9.言語の理解
目の前の白髭白髪の犬耳老人と、その隣の金髪少女の背中をじっと見つめながら歩いた。
後ろからは、屈強な獣人の男二人が今も遠夜の背中に睨みを利かせている。
この老人たちがどこかへ案内してくれているらしいことは分かる。罠の可能性も考えて歩いているが、今のところ特に怪しい動きもないし、今後彼らと親密な関係を築いていく必要性を考えれば、今は大人しく着いて行く方が良いだろう、そう考えていた。
しばらく案内に従って歩いていると、里奥にこれまで見た中でも一番の、巨大な樹が見えてきた。その樹の根元付近まで進み、一行は立ち止まった。
巨大樹の幹には木の杭を打ち込んで造られた階段が螺旋状に取り付けられていて、上まで続いている。
どうやらここを上るらしい。
丁度ビルの二階辺りの高さまで階段を上ると扉があった。
老人たちに促され扉の中へ入ると、予想通り中は部屋になっていた。
結構広いが、部屋の中はごちゃごちゃしている。机に椅子に絨毯に、部屋の隅には大樽や木箱が複数あって、木棚に薬瓶が幾つも置いてある。
机の周囲には椅子が四つ設置されていて、老人が奥側に座った。そのまま老人が穏やかな表情で、「さあどうぞ」と言った感じで手前の椅子に向けて手を差し出す。
座れ、ということなのだろう。
遠夜は言われるまま戸惑い気味に老人の正面の椅子に腰掛けた。
椅子に座ると奥の壁に引っ付けられた鹿の頭のオブジェと目が合った。つぶらな瞳が悲しげにこちらを見下ろしている。
どうしたらいいんだろう。そう思った矢先、老人が後ろで見張っていた男達と少女に何か話しかけ、その後間もなく彼らは部屋から出て行き、遠夜と老人は二人きりとなった。おそらく老人が出ていくよう指示したのだろう。
多分この老人は、この集落の長的な存在なのだと遠夜は思う。見張りの男を下がらせたと言うことは、警戒はされていないと考えてよさそうだ。
「*****?」
老人が何か話した。
しかし言葉が理解出来ない。
「****、***?」
「あ〜えっと、その、俺は言葉が分からない。て言っても伝わんねえよな……」
「***、*****」
「ど、どうしよう……」
「********」
生まれてこの方、言葉が通じなかったことが無い。幼少から様々な言語を勉強していたし、そもそもサラには二十ヶ国語の言語がインストールされている。
今どき地球上で言葉が通じない国は無いし、それが当たり前の世界で生きてきた。この様な場合どのように対処すれば良いのかが分からない。
「***? ***?」
「あ〜イエスイエス。サラ、言語解析は」
『まだです』
「ですよね……」
「*********」
「よわったな……」
そうして遠夜が頭を悩ませていると、老人が動いた。
椅子から立ち上がり、扉の前で遠夜を呼んでいる。また着いて来いとのことらしい。
部屋を出て、言われるまま先程の階段を更に上へと上って行く。
すると再び扉が現れ、中へと案内された。
「ここって、書斎か……?」
驚いて辺りを見渡す。
その部屋には無数の本が棚にびっちりと並べ置かれていた。棚に入りきらず地べたに積まれている本もある。
地面にある本のひとつを手に取って開いてみた。
結構分厚くて重みがある。紙は羊皮紙の様な材質で出来ていて、見たことも無い文字がずらりと並んでいる。
当然見たことの無い文字だ。
文字は横に複数個塊で並んだあと、空白を挟んで、また複数個の塊が続いてまた空白。それが何度か繰り返された後に「.」で締めくくられている。恐らく英語等のように文字の並びによって一単語を表し、単語の並びで文を構成しているのだと思う。
――もしかして俺が言葉を理解出来ないと分かってここへ……?言葉を教えてくれたりするのか?
もしもここで、彼に言葉を教わることが出来なたなら。
「*****」
また老人が話しかけてくる。
遠夜はすぐ本に書かれてある文字を指さして老人に詰め寄った。
「こ、これ、なんて書いてある!? 分からない……言葉を……教えて欲しい……!」
老人は少し驚いた様子だったが、すぐに穏やかな表情に戻り、
「アスガ」
そう聞こえた。
「あすが……?」
「アスガ」
遠夜にも分かるようにゆっくりと発音してくれた。どうやら言葉を教えてくれる気のようだ。
しかし「アスガ」と言われてもその言葉の意味がわからない。文字から教えて貰うのは失敗だ。まずは目に見える物から。
遠夜は本を閉じて、固い皮の表紙を爪でコツコツ指さした。
「こ、これは? これはなんて言う?」
「アァ……リィビア」
「あぁ、りーびあ?」
老人が首を振った。
「リィビア」
どうやら「アァ」は相槌だったようだ。
――本はリィビアか、よし。
「じゃあ、あんたは?」
今度は人差し指で老人を指さした。
老人はニッコリ笑う。
「ジェイニル」
「ジェイニル……ジェイニルか」
老人の名前はジェイニル。
ここは自分も名乗らねば、そう思い遠夜は自分の顔を指さした。
「トーヤ、トーヤ・アケバシ」
すると老人は嬉しそうに笑い始めた。
「ハッハッハッ、トーヤ! トーヤ*************!」
豪快に笑いながら握手してくる。
殆ど何を言ってるか分からないが、どうやら歓迎してくれていることだけは分かる気がする。
さっきはいきなり攻撃されてどうなることかと思ったが、目の前の随分親しげな様子の老人、もといジェイニルを見ていると少しだけ安心できた。
――
それから一週間、遠夜はジェイニルの書斎に篭ってひたすら言語の習得に務めた。昼はジェイニルに言葉を教わり、夜は睡眠も忘れてひたすら書斎にある本に目を通し続けた。もちろん読み書きの勉強も怠っていない。
勉強に際して一番役に立ったのは図鑑だった。絵と単語がセットで書かれてあるので、見ただけでその単語の意味を理解出来る。
それとこの分厚い辞典もかなり役立っている。辞典には凄まじい量の単語とその意味が簡単な説明文で書き記されている。説明文に分からない単語があればそれをまた調べることで、言葉の意味を片っ端から頭に詰め込んでいくことが出来る。とは言えまだまだ知らない単語が多すぎるので、効率はかなり悪いが。
しかし言語を解析していくにつれて、分かってきたこともある。この言語、ギフタル語は世界中の広範囲に分布されていて、世界四大国でも主流に使われる世界共通言語のようだ。
文法は独特だが少し日本語に似ている。発音は英語に近いので苦労はなかったが、やはり一から学ぶとなるとそれなりの時間がかかる。だがサラのお陰もあって言語の解析は現状スムーズに行われている。この調子ならあと三週間もすれば日常会話出来るレベルまで行けるかもしれない。
しかし同時に、遠夜の疲労も限界に達し始めていた。
「メギアル……メギアルって何だ……魔法みたいなもんか? この世界には魔法があるのか?くそ……頭痛え」
子供っぽい絵本を片手に、頭を掻き毟る。
『そろそろ休息が必要です。もう九日間まともに睡眠をとっていません』
「分かってる、今日この後少しだけ寝るから……」
そう言って本のページを捲っていると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
扉を開けて入ってきたのは馬のような耳を頭から生やした老婆、ケルミナ婆ちゃんだ。多分だがジェイニルの奥さんだと思う。
「おやトーヤ、元気****? ****、食事****」
サラのおかげで覚えた単語だけはスムーズに聞き取れるが、まだその内の殆どの意味が理解出来ない。ただ、彼女の手に持つトレーに乗ったパンとスープを見て、彼女が食事を運んできてくれたことは理解できた。
「あぁケルミナ、ありがとう」
まだまだきごちない言葉で礼を言う。
「*****。あまり無理しない*****。***、ジェイニルがあなたを呼んでいたわ」
最後の一文はかなりナチュラルに聞き取れた。これも勉強の成果だと、少し嬉しくなった。
「あ〜……わかった」
本当は後で行く、と言いたかったが言葉が出てこなかったので、親指を立ててグッドジェスチャーで答えた。
するとケルミナは笑顔で軽く頷くと、部屋を出ていった。
本当にジェイニルとケルミナには良くしてもらっていると思う。何故見ず知らずの自分にここまでしてくれるのか、その理由が遠夜には分からないでいる。しかし今は有難くこの施しを受けようと図々しくも考えていた。
「とにかく会話だ。まずはそれが出来なきゃ話にならない」
硬めのパンを噛みちぎって、再びページを捲った。
――
それから少しして遠夜がジェイニルの元へ向かうと、突然家の外へと連れられた。
何だか久々に外へ出た気がする。この里へ来てからと言うもの、ほぼずっと書斎に篭もりっきりだった遠夜にとって、外の空気はあまりに新鮮だった。
まだ昼間のはずなんだが、やっぱりこの森の中はちょっと薄暗い。それをカバーするためか、あちこちにランタンが吊るされている。
だが空気は最高だ。
遠夜は伸びをしながら深呼吸して、数日ぶりの新鮮な空気を堪能する。
そんな遠夜を見て隣にいたジェイニルが少し微笑みながら口を開いた。
「今日はこの村を見て***、おぬしを****やろう」
理解するのに一瞬時間を要したが、文脈とジェスチャーから察するにどうやらこの里を案内してくれるつもりのようだ。
ジェイニルはまだ言葉が不自由な遠夜の為に、いつも簡単な言葉でゆっくりと大袈裟なジェスチャーを交えて話してくれる。
「うん、ありがとうジェイニル」
「では行こうか、*****」
そう言うとジェイニルは遠夜と、遠夜の後ろに仏頂面で突っ立っていた金髪の犬耳少女に笑いかけた。
ああ、やっぱりこの子も着いてくるんだ、とそう思った。
彼女は遠夜をこの里まで案内してくれたが、その後は殆ど会話をしていない。挨拶しても返事すらしてくれないし、すぐ視線を逸らされてしまう。
彼女も同じジェイニルの家に寝泊まりしているみたいだし、おそらくジェイニルの娘、にしては若すぎるから孫とかそんな感じだろうと思っている。
彼女とジェイニル達の関係性を聞けるほどの会話力が今の遠夜にはないので、その辺はまた今度聞いてみようと考えていた。
ジェイニルに連れられなが里の中を歩く。
歩みを進めながら周囲を見渡しているが、ファンタジックな風景に一々驚かされてしまう。
こんな神秘的な大樹の森の中に村や里があるってだけでも凄いのに、木の中に人が住んでるなんて。
しかし何だろう、と気になった。あちこちに人の気配や視線を感じるが、肝心な人の姿が見れない。
すると前方右手側の家の窓からこっちを見ていた村人の一人と目が合った。
村人は目が合うなりやな顔をして、そそくさと部屋の奥へと身を隠した。
他にも別の家の窓からこっちを見ている人があちこちにいる。今度は左斜め前の家。窓からこっちを覗き込む男の子と目が合ったが、男の子の身体は母親っぽい女性に窓からすぐ引き離されて、カーテンがピシャリ。
――何だろう、これ。
多分だがあまり歓迎されてない。と言うか凄く嫌われてるまである。ジェイニルやケルミナはあんなに優しいのに、対応の差が激し過ぎて遠夜も困惑していた。
すると、前を歩くジェイニルが立ち止まった。
「ここは******」
ジェイニルが指さした目の前には綺麗な川が流れていた。
村の端にある小さな川で、遠夜達が村に入る時にボートを停めた水辺とはまた別の川だ。
「ワシ達はここで***使う水を***。***、飲む***使う***、****」
――おっと、知らない単語ばかりでこれは解読が難しい。
だが言わんとしてることは何となく伝わってきた。多分生活に必要な水はここから使うってことだろう。飲水だけじゃなく食器洗いや洗濯とか、あとは風呂の水もそうだろう。
そうである。この世界にもちゃんと風呂があるのだ。この村に来た初日、遠夜はジェイニルの家で風呂に入らせてもらった。風呂桶に水を入れて火であっためて使うのだ。あの風呂の水はこの川から汲んだものだったんだなと今理解した。
あれは最高だった。今日帰ったらまた使わせてもらおうなんて考えていると、真後ろから遠夜の後頭部目掛けてビュンと何かが飛んで来る気配を感じ取った。
それが直撃する既で、ほぼ反射的に右手でそれをキャッチする。
見ると五センチくらいの石ころだ。
振り返って見てみると、垂れ耳を頭に付けた五、六歳くらいの少年が遠夜を睨みつけていた。
この子供が石を投げつけたのだろう。
――いや、何で?
遠夜が困惑していると、ジェイニルが大声で叫んだ。
「**! 石******!」
すると少年がまた何か叫んだ。
「*****!! ***!!」
すると今度は隣にいた金髪少女が近くにあった小石を拾い上げると、それを子供の方目掛けてぶん投げた。
石ころは少年の顔面スレスレを横切り、ビビった少年は悲鳴をあげてどこかへと逃げていった。
展開が唐突すぎて全くついていけない。
思わずジェイニルの顔を見る。
「今のはなに?」
「うむ……」
――いや、うむじゃなくて。
「彼は、なんて言った?」
「……***と」
「それなに?」
ジェイニルは物凄く言いづらそうな顔で、首チョンパのジェスチャーをした。
つまりは死ねとか、殺すだとか言われたわけだ。
――いやなんでだよ。
何で見ず知らずの、それもあんな子供に突然石投げられた挙句そんなことを言われたのだろうと遠夜は思う。知らぬ間に自分はあの子にとんでもないことをしでかしたのだろうか。勿論そんな憶えは全く無いのだが、しかしジェイニルに理由を確認したくとも言葉が出てこない。なんとも歯痒い状況に遠夜は頭を掻き毟った。
「トーヤ、******帰ろう」
申し訳なさそうな顔でジェイニルは言う。
するとそんな時、どこからかガランガランと鈍いベルの様な音が鳴り響いた。
音のする方へ視線を向けると、里の入口の方から獣人の男達がぞろぞろ入って来るのが見えた。
「*****〜!」
先頭の男達が何か叫ぶと、周囲の家々から獣人の女性や子供達が嬉しそうに出て来る。よく見れば、男達は大きな台車を里に運び込んで来ていた。その辺りに人集りが出来ていて、ここからでは積荷が何なのか良く見えない。
台車が近くへ来たところでようやくそれが何だかわかった。
イノシシだ。でっかいイノシシが台車に紐で縛り付けられていた。思わず「おお」と声を上げたくなるほどの大物だった。
屈強な男共はどこか自慢げで、おんな子供ははしゃぐ様に声を上げている。
どうやら男達は狩りに出ていた様だ。ちょうど大物を捕らえて戻ってきたのだろう。
すると先頭付近にいた大柄の男が遠夜の隣にいたジェイニルを見て、鼻高な様子で声を掛けてきた。
「******」
「***、*****!」
二人は笑顔で何か話している。
そんな時、男は隣にいる遠夜の存在に気が付いたようで、話途中でこちらへと視線を移し、すぐに嫌な顔をして見せた。
眉を顰め、嫌悪とも軽蔑とも思える視線を向け、彼は口を開いた。
「まだ***、この***な人間め」
表情声色から察するに、罵倒されたのだとすぐわかる。気持ちを伝えるのが上手いやつだ、なんて思う。
男は続けて自分の頭を指さして、心底見下した顔で言う。
「お前のような***は***だろう。***空気*******、****。里長に****いい気分***ここから***」
――お前のようなバカはどうたらこうたら。空気がどうたら。いい気分?はいい気になるな、調子に乗るなって意味か?
遠夜が頭の中で分析しながらそれを聞いていると、すぐにジェイニルが間に割って入った。
「こらゴイル!やめぬか!わしの***じゃぞ!」
「里長***!このような***を何故****!」
「彼は***ではない。***をするでない」
ジェイニルに何か言われ、男はこちらを鋭く睨みつけたあと背を向けて去っていった。
「行こうトーヤ……」
ジェイニルはどこか悲しそうに呟く。
言われるままジェイニルについて歩き出す。
そんな中、
「なあジェイニル、え〜と、さっき……あの人、なんて言った?」
「……、」
「俺は知りたい。勉強、そのため」
ジェイニルは物凄く答えづらそうな顔で少しの間黙り込み、その後汚い言葉も全て教えてくれた。
――
目が充血してる気がして、目頭をぎゅっと押さえた。
ジェイニルの家に戻ってきた遠夜の疲労は、限界を迎えていた。ここ最近ずっと寝ずに言語の習得に没頭していたから、流石に睡眠を取らねばまずいだろう。
しかし、その前に風呂に入ってからにしよう。そう決めていた。
なんとここには風呂がある。あるならば入らなければダメなのだ、日本人として。
「確か風呂場は一階だったよな」
重たい身体を動かして、階段を使って一階の部屋へと移動した。
一階の部屋のすぐ正面にはキッチンがあって、更に右奥に進めばトイレと風呂のある部屋へ出られる。
遠夜の記憶通り部屋の右奥に風呂場へ続く扉があった。
七日前、ここへ来た初日以来の風呂だ。早く入ってサッパリしたい。ケルミナ達には後で使わせてもらったと報告すればいいだろう。とにかくもう限界だ。早く入って眠るのだ。そう意気込んで勢い良くドアノブに手をかけた。
この時の遠夜は度重なる疲労によって、思考力と五感が著しく低下していた。そして早くこの疲労から開放されたいという思いが先走った結果、中に人がいるかどうかの確認をしなかった。
扉を開けた時には最早、どうしようもなかった。
扉の先にいた素っ裸の金髪少女と目が合った。
それはもうバッチリと、宝石みたいなブルーの瞳がしっかりとこちらを捉えていて、その瞳の中に自分の間抜け面がくっきりと映っていた。そして決して言い逃れ出来ないこの状況下で、何とか捻り出した言葉が覚えたての「ラ、ラグシアス……」だけだった。
「ひぃいやあああああああああ――――――――ッ!!」
鼓膜が破裂しそうなほどの大絶叫の直後、少女の右拳がストレートに飛んできた。甘んじてそれを受け入れる覚悟を決め、瞳を閉じる。
次の瞬間鈍い音と衝撃が遠夜の鼻先をぶっ飛ばした。
「ぐはっ」
鼻先を押さえて数歩後ずさる。
――け、結構いいパンチしてるじゃないの。
鼻血がたらりと滴る。
即座に目を閉じたまま両手を上げて降伏のサインをとった。
「ご、ごめんなさい! 覗くつもりはなかったんだ……えっと、何て言えばいいんだ?」
しかし彼女からの反応がない。
不思議に思い、恐る恐る片目を薄く開いてみると、
「死ねぇええ――ッ!!」
タオルで前側を隠した少女が、絶叫しながらキッチンにあったナイフをぶん投げた。
「わあああっ!?」
素っ頓狂な声を上げて身体を捻ると、背後の壁にストンッとナイフが突き刺さった。
「****ッ!」
「まてまてまて、誤解だっ!」
しかし彼女は止まらない。
「バカバカバカッ! クズ! この***! キモイのよ***!!」
彼女は次々に周囲にある様々な物を投げつける。
それを全て躱しながら遠夜は、
「すげえ! なんて言ってるか意外と分かるぞ! 勉強の成果だ!」
『マスター、罵倒されています』
その後少女との格闘は一時間続いた。