第30章
VRツアーに参加したとある精神科医があちらの世界でドアーフってどういうこと?! 第30章
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Scene.42
旧知の仲の二人は夜更けまで語り合うのだった―――
余りにも話が長いので、疲れきったキャンは船長室のソファーで幽霊の事も忘れたかのようにいびきをかいているのだった。
フォー仙人はミケロッティ伯爵のかつての栄光を自慢げに聞かされるのだった。
そして話はフランクの思惑について続いていった。
「フランクの野望の一つは王家を乗っ取りこの世界の主となる事なのだが、実はもう一つ狙いがあるようなんだよ・・・それは彼の地である君達が償還される前の現実世界に蘇り、その世界でも統治しようという画策なのさ。二つの世界を又に駆けて牛耳ろうとしているのだ!いわば独裁者さ。」
ミケロッティの話に思わず背筋の凍るような気がするフォー仙人。
「ギーッ、バタンッ!た、たふけてぅえ~ぃ・・・」
いきなり船長室の扉が開かれるや、血相を変えてウメが飛び込んできた。物凄いその音にキャンも飛び起きる。
「フォー仙人、たふけてぇ~、あっ、いやそのぅ・・・」
ウメはそう言いながら目の前のミケロッティ伯爵を指差すやガタガタと小さく震えだす。
そして小声で何かを呟いて居るではないか。キャンがそっとそばによって耳を傾ける。すると、どうしたことかキャンまでも小刻みに震えだすではないかっ!
「ええと、お前さんたち一体何があったんだね?」
するとキャンが今度はフォー仙人の耳のそばで呟き始める。それを聞くやフォーは船長であるミケロッティを睨みつけるや切り出したのだった。
「お前さん、長い間会わないうちに性根が腐ってしまったようだね。私が探していた3人に一体何を食わしたのかね?」
その質問にミケロッティ伯爵の眉がピクリと動いたのをフォーは見逃さなかった。
「やれやれ・・・私も勘が鈍ったようだが、今のを見逃さなかったよ、フランク伯爵!」
「ふんっ!何故解った?カンペキに魔術で化けていたのだが流石だ。ようこそ諸君。でもね、あの3人はもう遅いよ。だって死肉をあんなに美味しそうに食っちまったんだからね。そのうち恐ろしいモンスターになってしまうのさ。」
「一体君は僕らをどうしたいというんだね?一体どうして我々の居場所がわかったんだね?」
「話は簡単さ、憑依中のネロ伯爵さんよ。君達が王家のところを目差して旅立った事を君の奥さん、クレソン夫人から聞き出したのさ。そして焼けた教会から焼け残った王家へのMAPをゲットしたので、この船で先回りさせてもらったのさ。どうだい、このアトラクション中々凝っているだろう、楽しんだかね?」
不敵な笑みを浮かべるミケロッティ扮するフランクをキッと睨むウメ。
「アンタって人は、本当にいけ好かないわねぇ!そんなんだから未だかつて独身なのよ。」
「なんだとぅっ!かつてのババアがピチピチのふりするなぁっ!まぁ、良かろう。しかしね、君達は此処にてThe Endだから悪しからず。もうすぐさっきの3人がモンスターになってこっちに向かっている頃だな。一応今回は3日のタイムリミットを設けてあるからそれまでにアンタたちを片付ける事にしよう。というか、私の魔術のリミットが3日しか持たないというのが本音なのだが・・・まぁ楽しんでってくれ。じゃあワシは休ませて貰うよ。おやすみ。」
そう言うとフランクは奥の部屋へと入っていくのだった。
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「ウメさんや、一体これからどうすれば良いかな?アンタ魔法使いじゃろ、何とかならないかい?」
「それがね、私の魔法は海の上では効果が無いようなのよ。ドラゴンに乗って海に到着してからなんだか効かなくって。だからただのキャピキャピよ。」
「え、じゃあ私とおんなじね、キャピッ!」
「何がキャピじゃ、この期に及んでまったく。そのうちあの3人がモンスターに豹変してやってくるぞ。どうする?」
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その頃徐々に豹変し始めた3人と宗谷が何やら話しこんでいる。
そして宗谷がナリミーに質問する。
「ナリミーさん、元精神課医としての知見から、本当にこの二人はモンスターになろうとしているのでしょうか?」
何やらナリミーが難しい顔になっていったが、何かを閃いたように口をポカンと空ける。
「そうか・・・この二人と私にどうやらあのフランクは何かしらの暗示をかけたのかもしれないな。一つの洗脳実験の要領だ。我々はフランクの話を鵜呑みにしているだけなのだが、実際は本当に美味しい料理を食べていたのであって、死肉など食べていないのかも知れない。ということはだ、我々はモンスターになる事はないんじゃないかな?少なくとも3日のタイムリミットを持ちこたえる事ができれば、この船の呪文から開放されて船外へ脱出する事もできよう。しかし、宗谷君が言っているこの船に幽閉されて出られない、って言うのは本当かね?実際に確認してみたかい?」
「いいえ。船外へ脱出する扉を確認する前に、お婆さまに止められるようにして何やらお婆さまに連れられてこちらのほうへと向かっていて・・・そしてVR通信マシーンが壊れて呆然としていたところに君達が現れたのです・・・」
「ん?それっておかしくないかい?なぜ寸でのところまで行っておきながら扉が開かない事を確認しなかったのかね?はたまたお婆さまは何をそんなに急いでいたのだろう?」
「それは・・・・もしかしたら僕が鳥のモモ肉をキッチンで食べた事に起因しているのでしょうか?」
「ん?君も何か食べたの?それって死肉じゃないのかい?で、美味しかった?」
「はい、とっても美味しゅう御座いましたが、何か?」
「へ?だから、美味しゅう御座いましたじゃなくて、何か違和感は?」
「は?と、仰いますと?」
「き、君って奴は、何でそんなもの食ったんだい?」
「だってうぇ~っ、お腹がすぅいていたんだもぅうん~ピ、ピェ~ンッ・・・」
宗谷を泣かせてしまった罪悪感からナリミーは彼を責めるのをやめてしまったのだった―――
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////////// To Be Continued ☆☆☆☆☆




