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第一章11 試験編『リアナの魔術』


 次はリアナだ。新入生代表を務めていたくらいだから、相当強いはずだ――あの訓練場で見せられた魔術を目の当たりにすれば、そう思わざるを得ない。


 リアナの名前が呼ばれ、試験が始まる。


「一年B組、リアナ・フォレスト」


 名前が呼ばれると、会場から大きな拍手と歓声が湧いた。リアナは会場に入り、呼吸を整えている。


 手には、淡く光を帯びた短刀が握られていた。それは“普通”ではない雰囲気を放っている。


 ゴーレムの前にリアナは立つ。そして今――合図が鳴る。――「始め!」


 リアナは、まるで霧のように消えた。次の瞬間、ゴーレムの腕が切り落とされる。会場の空気が一瞬で張り詰めるのがわかった。


「かのものに烈火の炎を解き放て――」


 リアナの声が、低く凛と響く


烈火の弾球(フレイム)


 掌から火の塊が放たれ、弾けるように標的へ命中した。


 ゴーレムは体を変形させて腕を再生しようとしたが、先ほどより小柄な姿になっていた。


 小さくなったが、機動力を活かして懐へ滑り込もうとする。リアナはすかさず近距離で火を叩き込む。体が吹き飛び、ゴーレムは完全に停止した。


 観客席は一気に湧き、教師たちも顔を上げて彼女の戦いを見守っている。俺も思わず息を呑んだ。


 リアナの魔術は、ただの華やかさだけではない。緻密な制御と大胆な出力が両立している。


 その十分後、第二のゴーレムが現れた。リアナは緊張の色を見せず、淡々と構えた。


 開始の合図が鳴り、ゴーレムの長い腕が空を裂くように振り出される。届きそうで届かない微妙な射程を、リアナは見切ったのか、一瞬の隙をついて腕を砕く。そして、リアナは詠唱を開始する。


「天の輝きよ。かのものに光の裁きを与えよ――」

光の断罪(シャインスラッシュ)


 光の斬撃が落ち、ゴーレムは真っ二つに裂けて崩れ落ちる。会場は再び拍手と歓声に包まれた。リアナは淡く微笑みながら席へ戻っていく。


「どうでしたか? 私の戦いは?」


「ああ、凄かったよ」


 あまりに迫力のある戦いだったため、それ以外の言葉が出なかった。


「そうでしたか。それなら良かったです」


 彼女は僅かに嬉しそうにしていた。そんな余韻に浸る間もなく、リーガの番だ。


「僕、次には試験が始まるからもういくね」


 リーガはそう言い、控え室へと向かっていった。


「ああ! 頑張れよ!」


 リーガは会場へと入場し、ゴーレムの前に立つ。その姿は少しだけ優美に見えた。


 開始の合図とともに、まず地属性魔術でゴーレムの足を封じ、続けて風の斬撃で切り裂く。一体目のゴーレムを倒した。観客席から拍手が起こる。


 休憩のあと、二体目では得意の火を炸裂させる。両腕と両脚を一気に吹き飛ばし、最後は風で仕留め、会場が歓声に包まれた。


 そして、静かな緊張が次第に増していく。第三の試験が、まもなく始まろうとしていた。



◇◇◇◇◇



 一年生の約半数が一体目、二体目のゴーレムを突破し、三体目のゴーレムに挑戦する権利を得た。三体目は二人一組での挑戦だ。


 俺はリーガに声をかける。


「リーガ、一緒に第三の試験受けないか?」


「うん! 僕も声をかけようと思ってたんだ」


 リーガは微笑み、頷いた。


「リーガさん、ジンさん頑張りましょう」


 リアナは注目の的で、すでにペアを組んでいた。


「リアナの番もうすぐだろ。頑張れよ」


 リアナの二つ後が二人の番である。


 リアナは短剣を手に控え室へ向かう。今の時点で三体目を突破したペアは二組だけ――多くは三体目で一方的な攻撃により、敗れていた。


 数分後、リアナの名が呼ばれた。会場に入ると、拍手が湧き上がる。リアナは人型のゴーレムの前に立ち、仲間は詠唱を始めた。


 開始の合図が鳴り、ゴーレムは動き出す。その動きは俊敏でリアナたちとの間合いを一気に詰めた。


 リアナは短剣で自分の腕を小さく切った。血が一滴、地面に落ちる――それは彼女の魔術における触媒だった。


 仲間の詠唱が重なり、地に魔法陣が浮かぶ。魔法陣は血を媒介に活性化し、光の柱がゴーレムを包んだ。


 柱は肉体に深い損傷を与えるが、完全には仕留めきれない。


 ゴーレムは後方へと飛び、紫の魔術刻印が入った腕を天へと掲げ、爆発が起こった。会場に轟音と煙が走るが、リアナたちは冷静だ。距離を取り、改めて詠唱を重ねる。


 俺はその姿を見て感心した。リアナは短剣を構え、ゴーレムへと一直線に飛び込む。その速度は、到底人間が出していいものではなかった。


 ゴーレムの動きを仲間が魔術を放ち、止めた。


 動きを止められたゴーレムの隙を突き、短剣を深く突き刺した。ゴーレムの肉体は光とともに砕け散った。


 その圧巻の攻撃と連携に会場からは大きな拍手と歓声が巻き起こった。


 その後、リアナたちは会場を後にし、席へと戻る。


「リアナ、二人の連携には感動したよ。素晴らしかった。ふと気になったんだが、あの短剣はなんなんだ?」


 俺はリアナの戦いの余韻が残りながらもそう聞いた。


「僕も気になる!」


 リーガは前へと乗り出る。


「この短剣は家で父様が光属性の上級魔術を三種類込めたものなんです!」


 リアナは今までで一番いい笑顔を見せた。


「一度で倒れなかったのは驚きましたが、なんとか倒せて良かったです」


 余韻を噛みしめる間もなく、俺の番が迫る。ジンとリーガは急いで控え室へ向かった。


 リアナは自身の試験が終わったからか、安心したように手を振る。


「頑張ってくださーい!」


 二人は互いにうなずき、三体目への挑戦のために足を踏み出した。


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