11話目:池紫陽花
せっかくだし少しのんびりそこらを見回ろうかな、と宿をとった。
宿の催しがあって、参加するなら更に4500シューイーズ払えと言う。
どんなものなのか聞いたら、恋愛成就。
なのに聞くところによると、鳥居までの道筋には紫陽花が浮いているらしい。
紫陽花の花言葉は、我の里では「浮気」とか「移り気」である。
別の地区では「変化」となってきていることを知っていてよかった。
とりあえず納得できなかったら返金してもらえるらしく、金を払った。
白い長衣に裸足。
黒い岩の道に川ができていて、ゆるやかに上流に向かって徒歩で進む。
豊満に咲いている紫陽花が時折、脚横に浮いている。
青、水色、紫、黄色と花びらの色はさまざま。
拓けた上流には鳥居があって、神妙にくぐる。
一面が紫陽花の浮いたその滝壺は、この時期『池紫陽花』と呼ばれる。
『池紫陽花』と言う単語は、こちらの季語にもあたるらしい。
深くなっていく水深に、腰元もすでに濡れている。
親子ずれなんかもいて意外だ。
滝に手を合わせて打たれる。
不思議に思って更に歩を歩めると、そこは洞窟みたいな場所。
階段がありそちらに進み、宿の者の案内ですぐに着替える場所があった。
4500シューイーズはほとんど長衣代らしく、持ち帰ってもいいらしい。
なにが意外なのか、
ああ来た道を神妙に戻るんじゃないんだ、と少しほうけていた。
そう言えば来た道は、一方通行だった。
なんだろう、この気持ちの名前。




