アスクレディアサーガ 第1章 第1話①
「ギャー!!」
暗闇からどっと押し寄せる魔物達。見たところ、「人間」ではない。「人間」よりやや小柄ながらも、醜悪な姿と血走った目をした「亜人種」である。
「出やがった!!」革鎧の軽装の男が叫ぶ。
「ただのゴブリンの一団よ!!落ち着いて!!」フードを被った女性が軽装の男に叫ぶ。
「結構、数がいるな。」重厚な鎧に身を纏った男が、冷静に話す。
「奴らの中に大物が潜んでいる。恐らくロード種だろう。」先程の男とは違い、軽装な鎧を纏った男が冷静に答える。
「如何なさいますか?」この地下遺跡にはとても似合わない女神官が、二人に問いかける。
「いつも通りの手筈で行く。エマ、フレア、マリィ。後ろに下がれ。ファルコン、お前は…分かるな。グレイ、行くぞ!!」軽鎧の男が、冷静に指示を下す。
「了解!!」重鎧の男が短く答える。
「分かりました!!」やや幼い顔つきの女僧侶が盾を構えて答える。
「ココア、ラピス、私の後ろに下がって!!」フードの女が指示をする。
「ワン!!」小柄な犬が一吠えする。
「うん!!」身長30cm程の小さな「モノ」も答える。そして、小さな「モノ」は小柄な犬の背中にしがみついて、フードの女の後ろに下がる。
「『塵化』で片付けようか?」続けざまに、フードの女が軽鎧の男に問いかける。
「いや、その呪文は温存してくれ。使うなら…」
「分かった!!」
軽鎧の男の答えはすぐにフードの女の一言で終わった。
「見た限り、呪文使いはいなさそうだな。エマ、フレア、回復呪文頼むぞ。」重鎧の男が女僧侶と女神官に指示をする。二人は無言で頷く。
「行くぞ!!」軽鎧の男の一言で、鎧の男二人はゴブリンの一団の中に突撃をする!!
一気に間合いを詰めた重鎧の男は、盾を構えながら長剣を引き抜き、
「フンッッッ!!」まず一匹のゴブリンを脳天から一気に叩き切った!!
ゴシャッッッ!!鈍い音と共に、ゴブリンは悲鳴を上げる間もなく絶命する。
軽鎧の男は、ゴブリンとの間合いがかなり空いているにもかかわらず、自らの懐にある湾曲した武器を一気に鞘から引き抜く!!
「…ッッッ!!」
一閃と共に、ゴブリンは首を刎ねられ絶命した!!
ほんの僅かな時間で、ゴブリン達は恐怖した。先手を打って目の前にいる「人間」達に攻撃を仕掛けた筈が、逆にほんの僅かな時間で戦闘の主導権を奪われてしまい、挙句「強すぎる存在」であると「本能」で察知した。いや、させられたのだ。しかし…既に遅い。
スキを見せた刹那、フードの女は素早く呪文詠唱を終わらせた。
「火球!!」
フゴォーーーン!!
放たれた火球はゴブリンの一団の中心で爆発して、そのまま殆どのゴブリンを焼き払った。
残った「ゴブリンロード」と思わしきリーダー格と僅かなゴブリン達は逃走を図る…が、
「逃がさねぇよ!!」革鎧の男は暗闇に紛れて不意打ち攻撃を仕掛ける。
暗闇から複数の矢が放たれ、何発かが生き残ったゴブリンに命中し絶命した。
「まだ生きてやがる!!」
「ゴブリンロード」と思わしきリーダー格は、革鎧の男の放った矢を受けたにもかかわらずその攻撃に耐えた。
「フゴゴッ…ッ!!」逃げ道も失った「ゴブリンロード」と思わしきリーダー格は逃げ場がないと知るや、やけを起こし粗末な短剣を振りかざして軽鎧の男に突撃を仕掛けた!!が、
「…ッッ!!」
軽鎧の男は、間合いがあるにも関わらず、再び手にした湾曲した武器を振るい「ゴブリンロード」と思わしきリーダー格に一撃を放ち、再び首を刎ねた!!
ゴブリンの一団との戦闘は左程時間もかからず終焉を迎え、周囲は再び静寂が戻る…。
「…、ふぅ。」軽鎧の男は一息つきながら、武器を鞘に収める。
「お疲れ、ヤマト。相変わらずお前の「剣技」は冴えてるな。」
「グレイ、お前の剣撃こそ相変わらずの膂力だな。」
軽鎧の男…ヤマトと重鎧の男…グレイは、他愛のない会話をする。
「お二人とも、お怪我はありませんか?」
「有難うエマ、無傷だから心配ないよ。仮に怪我したところでも、俺も回復呪文使えるから心配ないしな。」
女僧侶…エマが二人を心配して声を掛けるが、グレイが答える。
「そうよ。それに私達の回復呪文は、寧ろ戦闘中に使う事が前提だから、ね。」
女神官…フレアはエマに言葉を掛ける。
フードの女は、フードを外しながら小柄の犬と小さな「モノ」に声を掛ける。
「ココア、ラピス、もういいよ。」
「よかった~、怖かったよ~。」
「ラピス、もう大丈夫だワン。ご主人様やヤマト様がやっつけてくれたワン。」
小柄な犬…ココアと小さな「モノ」…ラピスはほっとしてフードの女に駆け寄る。
「マリィ、ホントに大丈夫~?」
「油断は出来ないよ。まだ遺跡の入口だしね。」
「そうだったな。まだ遺跡の入口に来たばかりだったな。」
「そういやそうだ。」
ラピスとマリィの会話に入るヤマト、それと革鎧の男…ファルコン。
「さっさと遺跡調べて、仕事終わらせようぜ。」
「そう…だな。」