アスクレディアサーガ 第1章 第1話②
彼らは「冒険者」。依頼があれば「様々な仕事」をこなす者達。時には小さな山村を襲うゴブリン・オーク・コボルトと言った敵性「亜人種」の討伐、時には遺跡や地下迷宮の探索、時には街中での小間使い…。その「様々な仕事」の一つが、今回の「仕事」、「学院」が新たに発見した遺跡の探索調査の依頼である。
かの「冒険者」の一団は、聖水と魔法陣を組み合わせた「簡易結界」を展開。周囲には「永照」の呪文で明かりを照らしている。今は休憩がてら、打合せをしている。
「まさか、洞窟の奥に未発見の「古代魔法王国期」の遺跡があるとはなぁ…。」
ファルコンは軽口を叩く。
「確かに、「学院」ではこのシュテイレ村の近くに「古代魔法王国期」の建物が残されているって話はあったから。でも、まさか本当にシュテイレ村に近い洞窟の奥にあったなんて…ねぇ。」
マリィは「学院」出身の魔術師。この情報も「学院」で聞いていたようだ。
「だから「学院」から探索の依頼があったんでしょうね。それに、アンタの好きそうな罠とかお宝もあるみたいだし!!」
「確かに俺はお宝好きだけど、罠なんかにゃ興味ねぇわ!!そもそも罠は「仕事」だから扱っているだけだしな!!」
マリィとファルコンの口喧嘩が始まる。
「あ、あの…。」
オロオロするエマ。
「ご主人様、落ち着くんだワン。」
「あ、ゴメンねエマ。ココアもゴメンね。」
エマに軽く謝ったマリィ。すぐに小柄な犬…ココアを抱き上げて頬ずりする。
「ゴメンね~ココア。ファルコンったら、すぐにバカ犬みたいにギャンギャン吠えるから。」
「誰がバカ犬だ!!ふざけるな!!ってか、「使い魔」の犬をペットみたいにしてる魔術師の方がバカみたいなんだけどな!!」
「なんですって~!!」
マリィの「使い魔」の犬…ココアの事で再び口喧嘩が勃発。
「そろそろ本題に入っていいか、二人とも?」
流石に痺れを切らせたか、グレイが口を開く。
「ケンカする程仲がいいのですね、お二人とも。」
優しい口調で場を治めるフレア。
「わ、悪ィ…。」
「ごめんなさい…。」
素直に謝る二人。
「やっと静かになったね~、ヤマト。」
「…そうだな、ラピス。」
場が静かになって、ほっとして話をする小さな「モノ」…二対四枚の羽根を持つ妖精族のラピスと軽鎧の男…ヤマト。ラピスがひと舞してからヤマトの左肩に座ったところで、再びヤマトが口を開く。
「改めて状況を確認しよう。」
ヤマト達一団は、今回の探索地であるこの洞窟に入り、一本道となっている洞窟を真っ直ぐ進んでいたところ、広まった場所で先程のゴブリンの一団と接触したのだ。
「この構造、どう見る?ファルコン。」
「まだ奥に建造物があるんだろうな。てか、何でここにゴブリンがいるんだよ?」
「多分ここは山村に近いから、勝手に巣を作ったと思う。洞窟は奥にも続いてるみたいだから、同じ群れのゴブリンがいるかもしれないわ。」
ゴブリンの出現の疑問に対して、的確な推論を話すマリィ。
「って事は、目標の遺跡の入口はまだ先か…。」
「洞窟の構造も確認しないと、遺跡の入口も分からんしな。そもそもこの洞窟自体、一本道なのかどうかも分からんしな。で、どうするんだよヤマト?」
グレイの一言に、ファルコンが答えつつヤマトに話を振る。
「定石通り、丁寧に探索を進める。まずは洞窟を全て調べる。」
「賛成!!」
ヤマトの方針に、すぐさま答えるマリィ。
「他の皆は?」
マリィは他のメンバーに確認を取る。
「異論なし。」
「同じく。」
とグレイとフレア。
「そうしないと先に進めないなら、そうする方がいいですよね。私も賛成です。」
丁寧に答えるエマ。
「何だ、賛成多数で決定じゃねぇか。まぁ、それならそれでいいけどな。」
軽く流すファルコン。それに対して、
「「それなら」じゃないの!!今回の探索にはアンタの「盗賊としての力」が必要なんだからね。皆期待してるんだから!!」
ハッパを掛けるマリィ。それに対して
「へいへい。でもあんまり期待すんなよ。」
と適当な返答のファルコン。
「ファルコン。マリィの言う通り、今回の依頼の成否はお前の力に掛かっているからな。あまり適当な事するなよ。」
と、釘を指すグレイ。
「じゃあ、決定だ。そろそろ探索を再開しよう。行くぞ!!」
ヤマトが宣言すると、全員支度を始めた。
「用意が出来ましたら、「簡易結界」を解除します。」
エマが一団に促す。
一刻後、一団は慎重に洞窟内の探索を行った。その後は特に魔物らしきものの出現もなく、何本か現れた別ルートの探索も行った。これといった被害も収穫もないまま最奥部に差し掛かろうとしていた…。
「待て、魔物の気配がする!!」
ヤマトが発する。
「何かいるのか?」
先頭を行くファルコンがヤマトに問いかける。
「ああ。気配の感じからすると、ゴブリンの一団だ。先程とは違って数が多い。」
ヤマトは目を閉じて、集中して気配を探る。
「15、いや20はいるな。」
「相変わらず、お前の「練気」ってやつか?そこまで分かるのか。流石「侍大将」だな!!」
ファルコンが関心する。
「それが「侍大将」たる所以だからな。ヤマトを敵に回したくないのはお前だって分かるだろう?」
グレイがファルコンに答える。
「で、相手はどうなんだヤマト?」
グレイがヤマトに問う。
「まだこちらには気づいていない。潰すなら今の内だな。」
即答するヤマト。
「マジか!?相手は20体はいるってのに!?距離も結構あるぞ!!って言っても、お前ら二人なら倒すのは簡単だろ?」
少し驚くものの、冷静に返すファルコン。
「確かにな。それに俺達の「力量」なら大した敵ではない。ただの雑魚だしな。」
更に返答するグレイ。
「前衛の三人だけで話が進んでるんだけど…。」
ぼやくマリィ。
「ですが、ヤマトの判断は妥当ですわ。お任せしましょう。」
と返すフレア。
「そうしましょう…。でないと、不意打ちにはなりませんし。」
更に答えるエマ。
「あたし達はマリィのフードで静かにしてようね、ココア。」
「それがいいだワン」
と勝手に会話するラピスとココア。
「聞いていたな、俺とグレイで一気に押し切る。支援を頼む。」
後衛の三人に伝えるヤマト。
「了解!!」
即答するマリィ。
「グレイ、行くぞ。いいな?」
ヤマトがグレイに問いかける。
「OK!! カウントダウンするぞ…。」
即答のグレイ。
「3、2、1…、GO!!」
「応ッッッ!!!」
一気に駆け出すグレイとヤマト。
グレイは盾を身の前にかざしながら長剣を引き抜く!!
「うおぉぉぉぉッッッッ!!」
雄叫び上げながら長剣を横一線に振り抜く!!
ブオォーーーーン!!
剣先から発せられた衝撃波がゴブリン3体を吹き飛ばす!!衝撃波の直撃を受けたゴブリンは、その場で肉塊に変わってしまった!!
「…ッッッッ!!」
ヤマトは僅かな呼吸と共に懐の武器…「刀」…を鞘から一気に振り抜く!!その刹那、4体のゴブリンはいつの間にかに胴体を真っ二つに斬り裂かれる!!
ゴブリンの集団は不意打ちを食らい、ほんの僅かな間に7体の同胞が殺された。驚き戸惑う間に、突撃してきた二人に懐に潜り込まれてしまった!!
ゴブリンの集団の懐に潜り込んだヤマトとグレイは、更に攻撃を仕掛ける。
「…ッッッ!!」
ヤマトは再び僅かな呼吸と共に、手にした刀を横一線に振り抜き一瞬の内に3体を一刀両断にする!!
「おおぉぉぉッッッ!!」
グレイも雄叫びと共に長剣を振るう!!更に2体のゴブリンを吹き飛ばす!!吹き飛ばされたゴブリンは、そのダメージでそのまま絶命する!!
「残り何体だ?ヤマト?」
「後10体!!」
二人のやり取りの間にゴブリン達は逃げようとする。しかし、後ろには逃げ場がない。混乱に陥った間に…
「火球!!」
マリィが放った「火球」の呪文がゴブリンの集団の中心で爆発し、その炎で残ったゴブリンを焼き払う!!
僅かに生き残ったゴブリン2体。ヤマトとグレイはそれぞれ1体ずつ止めの一撃を放つ!!
「余計な事したかな?」
「いや、ナイスアシスト。助かったよ、マリィ。」
マリィの問いに、手にした刀を鞘に戻しながら感謝を述べるヤマト。
「ヤマトとグレイ、すご~~~い!!」
ラピスはマリィのフードから出てきて、ヤマトとグレイの周りを飛びながら、無邪気に喜ぶ。
「流石、ご主人様だワン!!」
「有難う~、ココア~!!」
フードの中から顔を出して喜ぶココアを、すぐに抱きかかえて頬ずりするマリィ。
「さてさて、戦闘の勝利を味わってる暇はねぇぞ。この辺りの調査をしないと。それに、この先に何かありそうだし。」
軽口叩きながら、周辺の調査を促すファルコン。
「そうですわね。この周辺はゴブリンの巣になっていたみたいですが、何かありそうですし。」
ファルコンの意見に同調するフレア。
「ヤマト様、グレイ様、お怪我はありますか?」
二人の様子を心配するエマ。
「怪我はないよ。問題ない。」
グレイが答える。実際、二人の手並みは凄まじく、ゴブリン程度の魔物では反撃をさせる猶予は与えていなかった。
「ファルコンの言う通り、周辺を調査しよう。」
ヤマトが指示する。
「見た感じ、この広場で行き止まりみたいなんだが?」
グレイが問いかける。
「それを調べるのが俺達の「仕事」だろ? 周辺の調査をしてから、怪しい場所をピンポイントで調べてみようぜ!!」
ファルコンが答える。
「分かった、そうしよう。俺とグレイが周囲の警戒をする。ファルコンとエマは周囲を調べながら「地図作成」してくれ。フレアは「魔力感知」を頼む。マリィは…少し休憩してくれ。連続で呪文使って疲れてるだろうし。」
ヤマトが一団全体に指示をする。
「了解。」
ファルコンの一言で、各自行動を開始した。
半刻後…、一団は集合し、
「どうだった?」
ヤマトが口火を切る。
「これを見て下さい。」
エマが作成した地図を見せる。
「今いるこの広場が行き止まりですが。」
「ちょうどこの真ん中の岩辺りに違和感を覚えて。」
エマとファルコンが続いて答える。
「私もお二人が違和感を覚えた箇所に「魔力感知」を使ってみました。この場所から魔力を感じます。」
フレアが答える。
「この岩辺りかぁ…。遺跡の入口は見当たらないけど?」
マリィが問いかける。
「それなんだけど、この岩場にある魔力を取り除けば何か出てくるかもしれないぜ!!」
ファルコンが答える。
「魔力だと?破れそうか、ファルコン?」
グレイがファルコンに問いかける。
「目星はついている。後は皆の協力が欲しいところだけどな。」
「協力?」
ファルコンの言葉にマリィが聞き返す。
「そう、協力。この魔力を破るためには、皆の力を借りないとならねぇ。」
「分かった。で、何をすればいい?」
ヤマトがファルコンに問いかける。
「OK、そうこなくちゃ。実はこの岩、魔力でカモフラージュされているみたいだ。このカモフラージュを破れば、本当の姿を見せるはず。」
ファルコンが答える。続いてフレアが提案する。
「そこで「魔力感知」を使用して確認したところ、「解除」でカモフラージュは解除出来そうですが、一人の魔力では「解除」出来そうにありませんが、複数人で「解除」を行なえば解除出来そうです。」
「複数人で「解除」?何人でやればいいの?」
マリィがフレアに問いかける。
「マリィ、貴方は何となく気づいていると思いますが…3人。」
フレアの答えに
「3人…なら、私とフレアとヤマトの3人ね。やりましょう!!」
マリィは即答する。
「つまり、「解除」が使えるものでないとならないのか…。」
グレイの一言に
「そうか…。「解除」が条件なら、なるしかないな。」
と渋るように答えるヤマト。ヤマトの職業は「侍大将」。エウロペ大陸の遥か東にある島国「トウホウ」で生まれた前衛職「侍系」…「侍」・「侍大将」・「侍総大将」…と呼ばれる職業の上位職である。「侍系」の者は、修行の過程で特殊な精神修養を行った事で、「古代語呪文」を使用出来るようになった「呪文の使用出来る」前衛職である。しかし、本来は「刀」と呼ばれる「侍系」にしか扱えない武器を用いて戦う剣士。「古代語呪文」の詠唱は出来ても、「呪文職」に及ばないのである。
「あたし達、完全に蚊帳の外みたいだよ~?」
「仕方ないだワン。ご主人様達にお任せするしかないんだワン。」
と呑気なラピスとココア。
「解除」。これは「古代語呪文」の一つで、掛けられている呪文効果を解除する呪文である。本来は「古代語呪文」の使用出来る「呪文使い(スペルユーザー)」が一人で使用するものであるが…、
「俺の推論が正しければ、複数人で「解除」を使用すれば、解除出来る確率が上がるはず。」
ファルコンが力説する。
「フレアも同じ考えなんだよね?」
「はい。ファルコンの仰る通りです。寺院で行う「蘇生呪文」の成功率の上昇と同じ理屈です。」
マリィの問いにフレアが答える。
大規模の城塞都市等には「アスクレディア教団」と呼ばれる宗教団体が管理する「寺院」がある。この「寺院」では、戦闘や事故での死者に対して「蘇生呪文」を使用する事がある。その場合、術者の能力・被術者の生来の生命力に加えて、寺院で「最も神聖な場所」…一般的には「祭壇」と呼ばれる場所…で蘇生させる事で成功率が決まる。その成功率を上げるためには、最も効果的なのが「蘇生呪文」の詠唱の際に、使用出来る聖職者が複数人いる事である。
ファルコンとフレアは、この「蘇生呪文」の成功率上昇の効果を、「解除」で適用させる事で、魔術的カモフラージュを解除しようというのだ。
「まぁ…二人がそう言うって事は、試してみる価値はあるよね。それに…上手くいけば、呪文運用に関するレポートでいい実証結果の報告が出来そうだし!!」
マリィは眼を輝かせながら力説した。どうやらやる気満々な様子。
「で、やるのか?」
「水を差すのは無粋。それに、俺達はその先に行かなければならないしな。」
グレイの問いかけに、ヤマトは答える。
「聖水による魔法陣の準備、整いました。」
聖水を撒き終えたエマ。
「俺も呪文詠唱すればいいのだな?俺は「侍大将」だから、呪文は使えるが専門ではないぞ?」
「うん、大丈夫。呪文詠唱の速度はヤマトに合わせるから。でも…フレアさん、私がメインの詠唱者でいいの? 「力量」は私よりフレアさんの方が上なのに?」
「「解除」は「古代語呪文」。「魔術師」であるマリィさんは「古代語呪文」のスペシャリストだから、聖職者である「司教」の私より貴方の方が成功率は高いはずですわ。」
マリィ・フレア・ヤマトの三人は、呪文詠唱のタイミングの打ち合わせを重ねる。
「さて…と、護衛は俺一人か。ん?ファルコン、何してるんだ?」
グレイがファルコンに声を掛ける。
「三人の「仕事」の後は、すぐに俺の出番になるからな。商売道具の確認してんだよ。」
そう言いながら、腰のポーチから様々な道具を取り出して確認をしている。
「ラピス、僕これからご主人様に魔力を送らなきゃならないから、少し動けなくなるワン。」
「大丈夫だよ。あたしが傍にいるから…。」
マリィの「使い魔」であるココアは、その生命力や魔力の一部は「主」であるマリィにリンクしている。負荷の大きい呪文行使となると、「使い魔」のココアは身動き出来なくなってしまう。それを分かっているラピスは、ココアのそばにそっと寄り添う。
「おっと、こっちも守らなきゃあな。」
「あ、有難うグレイ。」
「仲間を守るのも「聖騎士」の務めだ。気にするな。」
ココアとラピスのやり取りを見たグレイが、そっと彼らの傍に寄った。
「…準備はいい?」
「はい、いつでもどうぞ。」
「いいぞ、頼む!!」
準備を整えたマリィ・フレア・ヤマト。静かに三人同時に呪文詠唱を始める…。
「…。」
「…。」
「…。」
「三人共大丈夫か?」
「「古代語呪文」の分からないファルコンには無理もないでしょうが、今お三方は同時に「解除」を詠唱しております。」
不安を感じたファルコンに、エマが答える。
「…。」
「ココア、頑張って~!!」
三人の呪文詠唱と連動して、精神集中のため身動き出来ないココアを応援するラピス。
「…、信じているぞ!!」
呟くグレイ。
呪文詠唱中の三人。即席ながら聖水で作った魔法陣の力と、三人の魔力が集束していく。集束した魔力がマリィの体に少しずつ流れ集まっていく…。
(三人同時詠唱は初めてだけど凄い魔力…、何とか制御しないと!!)
集束した魔力に驚きながらも、集中するマリィ。
(これなら、上手くいきそうです…。)
魔力の奔流を感じながら、成功を祈るフレア。
(…。)
「無」の境地にいるヤマト。
全ての魔力を身に宿したマリィは、全力で最後の詠唱を行う!!
「…、「解除」!!」
発動と同時に周辺が光り輝く!!
「何だぁ!?」
「凄い…魔力!!」
「…!!」
叫ぶファルコン、魔力の奔流に驚くエマ、ただ見守るだけのグレイ。
発光はすぐに消えた。同時に、足元の即席魔法陣も消滅していた。
「ッッ!!どうなった?」
再び叫ぶファルコン。そこには…、
「やっ…た、成功…。」
一言言うと、魔力を消耗してその場にへたり込むマリィ。
「無事、成功しました…。でも、流石に一息入れたいです…。」
同じようにへたり込みフレア。
「…、ふぅ。」
一息入れたヤマトもその場にドサッと座り込む。
「…無事終わったワン。もう大丈夫だワン。」
「ココア~!!」
疲れて臥せっているココアに抱き着くラピス。
「グレイ、三人とも大丈夫なの~?」
「魔力を消耗しただけだ、ラピス。少し休めばすぐ元に戻る。」
ラピスの心配に対して、落ち着いて返すグレイ。
「無事に成功して良かったです…。」
ほっとするエマ。
「無事にカモフラージュは解除されたぜ。流石だな。さて、ここからは俺の「仕事」だからな!!」
1人呟きながら、カモフラージュが消えて現れた白亜色の大きな扉に向かい歩き出すファルコン…。
「んっ、んっ、んっ…く、プハーッ!!生き返ったぁ!!」
手持ちの水袋の水を飲んで、元気を取り戻したマリィ。
「ほら、ココアも飲んで。」
水袋の水をココアに飲ませるマリィ。
「ふうっ、やっと落ち着きましたわ。」
同じく水を飲んで落ち着いたフレア。
「無事に成功して良かった。お疲れ、フレア。」
フレアに労をねぎらうグレイ。
「ヤマト~、大丈夫?」
「ああ、もう落ち着いたよ。有難う、ラピス。」
ヤマトの周りを飛びながら気遣うラピスに、そっと答えるヤマト。
「あれ?そういえば…ファルコンがいないのですが?」
ファルコンがその場にいない事に気づいたエマ。
「ああ、アイツなら一仕事しに扉に向かって行ったぞ。」
エマに応えるグレイ。続けて、
「あいつの「仕事」の邪魔をするなよ。罠の誤作動に巻き込まれたら一大事だから。」
「盗賊」の「仕事」…、扉や宝箱の罠を調べて解除する。本来なら官憲ものの事案であるが、「盗賊」達はこの「技術」に優れるが故に「冒険者」としてその「力」を使用するのである。但し、罠解除に失敗して罠を作動させてしまった上での「一団全滅」のリスクを回避するため、「盗賊」は「仕事」をする際は一人で行動を取る事は「不文律」となっているのだ。
「案外楽勝だったな、この扉。てか、扉の先にいるのが厄介なんだけどな~。」
独り言を言いながら一団に合流する。
「どうした、ファルコン?」
水を飲みながらファルコンに問いただすヤマト。
「ああ、「一仕事」してきたんだけど…、」
「だけど?」
「厄介な罠とかはなかったんだがな、もっと厄介な奴が居座っててな。」
「厄介な奴?」
「ああ、ストーンゴーレムだ。」
「マジ!?」
ファルコンとヤマトのやり取りを聞いて、大声出して驚くマリィ。
「でけぇ声出すな!!うるせぇ!!」
「ゴメン…。でも、ストーンゴーレムって!!本当なの!?」
「マジで本物のストーンゴーレム。俺初めて見たんだけど、アレ結構デカいんだな~。」
「魔法生命体」として知られるゴーレム。ゴーレムは「古代魔法王国」の遺跡(当時の施設)の「番人」として存在していた事は、「冒険者」の間では共有知識として知られている。また種類も豊富である。大きさや能力は「素材」によって大きく変わる。ファルコンが見たというストーンゴーレムは、ゴーレムの中でもかなりの強敵である。全長5~6m、全身「石」で出来ているため、攻撃力・耐久力が高いのだ。
「む~、ストーンゴーレムかぁ…。」
妙に悩むマリィ。
「何でそんなに悩むの?マリィ?」
悩むマリィに質問するラピス。
「ん~、まぁ…色々あるからねぇ…。」
曖昧な答えをするマリィ。
「倒しちゃっていいなら問題ないんだけどなぁ…、今回はねぇ…。」
「別に倒しちまってもいいんじゃねぇか?命には代えられないぜ。」
「今回の「学院」からの依頼の条件の中には、過去の遺物はなるべく壊さないでほしいって事だったし…。」
「こればかりは問題ないっしょ?」
「問題大あり!!ストーンゴーレムの現存体は殆どないんだから!!可能なら、動態保存は無理でも、行動不能にするくらいなら…。」
「それこそ無茶な注文だろ!!仮にもどうやって行動不能にするんだよ!?」
マリィとファルコンの口論が続く。
「待て、二人共。」
割って入るヤマト。
「ファルコンの言い分も分かる。破壊した方が早いからな。でも、今回はマリィの言い分がもっともだ。「学院」からの依頼だからな。でも、マリィだって方法がない訳でもないから悩んでいるのではないのか?」
「そう。ゴーレムを止める方法があるんだけど…、難易度がかなり高いんだよね…。」
「とりあえず、方法を聞かせてくれ。」
ヤマトに促されたマリィは、ゴーレムの行動停止方法を話した…。
どの素材問わず、ゴーレムは起動の際には体の一部に古代魔法語で「真理」を意味する「emeth」が刻印される。起動停止するためには、「emeth」の頭文字の「e」を消して「死」を意味する「meth」にすればいいのだ。しかし、当然ながら「弱点」となりうるものを表示はしない。そのため、ゴーレムの製造者である古代魔法王国期の魔導師達は刻印を擬装しているのだ。
「…だから、擬装された刻印を探すのは非常に難しいの。」
「なるほどね。だから、他の冒険者はその刻印探すのが面倒だから破壊しちまったって事か。」
「そういう事。」
「なら、どうやって刻印を探すんだよ?面倒なら壊しちまえば…」
「だからダメだって言ってるんでしょうが!!」
再び始まるマリィとファルコンの口論。
「だから待てって!!」
再び制止するヤマト。
「要は、その刻印を探し当てて一文字消せばいいんだろう?」
「その通り。」
「でも、その刻印の在りかは分からない。」
「その通り。」
「探す方法は?」
「「魔力感知」。」
「「魔力感知」で?可能なのか?」
「師匠の受け売りだけど…、ゴーレムが起動する魔力は、全てその刻印に集中しているらしいの。だから「魔力感知」で場所を見つけ出せば…。」
マリィの方法を確認していたヤマト。
「待て待て待て。刻印は擬装してるんだろ? 「魔力感知」で分かるのか?」
ファルコンが割って入り、マリィに質問する。
「「魔力感知」ってそこまで便利なものなのか?」
「あくまで「魔力を感知」するための方法。ただ、感知出来れば擬装していても分かる。」
「分かるのか?何で?」
「さっき言ったでしょ、ゴーレムを起動する魔力は刻印だって。擬装の目的は刻印を隠す事。」
ファルコンがマリィに質問攻めしていた時にヤマトが閃く。
「見た目ではなく、魔力が僅かにあふれ出る箇所を探すのか?」
「そういう事!!」
マリィは断言した。それに対して…
「…出来るのか?そんな事?」
と悲観的にファルコン。なるべくリスク回避したいが故の一言だ。
「師匠は「極めて困難であるが可能」と言っていた。」
神妙な面持ちで言うマリィ。
「そこまで言うからには、何か策はあるんだろうな?」
ヤマトがマリィに問いかける。
「私は…試してみたい!!」
強い決心で話すマリィ。
「分かった。皆はどうだ?」
ヤマトは一団全員に意思を確認する。
「わ、私は…、マリィさんの意思を尊重します。」
まずエマが口火を切った。
「そう、だな。マリィのやる気を削ぐような無粋は良くないな。」
続くグレイ。
「私は、夫の意見と同じです。」
更に続くフレア。
「あたしもお手伝いする~!!」
明るく答えるラピス。
「皆、有難うだワン!!」
皆の答えに感謝するココア。「主」のマリィに代わって礼を述べる。
「…俺だけ反対したら、俺だけ悪者じゃねぇか。仕方ないな、やってやるよ。」
渋々答えるファルコン。
「ファルコン…、有難う!!」
ファルコンに礼を言うマリィ。
「その代わり…、町に戻ってからメシ奢れよな!!」
「何でそうなるの!?」
一団が立てた作戦は次の通りだ。
ファルコンとグレイが前に出てストーンゴーレムの気を引く。同時にエマが「神聖呪文」に属する「防御」「回避」の呪文で一団全員の支援をする。マリィが「拘束」の呪文でストーンゴーレムの動きを止め、その間にフレアが「魔力感知」で刻印の位置を探す。刻印の場所が分かったら、ラピスが「精霊呪文」の「光の加護」をヤマトに掛ける。その後、ラピスが単独で「拘束」で行動出来ないストーンゴーレムの刻印の場所と文字を再確認し、最後はヤマトが「侍」系職業しか扱えない「剣技」…「居合」でストーンゴーレムの刻印を擬装ごと攻撃して刻印の一部…「emeth」の頭文字の「e」を削除する。
この方法は、ラピスの負担…「光の加護」は一日に一回しか使用出来ない上に、呪文を掛けられるヤマトへの肉体的負担も大きい。非常に強力過ぎる呪文なのだ。また、マリィもここまでの魔力消費の上に難易度と魔力消費の高い「拘束」の呪文。更に、ヤマトは刻印の一文字「だけ」を削るため、極めて高い精度で攻撃をしなくてはならない。チャンスは一度しかない。
「刻印の位置、本当に「魔力感知」で分かるのか?ゴーレム全体から「魔力」を発したりしてるんじゃないのか?」
「それは大丈夫。確かにゴーレム全体から「魔力」を感じるけど、今回求めてるのは、「魔力の中心」だから。」
「それに、擬装していても刻印を隠している外装の隙間から、ゴーレムを動かしている「魔力」は中々隠せませんから。」
ファルコンの質問に、マリィとフレアが答える。
「前衛の俺達は、あくまで防御専念でいいんだな?」
「申し訳ないけど、そうして。それを補完するための「防御」「回避」の呪文だから。エマ、宜しくね。」
「分かりました!!」
グレイの質問に、マリィが返答すると共に、エマに指示をする。それを了解するエマ。
「本当にいいのか、ラピス?かなり負担の掛かる呪文じゃないのか?」
「あたしだって、協力したいの~!!」
ヤマトの心配を余所に、ラピスがどうしても手伝うと言ってきかない。
「今回の止めは命中精度が求められるから、力を借りたらどうだ?」
グレイがラピスの助け舟を出す。ヤマトは…
(本来の「力」を使えば大した事はないが、あまり他人には見せたくないしな…。やむを得んか…。)
「分かった。ラピス、力を貸してくれ。」
「有難う~!!あたし頑張る~!!」
「仕方ないか」というような表情をしながら、答えたヤマト。純粋に喜ぶラピス。
「ラピスの呪文も一回しか使用出来ない。マリィの魔力負担も大きい。一発勝負で決める。いいな?」
全体の意思を確認するヤマト。全員無言で首を縦に振る。
「じゃあ、行くぜ!!」
と言いながら遺跡の扉を開くファルコン。
前衛の中心にヤマト、左にグレイ、右にファルコンが展開する。後衛はヤマトの真後ろにラピスが付き、その後ろにマリィが配置。左にフレア、右にエマに配置する。
まず動いたのはファルコンとグレイ。
「オラオラオラッ!!デカブツ、こっちだぜ!!」
大声を上げながら愛用の短剣を引き抜き、ストーンゴーレムの左側に回るファルコン。
「…ッ!!」
グレイは盾を構えて長剣を抜き、ストーンゴーレムの右側に回り込む。
「相手の気を引くのは構わないが、攻撃を仕掛けられないのは中々…難しいな。」
慣れない「囮」にぼやきながら動くグレイ。一方で…
「…ッ、「防御」!!」
エマが即座に「防御」の呪文を唱えて効果を発動させる!!呪文の成功と共に、一団全員に柔らかい白色の光を帯びる。一団全員の防御力が強化された。続けて呪文の詠唱を始めるエマ。一方、フレアは一息入れて集中をする。
「必ず、刻印の場所を見つけ出します…!!」
呪文詠唱を終えたエマ。更に別の呪文を展開する。
「…ッ、「回避」!!」
再び一団全員に柔らかい白色の光を帯びる。今度は一団全員の回避力が強化された。
「ココア、少し我慢してね。」
「分かったワン!!」
マリィは呪文詠唱を始める。高位呪文であるせいか、ココアも身を伏せて集中する。
(ストーンゴーレム、何としても拘束に成功させる!!)
ストーンゴーレムは「魔法生命体」。刻まれた刻印から発する魔力は、ストーンゴーレムを起動させるだけでなく、攻撃された際に作用する呪文…攻撃呪文や攻撃補助呪文…を無効化する事が出来る。但し呪文無効化そのものは完全ではない。とはいえ、確実性に欠けるのも事実である。マリィは呪文の「スペシャリスト」である「魔術師」。「拘束」の呪文でストーンゴーレムを「確実」に拘束出来ない事を承知で「拘束」の呪文を成功させようとしているのだ!!
「ラピス、精霊の力は大丈夫か?」
「うん、エマが掛けてくれた「永照」のおかげで、光の精霊の力は大丈夫だよ!!」
ヤマトはラピスを気遣い、それに応えるラピス。
「あの…今更だけど、ヤマトの方こそ大丈夫~?あの「力」使わなくてよかったの?」
「ん?ああ、とりあえず今回はな。代わりにラピスの力を借りるよ。」
「うん!!」
「チャンスは一回、それまでの間「気を練る」。」
そう言うと、ヤマトは呼吸を整えて目を閉じて「練気」のために集中する。
「おっと!?」
短剣を手にしたファルコンは、ストーンゴーレムの攻撃をひらりと躱す。それを見てエマは
「呪文を重ね掛けします!!」
一言言って再度呪文詠唱に入るエマ。
「俺も呪文を…!!」
長剣を鞘に納め、動きを止めて呪文詠唱するグレイ。「聖騎士」であるグレイは、「僧侶」であるエマが使用する「神聖呪文」を使用する事が出来る。但し、呪文詠唱速度は専門の「呪文使い(スペルユーザー)」に劣る。それでも、必要を感じたグレイは敢えて呪文詠唱を行う。
「…ッ、「回避」!!」
「…ッ、「防御」!!」
エマが「回避」を発動させる。遅れてグレイが 「防御」を発動させた。三度一団全員に柔らかい白色の光を帯びる。更に防御力と回避力が強化された。が、ストーンゴーレムの右腕がグレイを襲う!!
「うぐっッッ!!」
ストーンゴーレムの拳がもろにグレイに入り、吹っ飛ばされる!!が、
「そう簡単に倒れるかッッッ!!」
グレイは倒れずに踏み止まる。
ストーンゴーレムがグレイに攻撃したのを見て、
(タイミングは今!!)
マリィは呪文詠唱を完成させる!!
「…!! 「拘束」!!」
魔力の軛がストーンゴーレムを捉える!!一瞬ストーンゴーレムは抵抗するが、マリィの「拘束」が成功したため、即座に身動きが出来なくなった!!同時にフレアが行動を起こす!!
「…ッ!! 「魔力感知」!!」
フレアは「魔力感知」で魔力の源を探る!!頭部…、胸部…、肩部…、腕部…、腰部…、脚部…、背部…、只管探る…。
(…何処?何処にあるの?)
「魔力感知」で判明しない魔力はない…。しかし、未だに刻印の場所が判明しない。焦るフレア、だが!!
(見つけた!!)
「左肩の後部にあります!!」
咄嗟に刻印の在りかを叫ぶフレア。
「行くよ、ヤマト!!「光の加護」!!」
ラピスが呪文詠唱を終えると、ヤマトの体全体が光に覆われる!!ラピスの唱えた「光の加護」は、被術者の身体能力を一時的ではあるが大幅に強化する。但し、被術者の肉体は限界を超えて強化するため、被術者の肉体的負担もかなり大きい。同時に術者も魔力の負担が大きい。そのため、一日に一度しか使用する事が出来ないのだ。
(久しぶりに来たな…、少しきついが…やるしかないッ!!)
ヤマトはラピスの魔力を受けた瞬間、ストーンゴーレムに向かって一気に駆け出す!!ラピスも同時に前に飛び出す。
ラピスは全力で飛び、「拘束」で行動不能になったストーンゴーレムの左肩後部に張り付く。「魔力感知」が示した左肩後部にあるはずの刻印の場所を確認するためだ。
「ここね、凄い魔力を感じる。これ、外れるの~?」
ラピスはストーンゴーレムの左肩後部の1ブロックが外れそうなのを見つけ、外しに掛かる。普通の人間なら動かせるが、身長30cm程度と体が極めて小さい妖精族のラピスにはかなりの重労働だ。
「ん~~~っ!!重~~~い!!」
二対四枚の羽根を強く羽ばたかせながら、ブロックを外していく。
「ん~~~っ!!もうちょっと~~~!!」
羽根を更に強く羽ばたかせて、力を入れる!!
「ん~~~っ!!」
更に力を入れたラピス。
「っっっ!!」
ラピスはストーンゴーレムの刻印を隠したブロックを外した!!
「刻印の文字の向きを確認しろッッッ!!」
ラピスに指示するファルコン。
「文字は左側からだよっ!!」
叫ぶラピス。
ヤマトは「練気」を続けながらフレアが指示してラピスが目視で確認したストーンゴーレムの左肩後部に向けて「魔力感知」で再確認を行う。確かに魔力の奔流が感じられた。
(あそこ、だな!!)
刻印の場所を確認したヤマトは、左腰にある武器…「刀」に手を掛けて…
「…ッッッ!!」
僅かに発した気合と共に刀を一気に引き抜く!!放たれたのは…!?
パキーンッッッ…!!
軽く何かが弾き壊れた音がした…!!その瞬間…、
ゴゴゴゴゴゴゴ…ッ…。
ストーンゴーレムは静かに動きを止めた。
ヤマトが放った「居合」による不可視の刃が、ストーンゴーレムの左肩の刻印の一文字「e」を見事に削り取ったのだ!!
「う、動きが止まった…?」
まずファルコンが口にした。
「ほ、本当に動きが止まった…。」
目の前の出来事に唖然としているエマ。
「…本当に、やりやがった…。」
ストーンゴーレムの攻撃ダメージもそのままに、茫然としてしまったグレイ。
「…やりましたよ、マリィさん!!」
マリィに呼び掛けるフレア。
「…やった。本当にやったんだ。」
自分が言った事とはいえ、本当にやり遂げた事にびっくりしているマリィ。
「…ふぅ、何とか「力」なしで出来たか…。」
独りごちるヤマト。
「ヤマト、凄~い!!やっぱりヤマト凄いよ!!」
ヤマトの傍に近寄るラピス。
「それよりヤマト、体は大丈夫?」
「今は何とか…ね。あの呪文、後から結構響くからな。それより、ラピスはどうなんだ?擬装していたブロック、重かったんだろ?」
「うん、凄く重かったよ~…。」
ストーンゴーレムの起動停止を確認した一団は、「簡易結界」を展開して休憩をしていた。それだけ一団は疲弊していたのだ。
「ヤマト、具合はどうだ?」
「今はまだいいけど、多分明日か明後日位に揺り戻しが来るだろうな。」
「そうなのか?」
「ああ。」
グレイの問いかけにヤマトが答える。
「マリィさん、大丈夫ですか?」
「私は大丈夫。それより、ラピスの方が…。」
「あたしは大丈夫だよ~。」
「そんな事言って、前はそれで飛べなくなってヤマトに抱えられたんでしょ?」
「僕も少し疲れたワン。」
「まぁまぁ。まずは少し休んで下さい。ここでは魔力の回復は無理ですが。」
エマがマリィとラピスとココアに休憩を促す。
「あれ?そういえばファルコンがいませんね?」
「ええ、今の内にって「お仕事」しているわ。」
ファルコンが「簡易結界」内にいない事に気づいたエマの問いにフレアが答える。
「ああ、そうでした。お一人の方がいいのでしたね。」