7話目:フォーンの荷車
フォーンは、あまり一般的でないことに文献で気づいた。
俺が住んでいる地域では普通にいる毛の長い牛みたいなやつだ。
名前の意味は「茶色」、その毛色かららしい。
毛色が違うフォーンが別の地区にいたりしないだろうか、と空想してみる。
そしたら・・・そう、例えばヒツジとヤギみたいに、勘違いが起こってるんだ。
毛を狩るとメスになる、とかのやつだ。
フォーンの伝説として逸話がある。
愛玩されることを選んだから、「あんまり美味しくない」ってこと。
一部まだフォーンを捕食する人間はいる。
しかも人様の家に盗みに入ってだから、タチが悪い。
首輪がついてるのがいいのよ、みたいなあの昔話に聞く連中が大嫌いだ。
フォーンの仕事は、荷車を引くこと。
道すがら知り合いの老爺が「乗っていきなよ」と言うので荷台に乗る。
木漏れ日の中揺られ、身体をあずけて眠りたくなってくる。
そこに現れた里の「好きもん」が、腰上に乗って来た。
その女いわく、性的なことが生きている証で将来娼婦になってもかまわないらしい。
里の決まりで、金銭のやり取りはないが、もちろん合意は確認される。
つまり合意したわけだが、ぽかぽか陽気に眠い。
好きにしてくれ、って気分だった。
楽しそうにしてくれたが、俺とその女の関係は絶対に結婚はしないことも合意済みだ。
きゃらきゃらしていて基本言動は意味は分からないが、
子供ができないことを知ってからああなったらしいから、
容姿面も総合すると可愛い系なんだろう。
ただ、考えはするものの感覚的に絶対に結婚しない相手だ。