1話目:夜光花
宵闇、太い幹は強い根を張っているのだろう、地面が凹凸している。
その樹はもうすぐ、『本棚の樹』になる予定だ。
うわさを聞きつけたとんがり耳の幼顔の女児は、夜光花を届けに来てくれた。
樹の意思により、本棚に変化する時間をその女児と過ごした。
見事に棚のへこみ分が、幹を螺旋状に階段にしていく。
枝に鳥かごを吊るして、中に夜光花を入れる作業が今日の俺の仕事だ。
ぽつぽつと確認を取りながら、担当である女児と夜光花を鳥かごに植える。
これで夜でも読書ができる。
もしくは夜光花が輝きだす頃合い、帰りの合図となるのだろう。
夜光花の蜜欲しさに、照蝶が飛んできた。
夜に光る羽根を持つその蝶は、蜜を付けた指先に停まった。
すくうような手の中で光る蝶と花。
暗い風景の中照らし出される、
座っている女児の
スリットの入った服から出る瑞々しい太もも。
そんな趣味を持っているつもりはないが、目のやり場に困った。
そのあと会話の中で気づいたが、女児に見えるその者はどうやら年上らしい。
若く見える種族だと聞くが、どう見ても十代前半。
彼女の年齢は、七十を超えているらしい。
雰囲気的にいい感じになってきて、まぁいいか、と思った。
七十すぎ・・・全然そんな感じはしなかった。
向こうも向こうで、
「角を額に持ってる種族は珍しいから出会った記念に」と言っていた。
リードされてばかりで、なんだか悔しかった。