18話目:すみれの亜種
山の中、縦長で細い白幹の木々が点在し、そして道がある。
一本道で、土で均してあるひとの行き来があまりない場所。
そこを通っている。
この場所は俺のお気に入りだ。
獣道よりは舗装されたその道の両端が、一面に背の高いすみれの亜種畑。
しかも気候のためか一時期を除いては年中勝手に咲いている。
咲いていないのは、舗装した道にまで成長すると、手入れをするからだ。
どうも生命力が強いこたちらしい。
そんな道を通っているアリアスが、何を目的にしているって?
素敵な女性に会いに行くためです。
その道を通り抜けると、人里離れた小さな村がある。
そこに薬酒の類を届けに行く家の手伝いなのだが、俺の来訪を喜んでくれる。
家の外に出ることもむずかしいくらいの病弱な女の子、クーファちゃん。
実は薬酒をその家がまずしいことを理由に値引きしていることは秘密だった。
クーファちゃんは、それを知ってしまったらしい。
家をたずねた俺の顔を見て、将来お嫁さんにして、と泣きつかれた。
とても可愛いが、そんなつもりで薬酒の値引きをしていたのではない。
それを言うと、彼女は「他に好きなかたが?」と聞いてきた。
なぜか、心臓が痛くなって、なんだこの気持ち、って思った。
冷静を装ってたたずまいを直し、そして数秒悩んだ。
俺って、好きな誰かがいるんだろうか・・・?
結婚まで考えるような相手と、まだ対面したことがない気がする。
「分からない・・・」そう答えた俺に、クーファは「私頑張る」と言ってくれた。




