよ!」


「すまなかった。これ以上はしないと誓おう。実力が足りないと言ったことを訂正しよう。つまり……彼は伸びしろの塊ということさ」


「二度はありません」


 アリアは校長と話を終え、医務室へと向かった。アリアは医務室のドアをノックし、扉を開け、中に入る。


 そこにはフェイズとリアナがいた。


「フェイズ、ジンくんとリーガくんは大丈夫かしら」


「その前に、先生……あのゴーレムは一体……?」


 リアナがアリアに問いかける。その表情は少し怒っているように見えた。


「ごめんなさいリアナさん。まだ事情は話せないけど、いつかあなたには話すわ」


 アリアがそう答える。リアナはあまり納得してないようだが、了承した。


「ジンとリーガのことだけど、私が治癒魔術をかけたから、一日寝ていれば治るはずよ」


 フェイズは見解を示した。アリアは仕事がまだあるようで帰り、リアナは寮の門限が近いため帰っていった。


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