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第11話 決意の突入

「カーネル、貴方の協力には感謝しています。でも、ここからは私たちに任せてください」

アイリスの静かな声が響く。カーネルはぎゅと何かを握りしめ、悩ましげに首を振った。


「……だが、私は……ジュリアンを助けたい。もう失いたくないんだ……」


ルーカスが少し微笑み、冷静にカーネルの肩を叩いた。「貴方の思いは十分に伝わっています。でも、今は私たちの役割です。貴方がここで待っていてくれれば、それが一番の助けになる」


カーネルは無言のままうなずき、握りしめた手を開くと、大事そうにペンダントを差し出した。「このペンダントを……ジュリアンに見せてください。これを見れば、彼はすぐに私が味方を連れて戻ってきたと理解するはずです」


アイリスはそのペンダントを受け取り、カーネルに向けて静かに微笑んだ。「必ず、彼を救い出します。貴方の信頼に応えます」


――――――――――


アイリスとルーカスは、カーネルから得た情報をもとに、領主の館へと向かった。ジュリアンは複数の逃走経路を提案していたらしく、その情報は攻める際の突入口としても利用できた。


「……彼が計算していたんだな。カーネルが助けを連れて戻ることを見越して」

ルーカスはぼそりとつぶやいた。アイリスも頷く。「あの子は……やはりただの子供じゃない」


二人は、カーネルの使った道とは別の入り口から館へと潜入した。静かな廊下を進みながら、館の奥へと近づく。


――――――――――


「そこだ、亡霊だ!」

突如、館の兵士たちがざわめき始めた。ルーカスが手をかざすと、亡き貴族夫妻の亡霊が霧の中から現れた。優雅な装いをまとった亡霊たちが静かに姿を現すと、兵士たちは一斉に恐怖で膝をついた。


「許してください……!」

「申し訳ありません……!」

多くの兵士たちは貴族夫妻を慕っていたのだろう。彼らの姿を見るだけで、後悔と恐怖が入り混じった表情で道を開けた。彼らには戦う意志などなく、ただひたすらに許しを請う声が館中に響いた。


だが、一部の兵士たちは異を唱えた。「これは幻影だ!こんなもの、我々を騙そうとする罠だ!」


その兵士たちが剣を振りかざして襲いかかろうとした瞬間、ルーカスが冷たく笑った。「愚かな者だ……」


次の瞬間、ルーカスはその兵士たちを一瞬で打ち倒した。亡霊の姿を見て従わない者には、容赦はしなかった。


「行くぞ、アイリス」

アイリスは頷き、二人はさらに館の奥へと進んだ。


――――――――――


ジュリアンの部屋にたどり着くと、そこには予想通りリュドヴィックとその取り巻きたちが待ち構えていた。リュドヴィックはジュリアンを前に立たせ、手を背中に回して人質にしていた。彼の顔は焦りと狂気が混じった表情をしており、その目にはもはや冷静さの欠片もなかった。


「来たな……だが、ここまでだ。近づけば、この子の命はないぞ!」

リュドヴィックの手がジュリアンの首元を強く掴んでいる。取り巻きたちも武器を構え、不安げに周囲を警戒しているが、その顔にも恐怖が浮かんでいる。


アイリスは冷静に一歩前に進み、静かに言った。「その子を解放しなさい。これ以上、無駄な抵抗はやめるべきです」


「黙れ!」リュドヴィックは震える声で叫んだ。「俺は、この子を手放すわけにはいかない!俺の人生は、これにかかっているんだ!」


彼の手がわずかに震え、そのせいでジュリアンの身体が揺れた。アイリスは一瞬、心臓が凍りつくような感覚を覚えた。このままでは、リュドヴィックは取り返しのつかない行動を起こしかねない。


「やめなさい……」アイリスは静かに、しかし力強く命じた。「貴方の負けです」


だが、リュドヴィックの耳にその言葉は届かなかった。


「俺は……俺はまだ……!」


その瞬間、アイリスの体から強大な魔力が解放された。彼女は一瞬の躊躇もなく、その魔力を集中させ、リュドヴィックとその取り巻きを一瞬で撃ち倒した。強烈な閃光が部屋中を照らし、気づけばリュドヴィックは地面に倒れ伏していた。


ジュリアンは無事だった。


アイリスは深く息を吐き、魔力を収めた。リュドヴィックの取り巻きも、アレクサンドラの側近さえも、全て即死していた。彼らの命を奪うことに迷いはなかった。ジュリアンの命を守るためなら、それが最も合理的な選択肢だった。


――――――――――


リュドヴィックの倒れた体が静かに冷たくなっていく中、ジュリアンは揺るがぬ冷静さを持って、アイリスとルーカスを見つめていた。彼の瞳には、ほんの少しの驚きも動揺もなく、むしろ彼らを観察するような知性が宿っていた。


「……貴方たちは何者ですか?」

ジュリアンの声は穏やかでありながら、その中にある鋭さが際立っていた。あどけない顔立ちでありながら、まるで大人のように二人を見透かすような眼差しを向けていた。


アイリスとルーカスは一瞬だけ目を見合わせた。この子には、もう隠し事はできない――二人はそう直感した。


アイリスは少し息を整え、冷静に語りかけた。「わたしの名前はアイリス。表向きは『聖女』として振る舞っているけれど、本質がそうではないことは……貴方にはおわかりでしょう?」


ジュリアンはわずかに笑みを浮かべた。「ええ、そうですね。貴方が聖女であるというのは、建前に過ぎない。では、貴方の本当の目的は?」


その問いかけに、アイリスは隠すことなく言葉を続けた。「私の目的は、復讐を果たすこと。そのために、この地を拠点として再建したいのです」


ジュリアンは再び彼女をじっと見つめた。そして少しの間、考え込むように口を閉じた後、再び口を開いた。


「つまり、私を助けたのは、復讐のための拠点としてこの地を利用するため――そして私を共犯者にしようとしている、ということですか?」


アイリスはジュリアンの鋭い洞察力に改めて感心し、微笑みを浮かべながら答えた。「その通りです、ジュリアン。私たちは貴方の力を借りたい。そして、共に敵を打ち倒すために協力してほしい」


ルーカスもジュリアンを見つめ、軽くうなずいた。「君の知恵と力が必要だ。貴族の名の下で守られているだけの子供ではないことは、もうわかっている」


ジュリアンは短く息を吐き、まるで大人のように肩をすくめた。「なるほど……。共犯者か。今まで誰もそんな提案をしてこなかったな」


彼は一瞬、遠くを見つめるように目を細めたが、すぐに意志のある強い瞳をアイリスとルーカスに向けた。


「良いでしょう。共犯者として、貴方たちと共に戦います」


その言葉に、アイリスとルーカスは満足げに微笑んだ。これからの戦いには強大な仲間が必要だった――そして、ジュリアンはまさにそれを体現する存在だ。


「よろしくお願いします、ジュリアン」

アイリスが静かに頭を下げると、ジュリアンも軽く頭を下げた。「こちらこそ、アイリス。そしてルーカス。共に戦いましょう」


こうして、ジュリアンを救出し、彼と共に復讐のための同盟が結ばれた。アイリスとルーカス、そしてジュリアンの戦いは、さらに激しく、過酷なものになっていく――。

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