第9章
VRツアーに参加したとある精神科医があちらの世界でドアーフってどういうこと?! 第9章 作: 大丈生夫 (ダイジョウイクオ)
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Scene.16
此処ノイシュバンシュタイン城の主であるフランクの話を一同はあまりの唐突さに全てを飲み込む事は出来ないでいた。
夜も更けるころ、夕食を終えた一同は一旦、元精神科医のナリミーーの部屋に集った。
「フランクは俺たちをマイスター職人といえる人材、って言っていたけれど、俺たちドアーフの格好はしているけれどもそんな技術などもって居ないだろ。何か勘違いでもされているんじゃあないか?」
「それもそうね。しかし「償還」されたのには何かしらの意味はありそう・・・髪の化身と言われる「森の仙人」に償還されたのは事実じゃないのかな?」
「「償還」とか言われたって、私達ただVRツアーに集まった人たちばかりだし、そもそも私達が自分たちの意志でそれに参加したんだから・・・」
彼らの意見を聞いていたナリミーが話し始める。
「いいや、それはどうかな。確かに最期にVRヘッドを装着するに至ったのは自分たちの意志だったのだろう。だが、ここへ招き入れるための下準備はおそらく宗谷の人選によって選ばれたようでならない。」
「それにしても宗谷サン、一体何処へ行ったのかしらね?」
「確かに彼が先導してツアーをする役目だと思っていたが、いざ始まると「Mission」だけが送信されるばかりで、終いにはVRヘッドすら装着していないのだから。」
「それよりも元の世界に帰ることさえもまま成らないなんて・・・私オウチに帰りたい・・・」
「フランクは「祈り」によってその思いは叶うと言っていた。」
「そもそも「祈り」って、一体どんな?」
「よく判らないが、フランクはこの城の門の修復をすれば報酬を与えるとは言っていたな。」
「その報酬がもしかして「祈り」なのかしら?」
「それは誰にも分からないが、先ず修復から始めよう。」
「そうだね、それが正解かも。そうと決まれば明日から忙しくなるぞ!」
一同はそれぞれの言い分を吐き出したお陰で幾らか安堵感を覚える。
ともかく今夜は解散とし、それぞれの部屋に帰っていった。
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翌朝、何処からか響く高らかな鐘の音によって皆は起こされた。
「なんだよぅ、こんなに朝早くから・・・まだ5時ごろだろ?」
不機嫌そうにケントはCAリンリンに問いかける。
長旅の疲れのせいで鐘の音を気にかけるでもなくスヤスヤしているリンリン。
すると目の前に新たなMissionが表示され始めた。
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Mission:
これから森の仙人が訪れるでしょう。
あなた方は決して彼の言葉に逆らってはなりません。
どんなに大変な命題にも従うのです。
では、御機嫌よう!
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なんとも不可解なMissionにケントは朝から気分を害した。
まだ眠いまぶたを擦りながら階下にあるリビングへと降りてゆく。
既にウメとナリミーがそこに居た。
「やあ、オハヨウ。良く眠れたかい?」
「いいえ、それより何ですかねぇ、あのミッションは。」
「それは仙人に会って見ないと誰にも分からないよ。」
「ケント君、おはようございます。ほら朝のお紅茶を召し上がれ。」
ウメがケントに夕べと同じようにアールグレイを注ぐ。
やがて一同が続々とリビングにやってきた。
ソルジャーも何だか不機嫌そうにぶっちょう面を引きずっている。
朝食が到着し、フランクが現れた。
「皆さんオハヨウ。では先ほどのMissionのとおり、間もなく私達の師匠となります「森の仙人」が現れます。皆さん初対面ですが、どうか驚かないように。」
何やら意味深な言葉を吐くフランク。
一同は昨日までの疲れも手伝ってぼんやりとしながら朝食を嗜む。
食事を終えリビングのソファに着いた一同の下へ執事からフランクに伝言が入る。
すると一同に声を掛けると、リビングの外へと案内する。
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数々の高貴に輝く調度品が置かれている廊下をフランクに連れられながら先に進む。
やがて大扉の居室が現れると執事が開け放つ。
そこは広々とした作業場であった。
その奥にある机に人影が鎮座している。
その男は立ち上がると2m位はあろう背丈の大男であった。
「みなさん、ようこそ!私はこの先の森で暮らしているフォーと申すものです。皆さんには今日からドアーフとしての作業に従事していただくことになります。」
そういうと、皆に大きなテーブルのある席に着くように命じる。
それを見守るとフランクは執事を連れてそそくさと退出する。
机の上にはドアーフ達人数分の道具箱が置かれている。
「では、本日からここノイシュバンシュタイン城の正門の修復に当たることになります。皆さんにはこの修復が完了した暁にはフランクより報酬が支払われます。君達の働き次第では報酬は増額されますので頑張って下さい。では・・・」
仙人フォーはそういうと、机の傍らに立てかけてあった図面をテーブル一杯に広げる。
その図面には細かの寸法が表記されており、その形状に一同はギョットする。
「皆さん、驚かれたでしょう。そう、此処に描かれているのは今までの正門とは異なるものなのです。」
一同はその図面がドラゴンの形をしていることに驚いたのであった。
「この正門が完成した暁には、この両側の門柱であるドラゴンに魂が吹き込まれます。やがて来るであろう災難にドラゴンは立ち向かうことになるのです!」
ドラゴンに魂?なんとも絵空事のような話に一同は呆然とする。
と、フォーに向かってソルジャーが質問する。
「ですが、僕らにはこのような造作をする技術などありません。」
「そうかな?ま、そのうち判るよ。」
するとフォーは一同に道具箱を持たせると戸外へと案内する。そう、昨日到着した方角へ。
そして城の外に出ると正門に到着した。
「さぁ、君達の持つその箱を開けてみなさい。」
それぞれに道具箱を開けると、どうしたことかモクモクと煙が激しく噴き上げたではないか。思わず吸い込んで咳き込む一同。それは・・・・
「ヨシ、これで良い。」
フォーはそう言うと図面を彼らに渡すや門の外へと消えていった。
一体何処へ?私達を置いて。すると再びMissionが表示される。
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Mission:
これであなた方には「石工」としての技術が伝授されました。
これであなた方は一人前のドアーフです。
試しにそこにある道具で石を削ってみればわかりますよ。
では頑張って!
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するといつの間にか大きな石の塊が正門の傍らに置かれてあるのに気付く。
ソルジャーが先頭を切って道具箱の中からノミと金槌を取り出して石を削りはじめる。
「こ、これは・・・」
ソルジャーは驚いたようなようすであったが、徐々にリズミカルに道具をうまく使いこなしながら削り始めたではないか!
他の連中も同様に作業を開始し始めた。
まるで手が勝手に動いてでも居るように、キャバ出身のキャンまでも次々に上手に削っていく。
ナリミーも道具をうまく使いこなして行く。
ただ、ウメは魔法使いなので道具も無くそばでジッと皆の動きを観察していた。
昼食までにはかなり捗ったため、ドラゴンの足の部分の形が浮き上がってきた。
「いやぁ、中々しんどい作業だと思ったけど、どういう訳か全く疲れもしない。いつの間にか筋力が育ったみたいだ。しかも手が勝手に動いているみたいだ。」
「そうね、ちっとも汗すらかかなくって、何だか楽しくって。」
「私ぃ~これってもしかしたら天職かもしれないって思っちゃうの~、ビックリィ!」
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////////// To Be Continued ☆☆☆☆☆