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第12話 共犯者たちのコミュニケーション

朝日が差し込む領主の館。リュドヴィックとその取り巻きが消え去った後の静寂が、不気味なほど館全体を包んでいた。


「さあ、これからどうするかだな」

ジュリアンが執務机に腰を下ろし、深い考えに沈むように言った。その姿はまだ幼いが、冷静な判断力と、何よりもその知性が窺える。


アイリス、ルーカス、そしてジュリアンの三人は、領主の執務室に集まり、これからの戦略を練っていた。カーネルは、荒れ果てた屋敷を整理整頓するよう命じられ、執務室から遠ざけられていた。ジュリアンは、彼を館の管理者として立てる決定をすでにしていたが、今は三人だけで話すべきことがあった。


「カーネルを後見人にするのは当然だな」

ルーカスが静かに口を開いた。「彼は領主としての実務をこなす力はないが、ムードメーカーとしての役割は果たせる。彼の人柄なら、村人たちや兵士も安心するだろう」


ジュリアンは頷きながら机に置かれた書類を見つめた。「ええ、彼は私にとって信頼できる存在です。領主の表立った役割は彼に任せ、実務は私が引き受けましょう。もちろん、貴方たちの助けも必要ですが」


「もちろんだ」

アイリスは微笑みながら応じた。だがすぐに表情を引き締め、冷静な声で続けた。「ただ、問題も残っているわね。リュドヴィックもろとも、アレクサンドラの側近を殺してしまったことは、確実に波紋を呼ぶでしょう」


「そうですね」ジュリアンは冷静に言葉を返す。「アレクサンドラは、王都でも強大な権力を持つ人物。私たちが彼女の側近を殺したとなれば、すぐに反撃に出るかもしれません」


アイリスは頷き、続けた。「あの場では、ジュリアンの命を最優先にしたことが最善だったのは確かです。ただ、これから彼女の手が伸びる可能性も高い。何らかの対策が必要ね」


ルーカスも同意するように腕を組んだ。「その通りだ。あいつの力を過小評価するのは危険だ。だが、今はジュリアンを守り、この地を確固たる拠点にすることが先決だろう」


しばらく沈黙が流れたが、ふとアイリスが口を開いた。「ところで、リュドヴィックやアレクサンドラの側近の魂から、何か情報を聞き出すことはできないかしら?」


ルーカスは少し考え込むように目を閉じた後、静かに首を振った。「試してみたんだが、霊魂との対話はできなかった。彼らの魂は対話を拒否したんだ。恨みや恐怖で満たされていて、何も聞き出せなかった。放っておけば悪霊になる可能性があったから、浄化しておいたよ」


「浄化した?」ジュリアンが興味深そうに尋ねた。「霊魂を強引に従わせることはできないんですか?」


ルーカスは微笑みながら、ジュリアンの鋭い質問に答えた。「確かに、霊魂を無理やり従属させるネクロマンサーもいる。だが、俺はそういうやり方は好まないんだ。霊魂とのコミュニケーションを重視しているんだよ。対話できる霊とはできる限り友好的に協力してもらう。それに、無理に霊魂を縛りつけると、魔力を余計に消耗するからな」


その言葉を聞いて、アイリスは過去の出来事を思い返した。


「確かに、そうね……。最初に村で出会った、盗賊に殺された霊も、ルーカスは無理やり従わせたわけではなかった。あの時も、彼らの意思を尊重して協力を仰いでいたように見えたわ。そして、カーネルに取り憑いていた貴族夫妻の霊も、彼らが協力してくれるまで、丁寧に接していたように感じた。霊の意思を尊重している姿が、一貫していたわね」


アイリスは感慨深げに語った。ルーカスがただ力で操るネクロマンサーではなく、常に霊との信頼関係を重視していることが、彼の人間性を表していることに気づいた。


ルーカスはアイリスの言葉に軽く頷き、笑みを浮かべた。「その通りだよ。俺は、ただのネクロマンサーじゃない。霊たちにも意思がある。彼らを無理に従わせるのではなく、彼らに協力してもらうのが俺のやり方だ」


「なるほど……」ジュリアンが興味深そうに言った。「貴方のようなネクロマンサーは、聞いたことがない。貴方の力、そしてその生き方には敬意を感じます」


アイリスも続けた。「そういえば、館に突入した時も……抵抗を続ける兵士たちを生身で打ち倒していたわね。ネクロマンサーは後方支援のイメージがあったから、少し驚いたわ」


ルーカスはその言葉に軽く笑みを浮かべた。「俺はネクロマンサーの中でも変わり者でね、そのせいで敵を作り、この辺境へと逃げ延びてきたわけだが……そろそろ話してもいいかもしれないな。俺の過去と、敵のことを」


ジュリアンがその言葉に反応し、身を乗り出した。「……興味深いですね。貴方の過去と、敵……その話をぜひ聞かせてください」


ルーカスは静かに頷き、昔の記憶を呼び起こすかのように、目を閉じた。執務室の静かな空気の中で、彼の過去が語られようとしていた。


「俺の過去は……平坦なものではない。だが、それを語る前に、覚悟して聞いてもらいたい。俺がなぜネクロマンサーになったのか、そして何を追い求めているのかを……」


アイリスとジュリアンがルーカスの話に集中する中、緊張感が徐々に高まっていく。ルーカスが過去に追ってきた影――それが、これから彼らが対峙しなければならない新たな敵への手がかりとなるかもしれない。

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