第8章
~~~~
Scene.15
「さて、皆さんお腹がすいたでしょう!」
紳士は執事達に食事の準備をするようにと告げる。
此処「ノイシュバンシュタイン城」フェイクのリビングに佇むドアーフ達。
魔法使いのウメが紳士に質問する。
「あなた、お名前は?」
「ああ、申し遅れました・・・私はこの城の主、フランクと申します。」
「それではフランクさん、貴方は此処にどうして「償還」されたのですか?」
フランクは暫く沈黙する――――
それから従者がアールグレイをドアーフ達に注ぎ入れる。
一同は緊張で渇いた喉を始めて潤す。
フランクはやっとのことで重い口を開いた。
「私がこの世界に「償還」されたのはもう10年ほど前にさかのぼります。
私はあちらの世界では養鶏場を経営しておりましたが、ひょんなことで人間ドックに入ることになり、MRI装置の中に入ったとたん、こちらの世界に到着しました・・・・
あなた方と同様、最初の段階ではなんとも信じられないことばかりで心労が耐えませんでした。
するとどうしたことでしょう、目の前にMissionが表示されたのです。
その内容はこうでした。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
Mission:
この森の先に仙人が住んでいるので、そこで弟子として従うように。
その仙人こそ神の化身であるが故、逆らってはなりません。
どんなに大変な命題にも従うのです。
因みに貴方をこちらに「償還」したのも彼なのです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そう言うと紳士フランクはアールグレイをすする。
「そして森の中に住んでいるその仙人の下でお世話になることになったのです。
彼が私をここに「償還」した理由として、当時この世界はモンスターたちが暴れまわっていました。それを退治するためとの事でしたが、やがてモンスターたちは居なくなってしまったのです。」
ウメは美味しそうに紅茶を嗜みながらフランクの話に食い入る。
「しかし、なんだって居なくなってしまったのかしらねぇ?」
「どうやら私がその仙人から伝授された「白魔術」の効果だったようです。」
「し、白魔術ですか?具体的には?」
「ま、話せば永くなりますが、その頃こちらの世界では天災や飢饉が続いたせいで人々の暮らしは疲弊して行きました。
そのせいで人々は強盗、略奪をし始めたのです。そのせいで人々の身には「悪い気」が充満し始めたのです。
それを察知したモンスターたちが、今度はこの地域にやってきたのです。
なぜならば、モンスターたちはその「悪い気」が大好物だったのです。
そこで私は仙人様から授かった「白魔術」を活用し、この地に「食物プラント」を作って食糧自給に役立てたのでした。
「食物プラント」では野菜や家畜を育て、無償でこの地の家庭に配給しました。
そのおかげで人々の生活は徐々に安定し、やがて「悪い気」が人々の身から消えて行ったのです。
するとそれをエサにしていたモンスターたちはいつのまにか何処かに行ってしまったのです。
私の功績を高く評価してくださったこの地の頭領がお礼にと娘さんを私に下さったばかりか、この城の建立までしてくれたのでした・・・・」
ケントと元CAリンリンが興味しんしんに聞き入っている。
紳士は話を続ける。
「それから我々の食物プラントの規模は更に大きくなり続け、ビジネスとして軌道にも乗ってきたのです・・・・しかし」
皆がゴクリと紳士に釘付けとなる。
「ライバル会社の出現のあおりから、その後の操業が危うくなっていきました。
その理由として、肝心のマイスター職人といえるような人材が存在して居なかった事で上位ランクに昇格できなかったからだったのです。
それから私の思案に暮れる日々が長く続きました。
私は過労のせいで病んでいきました・・・
そんな折、終に・・・・奇跡の時は来たのです!
なんたって偶然にもマイスターである貴方方に出会えたのですから!
きっと私が思い悩んでいることを不敏に思った神である森の仙人様が私に手を差し伸べて下さったのでしょうーーー」
そう言うや、フランクはポケットからハンカチーフを取り出し、潤む涙を拭う。
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
////////// To Be Continued ☆☆☆☆☆