第一章8.5 幕間『魔術師の階級』
今日は初めての魔術の授業がある。孤児院にいたときにボランティアや自習である程度魔術については学んだが、改めて授業で復習できるのはありがたい。
アリアの授業だ。俺はそのまま席に座り、アリアが教室に入ってくるのを待った。
楽しみだ。どんな授業をするのだろう。最初はレクリエーションだろうか。それとも、普通の授業だろうか。俺の胸には期待が宿っていた。
ガラガラガラ……
アリアが教室に入ってきた。手元には何枚かの大きな紙を持っている。アリアは教壇に立ち、授業を始めた。
「では、最初に問います。魔術とは何でしょう」
「魔術とは何か」その問いに数人の生徒が手を挙げ、一人が当てられた。
「魔術は自分の身を守るためのもの……とかでしょうか?」
その返答に、俺も頷いた。魔術は自分を守る手段だ――そう認識してきた。
「それもあるわね。でも他にもあるの。例えば、魔術を自身の価値を高めるものと考える人もいるし、好奇心や魔術そのものの可能性を求めて研究する人もいる。魔術協会には身を守るためだけに魔術を探求しているわけではない人たちも多いのよ。これを踏まえて、今日の授業を受けてちょうだい」
「では最初に、魔術は主に幾つの属性魔術に分かれるでしょうか。考えてみて」
魔術は確か…… 水、火、風、光、雷、地、闇、氷の八つの属性魔術に分かれていたはずだ。
「答えは、水、火、風、光、雷、地、闇、氷の八つよ。まぁ、属性魔術以外にも飛行魔術や治癒魔術、防御魔術、他にもさまざまな魔術がこの世界には存在するわ」
俺が知っているのは三つほどだった。それ以外か……いくら考えても思いつかない。
「じゃあ……次に、魔術の段階や魔術師の階級について。主に魔術は初級魔術、中級魔術、上級魔術、最上級魔術、王級魔術の5段階に分かれるわ。それに伴って、魔術師の階級は初級魔術師、中級魔術師、上級魔術師、最上級魔術師、王級魔術師に分かれているわ。階級ごとの資格はこの紙に書いてある通りよ」
アリアは紙を広げ、黒板に貼った。その紙にはこう書かれていた。
◇◇◇◇◇
『魔術師の階級ごとの資格』
※ 治癒魔術、防御魔術、属性魔術に限る。
初級魔術師――初級魔術を三つ以上習得していること。
中級魔術師――中級魔術を五つ以上習得していること。
上級魔術師――上級魔術を三つ以上習得していること。
最上級魔術師――最上級魔術を三つ以上習得していること。
王級魔術師――最上級魔術を七つ以上、王級魔術を一つ習得していること。
◇◇◇◇◇
確か、初級から上級の魔術師が九割近くを占め、最上級は数十名、王級魔術師は指で数えられるほどしかいないはずだ。
この紙の基準で見ると、俺はおそらく初級魔術師程度だろう。初級で多く扱われるのは風や火、光といった属性で、孤児院にいる間に十種類ほどは習得していた。
「このクラスはそうね。初級魔術師程度が、ほとんどかな。初級魔術師などの称号は、魔術協会の認定試験を合格することで得られるわ。色々と役に立つことが大半だから、受けることを勧めるわ」
リアナやリーガはどの程度なのか、少し気になった。そのとき、誰かがふとアリアの階級を尋ねた。
アリアは少し笑って答えた。
「私……?私は上級魔術師よ」
教室から小さな歓声があがる。
「静かに。次に、魔力について。魔力はあらゆるもの全てに宿る力で、魔術を使う上での根幹に当たる部分ね。魔力は魔術の段階によって消費する量が変わるわ」
「魔力量は努力すればするほど増えるけど、ある一定の歳になると魔力量は増えなくなる。その歳は個人差があって増え続ける人もいれば、若い時に止まる人もいるわね」
魔力量――自分の魔力量がどれほどかは分からないが、少なくとも少量ではないだろうと感じた。
アリアは簡単な詠唱を口にした。空気がぴんと張りつめる。教室の奥で紙の端が微かに揺れた。
「かのものに雷の矢を――」
「雷光の矢」
その魔術は校庭の木に放たれ、木は真っ二つに裂けた。
その直後、授業が終わるチャイムが鳴った。教室のざわめきの中で、アリアは最後に一言だけ付け加えた。
「私はあなたたちが魔術を好きになれるような授業をしていくわ。今後ともよろしくね。授業は終わり!礼!」
放課後、俺は鞄を肩にかけ、リーガと教室を出る。廊下に出ると、日差しが柔らかく差していた。学院の授業は、思ったよりもずっと実りあるものだった。
俺は強くならなきゃ――
心の中で固く決める。母さんを、そしてこの世界を守るために――まだ小さくても、一歩ずつ確かな力を積み重ねていくのだ。




