アスクレディアサーガ 第1章 第1話③
「簡易結界」で休息している一団とは別に、単独行動を取っているファルコン。「盗賊」としての「仕事」をするべく。
(扉の中に入ったはいいが、ここで変な罠に捕まっても…な)
動かなくなったストーンゴーレムの横を抜けて、遺跡の中を調査していく…。
半刻後、ある程度体力が回復した一団は「簡易結界」を解除して、単独行動をしているファルコンに合流するべく行動を再開した。それを見たファルコンは…、
「ようやく動き出したか。」
「ああ、待たせたな。」
答えるヤマト。ヤマトの動きはまだ少し重そうだったのを見て
「本当に大丈夫か?ヤマト。」
問いかけるグレイ。
「何とかな。」
答えるヤマト。
一団が「簡易結界」で休息をしている間に単独行動で調査を進めていたファルコンが、自作の周辺図を用いて状況を説明する。
「てな訳で、仕掛けてあった罠はあらかた解除しておいた。」
「流石ね、ファルコン。」
「流石だワン。」
「一人二役かよ?」
ファルコンの説明に褒めるマリィとココアに茶々を入れるファルコン。
事前にファルコンが仕掛けられていた罠を解除し、同時に周辺図を作成してくれていたおかげで、その後の探索は大きな問題もなく進められていく。エマは周辺図を元に正確な「地図作成」をしていく。地下迷宮や遺跡探索において、「地図作成」は一団の「生命線」になる。故に、一団は正確な「地図作成」が必要とされるのだ。
「何、ここ?何でここだけ調べてないの?」
マリィが何気に質問する。
「おい、俺達「盗賊」が手出し出来ない「モノ」がある事、忘れてないか?」
ファルコンが答える。
「ここの扉だけ、解除出来なかった。何故か分かるか?」
「…!?まさか「魔錠」?」
「そう、そのまさか。」
流石の「盗賊」でも、「古代語呪文」の「魔錠」だけは手が出せないのだ。
「ここは「古代語呪文」の使い手のお前の出番だぜ、マリィ。」
ニヤニヤしながらマリィに答える。
「あのねぇ、「古代語呪文」使えるのは私だけじゃないでしょうが!!」
「「古代語呪文」のスペシャリストなんだろ?「魔術師」様は!!」
「…ッ、汚い…!!」
流石に「「古代語呪文」のスペシャリスト」と言われて黙っているわけにはいかない。ある意味、見事にファルコンの策に嵌るマリィ…。
「…確かに私達「魔術師」は「古代語呪文」のスペシャリストだけどっ!!」
「で、やるの?やらないの?」
「…。」
「その辺にしておけ、ファルコン。」
ヤマトがファルコンとマリィの口喧嘩の間に入る。
「マリィ、無理なら俺がやる。一応「古代語呪文」使えるからな。」
ヤマトが代わりを名乗り出る、が…
「いい、私がやる。」
「大丈夫か?かなり魔力を…」
「大丈夫。」
マリィが意地でも「解錠」をやると言うのだ。
「いいのか?」
「大丈夫だって!!」
「厳しいなら、私が…」
マリィを心配するフレアだが、
「フレア有難う、私は大丈夫だから。」
フレアに答えるマリィ。
「誰かさんに煽られたからには、意地でも「解錠」は成功させる。失敗してとんでもない目に合ったら、それは全部ファルコンのせいだからね!!」
と答えながら、ファルコンを睨むマリィ。
「後で詫びを入れた方が身のためだぞ、ファルコン。」
「…ああ、そうするわ。」
グレイの一言にすっかりしょげるファルコン。
「魔錠」が掛けられた扉に、丹念に「魔力感知」を掛けて調べるマリィ。
「ん~、これなら行けるかな。「古代魔法王国」の遺跡の割には、随分「力量」の低い「魔錠」だなぁ…。」
「ご主人様、大丈夫かワン?」
「マリィ、大丈夫~?」
傍に控えるココアと、ココアの背中にまたがるラピス。
「で、結論はどうだ?」
「うん、大丈夫。行けるよ。」
簡単に確認をするヤマトとマリィ。
扉の前に立ったマリィ。改めて精神集中を行い、呪文詠唱に入る。
「…。」
「な、なぁヤマト。俺…、」
「…。」
「なぁヤマト…、」
「自分で責任取れ。」
「そんな~…」
マリィを煽った事に恐怖を感じたのか、ヤマトに助けを求めたファルコンだが、ヤマトは一言答えた。
「当たり前だ。あれだけ煽っておいて、何もない訳ないだろう。」
被せるように意見を述べるグレイ。
「え、エマ…」
「今回ばかりは、お助け出来ません!!自分の発言に責任を取って下さい!!」
エマに縋ろうとしたファルコンだったが、エマはきっぱり断る。
「…、」
恐る恐るフレアの方を見るファルコンだが…
「…。」
ニコニコと笑顔のままであるが、何処か怒りの気配をしたフレアを見て黙るファルコン。
「解錠!!」
ガコンッ!!
呪文詠唱の完了と共に、大きな音を立てて「魔錠」の掛けられた扉の鍵が解錠された。
「今回のこの扉、あまり大した事なくて助かったわ。」
「お疲れ様。」
「解錠」の感想を言いながら一団の元に戻るマリィ、一言労うヤマト。
「さぁてと、散々煽ってくれた誰かさんにお礼をしないと…。」
と言いながら、怖い笑顔でファルコンの元に行くマリィ。
「マリィ、怖~い…。」
「今回の事は、流石にご主人様もお怒りだワン。」
怯えるラピスと妙に冷静なココア。
「でも、当然です!!」
と言いながら跨っているラピスごとココアを抱き上げるエマ。他の面々は
(やれやれ…)
と内心思う。
「あ、あの、いや、その…」
マリィの怒気にたじろぐファルコン。
「今回の件、ある条件で全て水に流してあげる。」
マリィの突然の提案に
「条件?何だよ?」
驚きながら伺うファルコン。
「一ヶ月、私の使いパシリになってもらおうかな!!」
「え?」
大胆な条件を出すマリィに、驚くファルコン。
「大人しく従っておけ。今回ばかりは自業自得だ。」
ヤマトが釘を指すように促す。
「…わ、分かったよ。パシリでも何でもやってやろうじゃないの!!」
「皆、言質取ったけどいいよね。」
ファルコンは心底反省しながら思った…
(これからは迂闊な発言は控えないと…)
「魔錠」が解錠された大きな扉をヤマトとグレイの二人で開く。開いた先の部屋は、これまで調査した部屋と比べるとかなり狭い。それでも、奥行きは10m程ある。
「探索していない部屋はここだけ。」
「他は?」
「お前らが休んでいる間に粗方調べた。罠もあまりなかったし。」
「他の部屋は何かあったの?」
「俺には読めない本とかが山程あった。」
「本当!?後で見に行かなきゃ!!てか、何で先にそれを教えてくれなかったの?」
「いや、その…」
マリィがファルコンに単独調査した他の玄室の話を聞く。それに答えるファルコン。先程の口喧嘩が嘘のように落ち着いた話になる。ただ、そんな答えの中で一つ口ごもるファルコン。
「「魔錠」があったからだろ、ファルコン。」
「ぐ…、そうだよ。ここにお宝がありそうだから、こっちを先に開けてほしかったんだよ!!」
冷静にヤマトが真相を突き、本当の事を離すファルコン。
「ふ~ん、そっか。まぁいいや。でも、お宝が見つかっても、アンタにはやらないからね。」
「なん…」
「あれ?さっきの事…」
「何でもありません!!」
マリィに反論しようとするファルコンだが、先刻の件もあってすぐに黙る。
「ファルコン、だらしな~い!!」
「自業自得です!!」
「そうだワン!!」
「まあ仕方ありませんね、「身から出た錆」とは良く言いますし。」
ラピス・エマ・ココア・フレアの四人は世間話の如く、ファルコンの話をする。
「ぐぬぬぬぬ…」
三人+一匹(?)の話を聞き耳立てても、反論出来ないファルコン。
玄室を調べる一団。周りをよく調べていくと、玄室の一番奥の角に幾つかの箱状のものを発見した。
「間違いない、宝箱だ!!全部で三つだな。」
嬉しそうに話すファルコン。
「さぁ~て、俺の「仕事」だな!!グレイ、先に俺が罠を調べるから「透視」の呪文で確認してくれねぇか?」
「分かった。」
嬉々として作業を始めると共に、グレイに「神聖呪文」の一つである「透視」の呪文の詠唱を依頼するファルコン。「透視」の呪文は、宝箱の罠を見抜く呪文である。この一団の「神聖呪文」の使い手はエマ・フレア・グレイの三人。その内、エマとフレアは戦闘中の呪文行使を優先させているため、移動中の呪文行使は専らグレイが担当しているのだ。
「…、こっちは特に罠はないな。で、こっちは…」
嬉々として罠の有無を手早く調べるファルコン。
「…いつも思うんだが、本当にそんな感じで「罠」分かるのか?」
グレイがファルコンに問う。
「ん?何で?」
「俺の知る他の盗賊は、結構慎重に調べたりしているからな。」
「他の奴がどういったやり方をしているか知らねぇが、俺はこのやり方で通しているんだよ。実際ちゃんと結果残しているだろうが!!」
「あぁ、そうだな。」
「それに、アンタら「聖騎士」とかだと、所属している騎士団とかによって使う「剣術」とかも違うって話聞いた事あるぜ。それと同じモンだぜ。」
「…そうか。」
「盗賊」の技術…盗みや罠の解除方法等…について、所属している「盗賊ギルド」やその師匠筋によって手法が変わるのはよくある事である。グレイから見たファルコンの「手法」は、「本当に大丈夫なのか?」と思わせる位「軽く」「適当に」やっているように見えてしまうのである。
戦士や騎士・聖騎士の剣術も、同様に微妙に「剣術」としての「手法」が変わるのである。特に国家所属の「騎士団」で採用されている「剣術」は、国家或いは騎士団で全く「別物」の「剣術」となるのだ。
「OK、調査は全部終わった。全て罠はない…が、」
「「透視」の呪文を使うぞ。」
ファルコンが調べ終わった三つの宝箱は、罠はないと判断した。しかし、この一団では、常に念のために「透視」の呪文を使用するのだ。ファルコンが調べ終わったと宣言したと同時に、グレイが穏やかに呪文詠唱をする。
「…「透視」。」
「透視」の効果が発揮すると、宝箱は僅かな光が放たれる。
「どうだった?」
「こういった遺跡でこの効果は珍しいな。全て「罠はない」と出た。」
ファルコンの問いに答えるグレイ。通常、古代魔法王国期の遺跡で発見される宝箱は、大抵何らかの罠が仕掛けられている。故にグレイは「珍しい」と言ったのだ。
「でも、解除はしっかりやってくれよ。「透視」の判別効果は100%ではないからな。」
「了解。皆、少し下がってくれ。」
ファルコンに釘を指すグレイ。即答で返すファルコン。ファルコンも罠解除の危険性は十分理解しているからだ。ファルコンの指示で、一団は宝箱の位置より5m程下がる。
「罠はなくても、変に強力な施錠されてるとな~。」
軽口叩きながら、愛用のツールを出して鍵穴にゆっくり差し込む。何もない事を確認したファルコンは、他の道具を出しながら宝箱の解錠を試みる…。
数分後…、
「よしっ!!全部解錠したぞ!!」
ファルコンは、無事に宝箱の解錠に成功した。ゆっくり宝箱の蓋を開ける…。
「で、どうなんだ?フレア。」
解錠した宝箱の中の「戦利品」の「鑑定」を行うフレア。入手したばかりの様々な武具やアイテムと言った「戦利品」は、「鑑定」を行わないと「正体不明」な「モノ」として扱われてしまう。街にある「冒険者の宿」や武器・防具等の販売を行う店舗に行けば「鑑定」をしてもらえるが、その場合は有料となる。そのため、冒険者一団によっては、「鑑定」の出来る「司教」・「大司教」・「魔導師」・「大魔導師」を一団のメンバーに入れる事もある…が、「鑑定」可能な職業は上級職の「司教」を除くと全て最上級職である。つまり、「鑑定」可能な職業の者がいるだけでかなりの「力量」の持った一団となるのだ。
「はい、まずは…「回復」の水薬が5本と「治癒」の水薬が5本。」
「え?」
「次に…「帰還」の巻物が2本。」
「え?本気かよ!?」
手に入れた「戦利品」が、あまり金にならない水薬と巻物で困るような素振りのファルコン。と言うのも、水薬と巻物は「錬金術」で製造出来るアイテムである。但し、製造できる水薬と巻物は低レベルの呪文のものに限られる。現在では、「学院」や「寺院」で購入出来る消耗品なのだ。但し、「帰還」の巻物は有用である一方で、現在の錬金術では製造は出来ないのだ。
「何だよ!?何の儲けにもならねぇじゃねぇかよ!!」
「簡易結界」内で叫ぶファルコン。レアアイテムの入手でも目論んでいたのであろうか?
「くそ~!!どういうこった?」
「高額取引されるアイテム狙うなら、「深淵」に行った方が早いぞ。」
呪詛の雄叫びを放つファルコンに対して、軽く返答するグレイ。
「あそこなら、伝説級のアイテムが手に入るかもしれんぞ。」
「バカ言え!? 確かに「深淵」ならお宝手に入るけど、俺はまだ死にたくねぇんだよ!!」
「深淵」…シュベーレン王国南西部にある地下迷宮である。「深淵」の名前通り、深い闇の世界とも言われる。出現する魔物は、ゴブリンやオークが可愛く思える程強力な存在が現れると言う。「巨人」、「魔獣」、「不死系」等…。稀にこの「アスクレディア」の住人ではない異世界の住人…「天使」や「悪魔」も出現すると言う。かなりの手練れでなければ生き残れない過酷な環境である。だが、その代わり…という訳ではないのだろうが、魔法強化+1・+2クラスの武具だけでなく、更に強力な+3クラスの武具や入手困難と言われる伝説級のアイテムが入手出来るとも言われる。実際、この「深淵」に魅入られた冒険者も多いと聞く。
「ともかく、完全にアテが外れた~!!」
「あ、あの~…」
「エマ、いいからほっとけ。」
何とかフォローを入れようとしたエマに、「絡むな」と言わんばかりのグレイ。
「大体、今回の依頼報酬の一人5,000ゴールドプラス入手した宝箱のアイテムの何処が不満なんだ?」
「まあまあ、貴方もあまり追い打ちかけなくても…。」
更に突っ込むグレイ。諫めるフレア。
「…。」
「ん、どうしたマリィ?」
考え事をしていたマリィに気づくヤマト。
「二点あるんだけどね。まずは一点、まだ未鑑定のアイテムがあるでしょ?フレアさん。」
「ああ、そうでしたわ。ごめんなさい。」
マリィに言われて、まだ未鑑定のアイテムの「鑑定」を行うフレア。
「後一点。ファルコン、アンタさっき訳分からない本とかがたくさんあったって言ってたよね?」
「ああ、言ったよ。それが?」
マリィの質問に、不貞腐れたように返すファルコン。
「ここの本当の「お宝」は…、その書籍類じゃないかな?」
「え?」
「どういう事だ、マリィ?」
マリィの推論に驚くファルコンとヤマト。続けて答えるマリィ。
「古代魔法王国期のまだ発見されていない遺跡の中に、呪文書や魔術に関する研究施設があるって話を聞いたことがあるの。ひょっとしたら、ここがその施設の一つかもしれない。」
「だとしたら…」
「大発見だよ!!まだ解読されていない「喪失呪文」があるかもしれないし!!」
「もしそうだったら、確かに凄いな。」
「凄~い!!」
「凄いだワン!!」
マリィの更なる推論に、少し驚きを隠せないヤマトと、純粋に単純に大喜びするラピスとココア。
「あの、盛り上がっている所恐縮ですが。」
断りを入れるフレア。
「あ、フレアさんごめんなさい。」
「いえ、最後のアイテムの鑑定が終わりましたので…。」
「で、何?何だったの?」
「それが…、「守りの腕輪」二点です。」
「ホントか~!!」
フレアとマリィのやり取りの間に割って入るファルコン。
「「守りの腕輪」なら、かなり高く売れるぜ~!!」
勝手に売却をしようと考えるファルコンだが…
「アンタにそれを決める権限はないよ、ファルコン!!」
にべもなく答えるマリィ。
「何でだよ!!」
「アンタ、もう忘れたの?」
「あ…、」
「で、何だっけ?」
「ナンデモアリマセン。」
先刻のやり取りを思い出して、マリィの言葉に黙るファルコン。
「さて、改めて確認するぞ。」
一団全員にヤマトが一言発する。
「とりあえず今入手したアイテム類の処遇は、町に戻ってから決めよう。」
「だな。」
ヤマトの決定にグレイが一言同意する。
「で、まだ未調査の区域があるから、そちらの調査に行こう。ファルコンの話とマリィの推論だと、古代魔法王国期の書籍類が収められた場所かもしれない。」
「ファルコン、エマ。案内宜しくね。」
「あいよ。」
「分かりました。」
更に半刻後…。一際大きな扉の前にやって来た一団。既に周辺の罠は解除しているため、大きな危険はないようだ。
「…、特に気配はないな。」
ヤマトは「練気」を使って、周囲の気配を探る。自分達一団以外の気配はない。
「って事は、さっき行動停止させたストーンゴーレムがここの番人って事か?」
ファルコンが軽く問いただす。
「そう見て間違いないかもね。」
マリィが答えつつ
「ファルコン、この扉の罠は?」
「扉には、罠も何もなし。「魔錠」も掛かってなかった。普通に施錠はしてあったから、解除だけはしておいた。」
「ありがと。」
そう言うと、マリィは扉の中に入ろうとする。
「一応「魔力感知」を…」
「俺がやる。」
「ヤマト!?」
ヤマトがマリィの前に出る。
「…、この先も気配はないな。では、掛けるぞ。」
そう言って、ヤマトは「魔力感知」を行う。
「…、妙な魔力を感じるな?」
「妙な魔力?」
「ああ。何かに「魔加」したような感じなんだが…。」
「呪文を封印した「魔導書」なら、そのように感じる事はあるかも。場所は?」
「奥の本棚みたいだな。」
「了解。」
ヤマトとマリィのやり取りを聞いて、
「俺達は、周囲の警戒を監視する。調べてくれ。」
グレイが指示をする。
「分かった。」
ヤマトは一言答える。そしてマリィと二人で奥の本棚に移動する。
「ココアとラピスは、私と一緒に。」
そう言って、ココアを抱きかかえるエマ。ラピスもエマの所まで飛んで、彼女の左肩に座る。
「エマ、ここに座るね。」
「はい、いいですよ。」
一団に掛けられた「永照」の効果範囲は半径5m。
「流石に「永照」の範囲から離れると暗いな。もう少し皆をこちらに近づいてもらうか。」
そう言いながら、後方にいる一団メンバーに指示するヤマト。
「そうね…。あ、明かりが届いた。」
そう言いながら、本棚を見渡すマリィ。
「魔力はこの辺り?」
「ああ。」
ヤマトが指した場所の本棚を食い入るように見るマリィ。
「…、どれも見た事ない本ばかり…。師匠が見たら喜びそう…。」
独り言言いながら、どの本から魔力を発しているか確認するマリィ。
「おーい、そっちはどうなってんだ?」
二人に声を掛けるファルコン。
「今、ちゃんと調べてるから!!」
返すマリィ。
「…凄い蔵書量だな。もしかして、これら全て古代魔法王国期のものなのか?」
素直な感想を述べるヤマト。
「そうね…。見る限りだと、間違いなく古代魔法王国期のもの。ただ…その古代魔法王国期のどの時期かは調べないと…。」
そう言いながら更に目的の書物を探すマリィ。確認のため、マリィも「魔力感知」を使う。
「この辺りのはず何だけど…。…ッ!!」
何かを発見したマリィ。
「見つけた!!これだ!!」
「よっしゃ!!」
発見の声を上げたマリィに反応するファルコン。
「よし、俺達も行くぞ。」
グレイが他のメンバーに声を掛けて奥の書棚に向かう…。
「ふぁ~、凄いです!!」
「本当に凄い蔵書量です…。」
眼を輝かせながら感動するエマ。同意するフレア。
「何これ~?あたし分かんないよ~。」
「ラピスにはちょっと難しいかもしれないワン。」
「ココアもそう思う?」
「確か、妖精族には「文字」を使う習慣がなかったから、仕方ないワン。」
元々妖精族は「文字」で何かを「記録」する習慣がない。「口伝」による継承が殆どだからだ。ココアは「主」のマリィと知識も共有しているので、言葉を選んでラピスに解説する。
「…俺には、用のない場所だな。」
「そうかな?今回の発見で、ひょっとしたら報酬が割増しになるかもしれんぞ。」
「本当か?」
「あくまで「可能性」の話だぞ。」
「期待させるなよ…。」
「盗賊」である所以か、如何しても即物的で損得勘定になってしまうファルコン。報酬の割増しの「可能性」がある事を告げるグレイ。
「皆、ちょっと集まってくれる~?」
一団に声を掛けるマリィ。
「ちょうどいいところにテーブルがあるから、使わせてもらおうかな。」
前置きを言ったマリィ。
「今回の一番の「お宝」はこの「魔導書」よ!!」
そう言って、一冊の本を一団全員に見せる。
「「魔導書」?何だそれ?」
質問するファルコン。
「解読しないと分からないけど、この「魔導書」は…恐らく「喪失呪文」を収めた「魔導書」だと思う。」
「喪失呪文」…、それは「古代語呪文」「神聖呪文」「精霊呪文」「召喚呪文」の四種類の呪文の中でも、古代魔法王国期に魔導書の中に封印した呪文である。その理由は…行使するにはあまりにも危険すぎる呪文だからである。中には、稀に単純に「失伝」してしまったものもあるのだが。
「これが「喪失呪文」の「魔導書」なら、本当に大発見だよ!!しかも、王都グレンツェントに近い場所の遺跡にあるなんて!!」
「魔導書」の発見ですごく興奮しているマリィ。
「言いたい事は分かったから、少し落ち着け。」
釘を指すヤマト。
「あ、ごめん…。」
「いや、気持ちは分かる。しかし、ここはまだ遺跡の中。僅かでも敵が出て来る可能性はあるからな。」
「そうだった…、ごめん。」
「気をつけてくれればいい。」
冷静を保つヤマト。ヤマトの一言で興奮から少し冷めてきたマリィ。
「で、「喪失呪文」の「魔導書」なら何だって?」
ファルコンが投げやりな感じでマリィに質問する。
「内容の分からない「魔導書」が、何でお宝なんだよ?」
「「喪失呪文」…、つまり今は失われた呪文がどんなものであるのか?「学院」はこの「魔導書」の解読をしなくてはならない!!お金には代えられない貴重なものなの!!」
「いや、呪文使えない俺には関係ないし。」
「アンタ、さっきグレイと報酬がどうこう言ってたよね。本当に報酬の割増しはあり得るかもよ。」
「本当か!?」
報酬の割増しの話を持ち出すと、途端に目を輝かすファルコン。
「…少し浅ましいんだワン。」
「浅ましい浅ましい~。」
冷静に突っ込むココアと無邪気にはしゃぐラピス。
「うるせぇ!!」
二人に反論するファルコン。
「ともかく!!」
割って話を戻そうとするヤマト。
「この遺跡での探索はこれで終わりだ。一度シュテイレ村に戻り、村に待機している「学院」のスタッフに報告だ。エマ、作成した地図のコピーを一枚用意してくれ。」
「分かりました!!」
「「魔導書」は如何するの?」
「マリィ、お前が持っていてくれ。「学院」のスタッフに報告する際に引き渡す。」
「分かったわ。」
「フレア、入手した戦利品はそのまま預かってくれ。どうするかは、グレンツェントに帰還してから決めよう。」
「分かりました。」
「地上にはどうやって帰還する?」
「「帰還」で戻るか。グレイ、呪文頼めるか?」
「OK」
「「帰還」の巻物使わないのか?」
「換金、したくないのか?」
「あ…、そうだった。」
「では、地上に戻るぞ。」
「帰還」の呪文は、「神聖呪文」である「全快」の呪文と同呪文レベルである。その事もあってか、一団によっては「帰還」の使用をしない事もある。「古代語呪文」の「転移」は洞窟や地下迷宮といった屋内だと移動制限があるが屋外であれば距離の制限はない。但し、「転移」を使用する場合、転移先は最低限でも「訪れた事のある場所」でなくてはならない上に、転移失敗で空中に投げ出されたり何らかの物質内に「実体化」してしまうリスクがある。その一方で、「神聖呪文」である「帰還」は屋内から出口まで転移を安全に行う事が出来る。但し、あくまで「脱出用」として移動制限されているのだ。
グレイが使用した「帰還」で、地下遺跡から地上に帰還したヤマト達一団。洞窟入口から程近い山村…シュテイレ村に徒歩で戻った。村に待機していた「学院」の調査団に合流した一団は、これまでの経緯と「魔導書」の事を事細かに報告した。
「え?「魔導書」ですか!?」
「そんな貴重なものが発見されたんですか!?」
「学院」の調査団の二人が驚いて声をあげる。
「「魔導書」の話は聞いていなかったよな?」
「ああ、あくまで遺跡の事しか聞いていないしな…。」
ヤマト達そっちのけでひそひそと話をする「学院」の調査団二人。
「あの~、今回の調査団の責任者は何方ですか?」
「え?」
マリィが調査団二人に割って質問する。
「私も「グレンツェント学院」の一員です。」
そう言って、マリィは「個人票」を出して見せる。「個人票」は「冒険者」の「身分証明書」であり、同時に「職業」・「所属組織」・「能力値」・「力量」も記載される。更に、「力量」や「転職」・「昇格」すると、自動的に上書きされるのだ。
「あ、本当だ。「グレンツェント学院」の魔術師だったのですね。失礼しました。」
調査団が一礼する。
「実は…、今回の調査団の責任者はオルター・ジール学院長です。」
「え!?」
「ただ…、実際の調査はここにいる調査団に一任されている状態でして…、」
「私達に依頼書を出したのは誰?」
「依頼書は学院長が出したと思われます。」
「依頼を受けた冒険者が私達って知ってるの?」
「いや、多分そこまでは知らないかと…、」
「おい、マリィ。何聞いてんだ?話が全っっっく分からん。」
「私も少しびっくりしてるのよ…。」
「…そうか、学院長が依頼主か。でも、多分名義は「グレンツェント学院」なんだろうな。」
「かもね…。」
「ヤマトまで…?話が見えねぇぞ。」
調査団・マリィ・ヤマトと入り混じっての話に、混乱しそうなファルコン。
「確かに俺達にも話が分からんぞ。説明してくれ。」
グレイがファルコンを擁護するように話す。
「ああ、分かった…。」
今回の遺跡探索の依頼主は「グレンツェント学院」の責任者であるオルター・ジール学院長。但し、依頼書の名義はあくまで「グレンツェント学院」。そして、オルター・ジール学院長は…実はマリィの師匠でもあったのだ。
「多忙を極める師匠の事だから、遺跡調査そのものはここにいる「学院」のスタッフに丸投げかなって。」
マリィが話す。
「はい、その通りです…。」
調査団の一人がぼやく。
「一応指示書があって、どんな調査をするのかは全員周知していますが…。」
もう一人の調査団員が話す。
「今回の遺跡についても、学院長が他の魔導師達と協力して探し当てたのです。それは間違いありません。」
「手法はともかく、我々は皆学院長の指示を周知してここにいるのです。」
調査団の二人が学院長を庇うような発言をする。
「まぁ…師匠の事だからね、分かるよ。」
マリィも呆れながらも理解しているようだ。と突然、
「…、そうだ!!妙案が浮かんだ!!申し訳ないんだけど、貴方達にお願いがあるの。いいかな?」
パッと何か考えが思い浮かんだようで、突然マリィは調査団にある依頼をする。
「師匠宛に報告書を一枚書いてほしいの。後は私が直接師匠に報告するから!!」
「おい!?何言ってんだ?」
マリィの急な「お願い」に、ファルコンが声を上げる。
「何勝手な事やってんだよ!?しかも依頼主が師匠!?何を…」
「いや、その方がいいかもな。」
ファルコンを遮るヤマト。
「こちらは「喪失呪文」の「魔導書」を預かっている。だが調査団は遺跡調査が任務だから、発見された「喪失呪文」の解読は出来ない。俺達の報告を元に遺跡の調査をしなければならない。一方で、俺達は遺跡捜索の任務は終わった。なら俺達が依頼の延長で「魔導書」を学院まで輸送する方がいいだろうな。調査団の方は、どちらにしても誰かに「魔導書」を輸送してもらわなければならない。それなら、手の空いた俺達が引き続き「魔導書」を輸送した方が安全だろうし、調査団の手間も省ける。何よりも発見者が弟子のマリィだから、学院長も話を聞かない訳にはいかないだろうな。それに、上手くいけば…」
ヤマトが状況確認しつつ、今後の行動を示す。
「上手くいけば?」
「ファルコン、お前のお望みの報酬の増額交渉が出来るかもしれない。」
「そうか!!成程ね。てかヤマト、お前その学院長とやら知ってんの?」
「ああ、前に何度か会った事がある。マリィと同席だったがな。」
「僕もだワン!!」
「あたしも~!!」
ファルコンの質問に返すヤマト。便乗で答えるココアとラピス。
「ココアさんもラピスさんも、学院長様とお知り合いなんですか。羨ましいですね。」
ココアとラピスの答えに優しく反応するエマ。
「見知った顔なら、話は早いな。」
「そうですわね。」
ヤマトの意見に同調するグレイとフレア。
「また、俺だけ除け者かよ!?」
愚痴るファルコン。
「で、どうするんだ?ファルコン。」
「はいはい、皆さんの言う通りに致しますよ。」
グレイの催促に、不貞腐れながら同意するファルコン。
シュベーレン王国。西部諸国の一角を担う大国である。その「王都」グレンツェント。西部諸国でも有数の規模を誇る巨大城塞都市である。人々の往来の担う各街道が交差する場所でもあるため、常に多くの人々が交差する大都市である。その王都グレンツェントの中心部に聳えるのが、「グレンツェント王城」。王城を中心に半径500mには深い城堀があり、住宅地区他と王城区域と区画分離されている。また、王城の周りには貴族達の屋敷等が建てられている。王城区域との行き来は、城堀の四ヶ所に設置された橋だけである。橋の袂だけでなく、城塞の東西南北四ヵ所にある大門には、門の番兵である兵士達が警護している。
「ん?」
南大門を警護している一人の番兵が気づく。何かが実体化しようとしている様子を。
「お、おい。何かが来るぞ!!」
もう一人の番兵が南大門の近くにある詰め所に向かって、大声で叫ぶ。その叫び声を聞いて、詰め所で待機していた他の番兵達がぞろぞろと出てくる。詰め所で待機していた番兵…王国軍の正規兵…は総勢で20名程。何かがあれば、彼等番兵がまず始めに対処しなくてはならないからだ。
ぼんやりしていた空間が少しずつ実体化していく。それは…「転移」の呪文で転移したヤマト達一団であった。シュテイレ村は王都グレンツェントから徒歩で三日は掛かる。ヤマト達はなるべく早い報告の方がいいだろうと判断をし、シュテイレ村から王都グレンツェントまで「転移」の呪文で転移をしたのだ。
「…ッ、ふうッ。無事に転移出来たぞ。」
「転移」の呪文はヤマトが使用したのだ。「転移」の呪文は転移先の「イメージ」を集中しないと、転移出来ないのだ。
「ヤマト、大丈夫?」
マリィがヤマトに声を掛ける。
「大丈夫だ。お前だってかなり魔力を消耗しているからな。」
答えるヤマト。
「あー、あんた達は!!」
一人の番兵が叫ぶ。どうやらヤマト達一団の事を知っている者のようだ。
「何で「転移」呪文使ってきたんだ!?」
「すまん、ちょっと事情があってな…。」
番兵達に事情を説明するグレイ。
「…てな訳で、如何しても急いでいたんだ。勘弁してくれよ。」
「まぁ、あんた達ならなぁ…。事情は分かったし、あんた達にはいつも世話になってるし…。隊長、如何しますか?」
「そうだな、こいつの言う通りあんた等にゃいつも世話になっているしな。不問にしておいておくわ。」
「すまん、感謝する。」
「今度、また酒を奢ってくれよな!!」
顔見知りの番兵の隊長が、上手く話をまとめてくれた。
「こっちは済んだぞ。大丈夫か、ヤマト?」
「俺は大丈夫だ。」
「「学院」まで走るか?」
「走るのは勘弁して~!!」
「…何か大変だな、あんた等も。」
「すまんな…。」
ゴタゴタしながら、南大門からグレンツェント学院に向かうヤマト達一団。その様子をみて「大変そうだな」と顔を見合わせる番兵達。そして…鎧を身に纏った若い男もその様子を見ていた。
「忙しい所すまんな。何かあったのか?」
若い男が兵隊長に話しかける。
「ん?ああ、ちょっとな。」
そう言って世間話をする。
「あいつ等も冒険者なのか?」
「そうだ。「湖畔の白鳥亭」を拠点にしている連中だ。一団構成員が「騎士」や「侍」で構成されている珍しい連中だ。加えて、若いのに実力もある。」
「へぇ~。」
若い男と番兵隊長の会話に二人の女性が割って入る。一人は女性ながらも背丈があり、鎧を纏っている。どうやら戦士系の職にあるようだ。もう一人は小柄な少女。
「若、何処に行ってしまうのですか!?あれほど単独行動しないように言っているのに…。」
大柄の女性が、若い男の事を「若」と呼んで注意をする。
「…。」
小柄な少女は、表情一つ変えない。
「街中で「若」はやめろって言っているだろうが!!面白いもの見たから、少し聞き込みしていたんだよ!!」
「面白いもの?」
「…何ですか、それは?」
「後で説明するわ。隊長さん、公務中悪かった。有難うな。」
「いいって事よ。「民とも語らえ」ってのがこの国の王様の言葉だからな。」
そう言って兵隊長は詰め所に戻る。若い男と二人の女性も踵を返し、歩みを進める…。
「「湖畔の白鳥亭」に屯っている冒険者…か、面白そうだな。」
若い男は独り言ちた。
「如何しましたか、若?」
「だから、街中で「若」はやめろって!!」
そう言うと、若い男は何やら考え事を始めた。程なく、三人は雑踏の中に消えていった…。
王都グレンツェントは、旧王都より遷都する際に、巨大な城塞を構えると同時に、都市の中央部に高く聳える「天守」を含めた王城区と、王城区を中心に東西南北に主要道路が走り、それぞれの大門に辿り着く。王都グレンツェント建築の際に、大寺院や学院と言った「主要施設」を各区画に配置するように設置をしたのだ。王都グレンツェントの北西区画には「冒険者ギルド」と「盗賊ギルド」が、北東区画には「グレンツェント大寺院」が存在する。そして南西区画に拠点を構えるのが「グレンツェント学院」だ。グレンツェント学院は、王城の「天守」やグレンツェント大寺院同様に高層の建物を構えている。館内には、多くの「魔導書」や魔術関連の書物等が収められている。そしてグレンツェント学院は、グレンツェント市内のみならずシュベーレン王国内の魔導師達を束ね、日々魔術・呪文の研究や若き魔術師の教育を担うのが大きな役目である。
「はぁはぁはぁ…、ちょっと待ってよ~!!」
マリィが悲鳴を上げる。
「ファルコンが足速いのは分かるけど、何で鎧を纏ったヤマトやグレイがそんなに速く走れるの?」
「まぁ、日頃の訓練だな。」
グレイが答え、
「この位は当然だが?」
ヤマトも答える。
鎧を身に纏う「戦士・騎士系」や「侍系」は、鎧を纏った状態である程度の速度を保ったまま走る事を初期訓練で強いられる。勿論それは「生き残る」ために必要であるからだ。ただ騎士や聖騎士は、「騎士道」と呼ばれる独自の教えでは「逃亡は万死に値する」と言う考えだったのだが、何時の頃からか不明ではあるが状況に応じては「戦術的撤退」も必要となったのだ。どうやら時代によって、考え方が変わってきているようだ。
元々足の速いファルコンは早々にグレンツェント学院の建物前に辿り着き、続いて比較的軽装・軽重量のエマとフレアが、少し離れて鎧装備のグレイとヤマトが到着した後にマリィが最後に到着した。ココアは本来もっと速く走れるのだが、「主」のマリィに合わせて走った。ラピスは…気楽にヤマトの速度に合わせて「飛んで」いたのだ。
「ぜぇぜぇぜぇ…、しんどい…。」
息も絶え絶えで追いついたマリィ。
「俺より軽装なのに、何でそんなに足遅いんだ?」
「う、うるさい!!私が運動苦手なの知っててそういう事言うつもり!?」
ファルコンの突っ込みに対して、変な返しをするマリィ。そう。マリィは運動が苦手なのだ。
「もう少し、運動した方が良くないか?」
グレイが提案するが…
「貴方。人には「向き不向き」がありますから、無理強いは良くありませんわ。」
夫のグレイを嗜めるフレア。旦那の扱い方も心得ているようだ。
「ここから先は、お前の独壇場だからな。」
そう言いながら、ヤマトが水袋を差しだす。
「あ、有難う…。」
マリィはヤマトから水袋を受け取ると、水を口に含めた…。