29話目:散歩道
メヴァンディーニを書くかも知れない前提で、近所の散歩に出る。
今日は雑記帳を持参して、結羽のタオさんに診てもらう予定だ。
そう言えば姪のビセラちゃんは「花」が好きだったな、とふと思い出す。
自宅を出ると、向かいの家の玄関先に
違い棚みたいな枝ぶりのいい赤い花が咲いている立派な盆栽が見える。
その家を左に曲がり、ここらを拠点にしている野良猫と遭遇。
人慣れしていて、なでてやると喉をごろごろと鳴らした。
植物と建物が一体化してる気味の区画のパイプ配線は実にユニークだ。
トタン屋根と布屋根の間から見える光と影を肌が感じとっている。
目的地までの近道で、途中に野菜屋の棚に果物なんかも盛ってある。
手に取って匂いを嗅いでみると、ほの明るく甘い。
まるで朝方に雨が降り終わったみたいな甘さだと思ったが、雨に糖分は多分ない。
暗がりに入り小道を通っていると、なんだか切ない気持ちになった。
近道してよかったのかどうか、分からない。
まさか自分みたいな男を近所に襲うやつがいないから叶う近道だ。
背後に気配を感じて振り向こうとした時に、人影が両腕を上げていた。
どこにでもあるような石・・・
それを両手に持って振り上げている男はフードマフラーをしている。
このフードマフラーの趣味は、郵便屋の・・・
殴られた衝撃で失われていく意識が、体勢を保てなくなって倒れる。
奇襲をかけた男は荷物から雑記帳だけを持ってその場をあとにした。
そのあと。
俺を襲った犯人は、ケンダツバ石と言う特殊な石を凶器に使ったことが判明。
そして現場に残っていた強い整髪剤の匂いの証言もあって、捜査が行われた。
犯人は、とある結羽から証を盗んで、自宅で俺の書いた雑記帳を読んでいたと言う。
俺を襲った謎の男は、結羽のはずの「タオさん」だった。




