第4章
VRツアーに参加したとある精神科医があちらの世界でドアーフってどういうこと?! 第4章 作: 大丈生夫 (ダイジョウイクオ)
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Scene.07
ついにこれから始まるドアーフたちのツアーの道具として人数分のバイクが用意された。
するとツアーコンダクター宗谷からそれぞれのVRヘッドにアナウンスが入る。
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~ 皆さん、最初のミッションは無事完了のようですね!
意外と簡単にこなされたので、チョット焦りましたが・・・
さてこのゲームの攻略についてはこのようにミッション形式となります。
全て皆さんの目の前に表示する形となりますのであしからず。
私はあなた方のツアーでの行いを逐次監視させていただきます。
それでは皆さん、楽しい旅を!バッハハーイ!! ~
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なんとも身勝手なツアコン☆宗谷からの説明に元精神科医のナリミーが怪訝に思う。
ゲームの攻略?とは、このツアーはもしかしてゲームということなのか?
そして宗谷は我々の行いを監視するというのだ。
「しっかし何でドアーフなのに旅をするんだい?」
ソルジャーが用意されたバイクに跨りながら不安げに呟く。
「わたしゃ95歳にもなってバイクに乗るなんて思わなかったよぅ。ま、こう見えても昔は馴らしたもんだがねっ!」
魔法使いとなったウメが何だか懐かしそうに言う。
「ちょっとヤダァ~ッ!こう見えてもってピチピチのくせしちゃって~、キャハッ!」
相変わらずキャピキャピするキャン。
お宅の警備員だったハイジもバイクに跨りながらいじりはじめる。
「ふむふむ、どうやらこれってソーラー充電する電動オートバイのようだ。ナビも着いてるし、ん?こいつぁすげえ、「Auto Ride」ってモード、もしかして自動運転?」
元CAのリンリンはそれを聞いてほっとした様子。
「ねぇ、自動運転だって。平ら顔のケントでも大丈夫ね。」
「なんだとぅ!オマエこそパンダのリンリンじゃん。しかもドアーフ、ププッ!!」
「何よ、イ・ジ・ワ・ルッ」
「あれま~お二人さん、お熱いねぇ!」
ソルジャーがカップルを茶化す。
ソルジャーは自衛隊でバイク部隊に所属していたこともあり早速試乗しはじめる。
広大な草原を颯爽と流す。
しばらく乗り回したあと戻ってきた。
「このバイク、なかなかご機嫌だよ。自動運転モードなら転ぶことも無いぞ。しかも追従機能もついているから皆で連なってバイク任せで旅できるな。」
すると、どうしたことかまるでしびれを切らしたようなピチピチ95歳がよっこらしょっとバイクを起こすや、凄いスピードですっ飛んでゆく。
「やや!やるなぁ、あのババァ!もとい、元ババァ!」
ついナリミーも悪口を言ってはいたものの、気付いたらバイクに跨っていた。
ハイジが覚えたての知識のくせして操作をキャンに伝授する。
バイクに乗ったことないカップルも、二人乗りなどかまして自動運転を開始。
こうしてそれぞれは草原をグルグルと走り回る。
夕暮れ前に皆は無事帰還する。
それぞれに満足げな笑みがこぼれている。
「やれやれ、年寄りの冷や水だったかねぇ。昔取った杵塚とはいうものの草の上でスリップしたときはドキドキしちゃったね。」
「なかなか格好良かったよ、ウメさん。」
「ようし、これでみんなバイクに慣れたようだね。しかし腹減ったなぁ!」
ソルジャーがそう言ったとたん、VRヘッドの画面上にアラートが上がる。
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Mission: 食事
バイクのナビに向かって話しかけると、希望の場所に連れて行ってくれます!
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「へぇ、ボイスナビ機能で好きな場所にいけるんだな。すげぇ!」
ハイジがナビに向かって話しかけ始める。
「おいみんな、今夜は何食べたい?」
「オイラ、ステーキ!」
「私、イタリアンッ!きゃぴっ!」
「私はうな重が食べたいなぁ、肝吸い付きで。」
「あたしも、それで・・・」
「ケント、どうする?」
「俺はもつ鍋で一杯やりたい。」
「やだ、おっさんね。私はお刺身定食がいいな。別に船盛でもいいけど。」
「オイオイ、後の清算が怖いよぅ。」
「それもそうね。」
「じゃ、居酒屋だったら皆の希望が叶うね。」
「だけどぅ~ここの世界では~ドアーフだっしぃ~、もしもゲームだったらぁ、中世の世界が一般的だからぁ~、居酒屋とかないかもしれないしぃ~、バルとかじゃない?」
「それよりオマエって、どこの宇宙人?」
「てか、喋り方可愛くね?」
「キャンって、ブッ飛んでるね!」
「何よ、イ・ジ・ワ・ルッ、キャピッ。。。」
「はいはい。」
「バルか。私もそうしようかな。」
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Scene.08
早速ナビの設定の仕方をマスターしたハイジが皆に教える。
どうやら草原の彼方向こうに町があるようだ。
腹をすかした一同はバイクに跨ると、ソルジャーを先頭に走り出す。
もうすっかり暮れた夜風が気持ちいい。
やがて遠くに一面光に包まれたエリアが現れる。
なんともステキな光景に一同は誘われるように吸い寄せられる。
そして小さな町に到着する。
案の定、皆が予想したとおりの中世のヨーロッパにも似た街並み。
水銀灯に照らされた石畳の道をバイクを連ねて先へと進む。
角を曲がったところで町の中心街のような広場に到着した。
先ほどの草原とは打って変わって、人波でごった返す。
それぞれは楽しげで、どうやら平和な町のようだ。
広場にバイクを並べた一同は、ナビの情報を元に散策する。
幾つもの店が並ぶ通り沿いにそれはあった。
「おぅ、これは絵に描いたような「バル」だね!」
「私お腹すいたぁ、早く入りましょうよ。」
やはり人でごった返すそのバルへと入ってゆく。
皆既に酔い酔いでにぎやかだ。
大きなテーブル席の片隅にギュウギュウになりながら座る。
MENUを取ると全て横文字であったが、VRの機能に翻訳システムが組み込まれているため、画面上に日本語で表示された。
「あたしゃ、ビールをジョッキでっ!駆けつけ一杯っ!」
真っ先に堰を切ったようにかつての老婆でありバイク乗りのウメが注文する。
「あ、私も~!ウメさんってぇ~、飲める口なのねぇ~!私と一緒ね、きゃぴっ!」
「じゃ一緒に乾杯ね。」
ソルジャーも、もう我慢できないというばかりに、スペアリブやらソーセージの盛り合わせやらを一気に注文し始める。まるで肉祭り!
結局二人乗りでやってきたバカップルのケントとCAリンリンはオシャンにワインとチーズの盛り合わせ、カルパッチョを注文した。
「本当はうなぎが食べたかったなぁ・・・」
と言いながらもオイルサーディンとキャビアのパスタを注文するしゃれおつナリミー。
元自宅警備員ハイジもナッツとバケットをシャンパンで流し込むことにする。
やがてテーブルに酒が運ばれてくるや皆で乾杯!
さすが皆ドアーフになっただけあってか、酒のピッチが妙に早い。
ナリミーも意外に飲める口になった事に自分でもビックリ。
次々に料理が運ばれてくる。
そのボリュームにもかかわらずバクつく一同。
元老婆も無我夢中で骨付きリブにがっついている。
一同は満腹になりながらも、ひたすら酒がすすむ。
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近所のおじさんたちのような楽団のバンドネオンの音色が、酔っ払いの声に掻き消されずに響き渡る。バイオリンもいい感じ♪
やがて曲は「Kiss Of Fire♪」に変わった。
周りの親父たちが仲良く肩を組んで合唱し盛り上がる。
そしてタンゴが奏でられ、フラメンコになると、華麗な衣装の踊り子が現れ、踊り始める。
三つ網に束ねられた髪、真っ赤な口紅に紅のバラの花をくわえてタップする若い女。
どうしたことでしょう、ハイジはその美貌に思わず一目惚れしてしまう。
まるで小犬のように心を奪われ眼を輝かせて・・・
そして大人の階段を登ろうとでもしているのだろうか・・・・
きっと、彼は今やドアーフであることすら忘れたのであろう・・・・・
ナリミーはそんなハイジにパスタを噴出しそうになるのを必死で飲み込んでゆく・・・
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
こうして夜は更けてゆく。
今夜は何処に泊まるのか未だ決まらぬままに。
ともすれば野宿だろう。
星空にも似た町灯りの中、平和な時に飲み込まれていった。
////////// To Be Continued ☆☆☆☆☆