第5章
Scene.09
ああ、酔いどれ天使達はここ中世と思しき世界の中で酔い酔いな時間を続けていった。
その挙句の果てに、一同はそのまま朝を迎える羽目となってしまったのであ~る・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「あれ?此処はどこ?」
事の次第を眺めていた此処の住民らしき男がソルジャーに向かって言う。
「オマエって奴は、運の良い奴だ。オマエが酔いつぶれて記憶を失っている間に、皆はしょっ引かれていったぞ!」
ソルジャーが昨日オートバイを駐輪した広場で眼を覚ましたのは、朝の10:00過ぎのこと。
まだ二日酔いのせいで辺りが何だかクルクル回転して見える。
「早速だが、このままでは俺達もアイツラ同様にしょっ引かれるぞ!」
これはどうしたというのか、なんと皆はポリスにしょっ引かれていった様子であり・・・
だが、何の犯罪?
俺たちが何をしたって言うの?
ソルジャーは何のことやらさっぱり分からないままで辺りを見回している。
すると、どうにかしょっ引かれなかった様子のあのピチピチ婆さんがこちらにやってくる。
もしかして、ピチピチ度合いで警察官に赦してもらったのか?やれやれ・・・
「おお、お兄ちゃんもどうやら無事だったねぇ!あたしもどうにかこんなんで!」
「こんなんって、どゆこと~?」
「ほうら、あいつらは酔っ払って、有り金もないのに無銭飲食でしょっ引かれたのさ!」
だが、俺だって一文無しなのは同じ。何で俺は助かったのだろうか?
「そいでね、どうしたものか奴らのしょっ引かれたときに、こちらの紳士が良きに計らって下さって・・・」
紳士?ソルジャーは婆様の向こう側に見える紳士を見つける。
その紳士はなにやら未だに警察に対し悶絶を交わしている様子。
「で、俺達はどうなるの?」
「ああ、分からんが、話の様子次第では無罪放免かね・・・」
「ってことは、あんたと俺はこの件には関係ないかもしれないって?」
「おうや、オマエさんは仲間を裏切るつもりでおいでかい?」
「いいえ・・・滅相もありませんよ、そんなこと。例えばの話しでして・・・」
「へぇ、大した玉だねぇ。おばちゃんもこれにはマイッチング、もとい・・・」
「何ですとぅ?マ、マイッチングって?」
「いいの、こっちの事。それよりあんた、酔いは覚めたかい?」
「は、はい。大丈夫だとおもいますが。」
「宜しい。では先へ急ごう!」
「さ、先ですか?」
「然様。先へ進むのじゃ。悪い?」
「いえ・・・しかし皆は?」
「うるさい、いいからお前は黙ってワシの言うことを聞いていれば良い!」
婆様でありピチピチのウメはそう癇癪を起こすや、しょっぴかれそこなったソルジャーを広場に停めたバイクのほうへ促す。
ソルジャーが広場にたどり着くや、人だかりに気付く―――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「オイオイ、これは未来の乗り物か?」
「いいや、この世のものとは思えないぞ!」
「これは何かの神からの化身に違いない・・・一同触るではないぞ。」
「何を仰います、これらは未来的な形状を帯びては居ますが、決して神の化身では・・・」
「何じゃと!オマエにそんなこと分かるってのか?この宝物を操る使徒がいずれ現れるに違いない。」
「し、使徒で御座いますか?それは何を根拠に?」
「そりゃあワシにも分からんよ。おおよそこれを使ってワシらの邪魔をする気なんだろう。」
「ならば解体したほうがいいのでは?」
「早まるな。そんなことしたら何が起こるかわからんぞ、お前達も黙って事の行く末を見ていれば良い。」
「それが得策だな。」
バイクを取り囲んだ連中はそんな会話をしている。
ソルジャーが呟く。
「そうか、これはまずい!この中世の時代において、未だバイクどころかエンジンも無かった筈。よりにもよって現代の我々の最先端マシンがここにはある。当然ここの住人が驚いても不思議はない。その上もしも悪い事を考える連中の手に渡ったならば、どんな悪事に使うか分らない。そしてこれを操る自分たちの事を利用するに違いないのでは・・・」
すると、ピチピチババア、ウメは連中の前へづかづかとにじり寄る。
「あれまぁ、皆さんお揃いで、これはこれは。そいじゃあ、こんなんしましょうか?」
そういうや、昨日使っていたあの杖を颯爽と振り回し始める。
なんとも滑稽にヘッピリ腰も健在に、まるで道化師のようにステップを始める。
すると・・・
「うわぁ!どうしたというんだ、馬に化けちまったぞ!」
辺りの人だかりが騒然となる。
バイクはウメの魔法によって馬に変えられたのだ。
「今だソルジャー、早く乗りな!」
そう言うとウメは軽快に馬に飛び乗り促した。
「でもオレ、乗馬したことが無いし」
「いいから早く乗りなさい。さぁ、出発よ!」
ソルジャーが飛び乗るやウメは馬を蹴り上げ駆け出す。
それにしたがって他の馬達も駆け出してゆく。
必死にソルジャーは馬にしがみつく。
馬達は町を駆け抜け、やがて郊外へとなだれ込んでゆく。
しばらく行くと林が現れ始める。
見事な乗馬スタイルのウメは、徐々に馬たちをペースダウンすると、静かな小川のたもとで停まった。
必死の形相でしがみついていたソルジャーがヘトヘトになりながら地面へと崩れ落ちる。
馬達も小川の水を飲みながら疲れを癒す。
「さぁて、ひとまず問題は解決した。ところでしょっ引かれた皆をどうやって連れてこようかねぇ。」
ウメは思案に暮れる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
Scene.10
小川の流れがさらさらと漂い続けている。
木々の緑から木漏れ日が心地よい。
岸辺の木陰でうたた寝をしていたソルジャーが、思い出したようにバカッと飛び起きる。
「やれやれお目覚めかい?夕べは散々飲んだくれたからねぇ。」
すると遠くから馬の蹄の駆ける音がこちらに近づいてくる。
一台の立派な4頭立て馬車が到着する。
馬車から長身のシルクハットの紳士が降り立つ。
そしてこちらに近づいてきた。
「ああ、こちらにおいででしたか。」
紳士はそういうとウメに話しかける。
「貴方は先ほどの・・・」
「それにしても大変でしたね。貴方がたドアーフさん達がしょっ引かれて行くのがどうも気がかりでして・・・私が警察に掛け合ったところ、お食事代を支払わなかったとのことで、ならば私が立て替えをしようと思いまして。最も私の条件を飲んでいただくということでね!」
条件?不思議なことを言う紳士。
ぞろぞろと馬車からしょっ引かれた筈の一同が雁首をうな垂れて降り立つ。
「ああウメさん、オハヨウ御座います!」
「あんたら無事だったんだね?」
「だってぇ~お金持ってないシィ~だから逃げろってハイジが言うからつい・・・」
遮るようにナリミーが切り出す。
「しかし私は止めたんですよ・・・ですが、何を血迷ったのか気付いたら私も彼らと一緒に駆け出して行ってしまった・・・精神科医であるにも拘らずプライドもそっちのけで・・・」
「それで、こちらのおじ様が私達にMissionを与えて下さって、いわゆる一つの条件ね。」
すると、一同のVRヘッドの画面上にアラートが上がるとステータスが表示される。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
Mission: 修復作業
紳士の屋敷の修復に当たれ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
どうやら未だ姿の見えないツアコン☆宗谷からの指示ではなく紳士からの指令?
そして屋敷の修復とは?
それは夕べのバルで無銭飲食をした一同を警察から救ってもらったお礼としての交換条件なのだろう。
こうして新たなるMissionを達成するべく、一同はここに居る紳士に従う。
紳士の馬車を先頭におのおの馬に飛び乗って、彼の屋敷への道のりを駆け出してゆく。
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
////////// To Be Continued ☆☆☆☆☆