19話目:朱い柱の猫屋敷
クーファちゃんの家の次に、珍しいシュアザローナの薬酒を届けに行く山道。
そこは年中紅葉している場所で、一説に化け猫が季節を操っていると言う逸話がある。
初めての依頼だったので、少し道を迷った。
赤、黄、橙、山吹、朱、紅葉した葉の色は美しく、歩いていて楽しい。
途中湧き水を見つけて葉が浮いているのをつまんでみると見ていて仄かに甘い気がした。
「誰だい?」
猫なで声にも聞こえる甘いような突然の声に、驚いて振り向いた。
そこには一匹の猫がいて、「口を借りている」と飼い主が言った。
猫に案内されて行き着いた先、赤い楓の葉を枝ごと片手でどけて見てみる。
視界に広がったのは池で、そこに高床式の赤い瓦屋根の屋敷がある。
池には朱と碧と黒の斑模様の鯉が何匹かいて、碧が入っているは原種に近いと言われた。
豪華な屋敷は、この界隈が色町だった頃の名残を多分に残している。
通された屋敷の中にはあらゆる種類の猫がいて、「猫屋敷だ」と思った。
猫たちの飼い主の部屋に通され、そこに美しき金髪の花魁を見つける。
どうやら女主人、具合が優れぬというに猫が心配で病院に行く気がない。
派遣医者も近くにはおらず、また妙なうわさで診てくれる者がいない、と。
猫は捨てられているのを拾ったら、薄情たちが次々と預けに来たらしかった。
とりあえずシュアザローナの薬酒を渡して、ニコルと言う成分の説明。
魔法が使える女主人は薬酒の値段を聞いて、その安価に我を気に入ったようだった。
「もうすぐ夜が来る。夜道は危ないから、泊まっていくといい」
合意の上で甘い時間を過ごしたわけだが、それを雑記帳に書いてもいいと言われた。
子供はできないような工夫を渡された。
その代わり屋敷にこれ以上猫を捨てに来るな、と記載してくれ、と条件があった。
それがこの屋敷の通称『化け猫』の意思である、と。
それから、一緒に猫の世話をしてくれる殿方を募集中なんだそうだ。




