16話目:金のハチス茶
今回は俺のバイト先にチョウが同行することになる。
向かうは崖肌に摩天楼的立派な屋敷をそなえている場所。
そちらは金のハチス茶を栽培販売している高級茶屋である。
他にも高級茶を出していると言うので、珍しい酒をちらつかせてみた。
当時は安物だったが、今は希少価値の案外と高いミニボトルの酒に喜ばれた。
金のハチスの花粉を採取する人員として雇われて仕事を終えたら、
給金と高級茶葉をオリジナルブレンドしたものをやろう、と言われた。
お茶が好きなチョウが超絶ご機嫌である。
そして作業着に着替えて、現場を目にして圧巻した。
巨大な丸い葉と、遠目に見える大きな金色のハチス、広大な池。
大きな葉で舟が出せないと言うので、ならば葉の上でも移動するのかと聞く。
すると、御明察だ、と言われて、眉根を寄せたが、言葉通りのようだ。
「巨大な葉はおとなが乗っても大丈夫ですけど、池には電気ナマズがいるので注意を」
と言われ、電気ナマズの話をそこで初めて聞いた。
チョウは楽し気に葉に乗り、リズムよく葉の上を走り飛ぶ。
それを慎重に追いかけて、まるで小人になった気分だ、と思う。
金のハチスを目の前に、その香りや色合いを美しいと思った。
花びらを傷つけないように少し手でおさえて、チョウが花粉を採取した。
採取した花粉は専用のボトルに入れて、背負って、来た道を戻る。
仕事が終わって葉の上を走ったり飛んだりしている自分が楽しくなってきた。
チョウが小さめのやつをわざと踏んでみて体勢を崩した時はひやひやした。
近くにいたので転びそうなところ、腕を引っ張ってそれで無事にすんだ。
チョウいわく、「楽しかったねぇ」と出されたお茶を幸せそうにすする。
「そうだな」と、返事をして茶を口にすると天然で甘く疲れが癒えた。




