第3章
VRツアーに参加したとある精神科医があちらの世界でドアーフってどういうこと?! 第3章 作: 大丈生夫 (ダイジョウイクオ)
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Scene.05
ツアーコンダクター宗谷の姿は見えない。
確かに一緒にこの場所に来ている筈なのに・・・アナウンスの声は確かに宗谷のものだが。
此処に到着する前の会場と同じ配置の彼の席には誰も居ないまま。
成宮は辺りを見回す。
すると、ある変化に気付く。
どうしたことだろう、ツアーの皆が一様に、ゲームの世界に登場するあのドアーフみたいになっているではないか!
そして・・・なんと私も彼らと同様の格好に!
さらに・・・どうも手足の長さが縮んだような気さえする。
右隣の席は90代位の老婆が居る筈だったが、何故かうら若き女性がそこに腰を下ろしている。
傍らには先ほど老婆が持っていた杖があるのだが、彼女は何故か黒装束に身を包んでいる。
ともすればまるで魔法使いのようにも見えるが・・・
「あのう、さきほどここにお婆さんが居ましたが、ご存知ないですか?」
気になった様子の成宮はその女性に聞く。
「は、私のことかい?あらやだ、いつの間にこんな格好に・・・・」
との返答。
え?ということはこの女性は、あの老婆?
おおよそ比べる必要が無いほど、彼女には美貌が溢れている。
「あ、あんた?あのう、精神科の先生がここに居て・・・・」
「はい、私が成宮ですが。」
「だって、あんたどうみてもドアーフじゃないかい!」
「ええ、そのようで・・・」
周りの一同もどうやら変化に気が付き始めたようだ。
隣に居た若い女の子も悲鳴すら上げて突っ伏している。
するとVRヘッドの眼前の画面の表示が現れ始めた。
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~皆さん、それぞれ自己紹介を始めて下さい。~
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一同は途方に暮れながら一所に集まると、指令どおりに自己紹介を始める。
先ずは隣の女の子だったドアーフ。
「ワタシ、山口美鈴と申します。職業はCA。でも何故か今、ドアーフなんですぅ。」
次にその隣の若い男。
「ええと、オレは水野健太。こちらのCAの美鈴さんに誘われて参加しました。」
そしてその隣の男。
「自分は森村靖男。自衛隊に所属してます、はい。」
更に、その向こうの女性。
「もう、やだぁ!こんな格好。私は浅草ミレイです。いわゆる~キャバクラに勤めてて~、それにしても納得いかな~い、もうプンプ~ンッ!」
それから、隣の老婆。
「わたしゃ、今年で95歳になる、斉木ウメ子と申します。でも今は何だかピチピチなの。」
そして、私。
「えっと、精神科医をしてます成宮卓と申します。初参加です、ヨロシク。」
最期に老婆の隣の男。
「あ、オレは自宅警備員してます・・・三浦学徒です、はい。ってか、何でみんなドアーフ?」
やはり皆一様に自分の姿が気に入っていない様子。
ま、VRツアーの間だけ我慢すれば良いかと諦めているような感じ。
ツアーコンダクターの宗谷が居ないことに皆不思議に思っていると、次の指令が画面に表示される。
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Scene.06
~皆さん、自己紹介はお済みのようですね。さて、それでは本題に入りましょう。
まず、私はこのツアーの案内役として別の場所から指令を出す形とさせて頂きます。
皆さんにはこのツアーにおいて数々のミッションをこなして頂きます。
指令は全てこの画面上から行わせてもらいます。
皆さんの殆どの方はもうお気づきかと思いますがドアーフの役となります。
各地に旅して歴史的建造物の修復に当たってもらいます。
そして、お一方、95歳の斉木ウメ子さんには魔法使い役となってもらいます。
困ったときはウメ子さんにご相談ください。
皆さんは今日から一つのギルドとして旅をしながらミッションを乗り越えてもらいます。
皆さんの行い次第で最終目標は変化していきます。
そうそう、皆さんのお名前はこちらの世界では変更することになっております。
ま、このゲームの場合、呼びやすいのでそのほうが宜しいのかと。
まず、成宮卓先生は「ナリミー」、ウメ子お婆さんは「ウメ」、三浦学徒さんは「ハイジ」、浅草ミレイさんは「キャン」、森村靖男さんは「ソルジャー」、水野健太さんは「ケント」、山口美鈴さんは「リンリン」としましょう!
それではいよいよゲームの始まり始まりっ!
まずはファーストミッション!
あなた方にとって、本日から長旅が待っております。
そしてそのための乗り物が用意されています。
そこで、それをこの草原の大地から見つけ出していただきます!
ある意味トレジャーハントの要領ですね。
では、皆さん、楽しんでってね!バッハハーイ! ~
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なんですとぅ~?今日からオイラは「ナリミー」って・・・
そしてウメ子婆ちゃんは「ウメ」って、変わらんやんけ。
そしてキャバクラお姉さんのミレイさんが騒ぎ始める。
「何よ~、一体どゆこと~?キャンってなによ、鹿じゃあるまいし・・・」
「ははは、オレなんてソルジャーだぜっ、でも何か悪くない。」
「オマエ、美鈴だからリンリンって、プッ!パンダのCAか!」
「何よぉ~っ、イジワルゥ~、あんただってケントって柄?平たい顔しちゃって!」
「俺なんてハイジだよ、ひどくね?」
「え、可愛らしいジャン!」
それにしても宗谷の奴、一体どういうつもりなんだろうか。
自分だけ指令係を気取って俺らを旅させるなんて、まるで高みの見物だな。
こんなんじゃツアー代なんか払えんぞ。
ウメさんが魔法使いってどういうことなんだ?そしてトレジャーハント?で俺たちドアーフが歴史的建造物の修復?その先に一体何があるって言うんだい!ったく。
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「じゃ、使用が無いから皆で相談しようか。集まれ~っ。」
ソルジャーの呼びかけに皆が集まる。
「ところで、この大地の何処かに俺たちのツアーの乗り物が隠されているようだが、どうやって見つけようか。」
「しかし、辺り一面草っ原が続いているばかりで・・・」
「兎に角ここから一歩でも先に進まないと日が暮れちゃうし。」
「俺たちドアーフだから乗り物作ればいいんじゃね?」
「え、イチから作るの~、俺ヤダヨ。」
「あのぅ、つかぬ事お聞きしますが、私、魔法使いのようですが、どうやって魔法を使えば良いのか・・・」
「あっ、その手があったか!そうだよ、魔法で探せばいいんだよ!」
「そうね、宗谷さんも「困ったときはウメさんに聞け」って言ってたじゃない。」
「しかし、私はただの老婆でありまして・・・」
「あら、何言ってんのよ。もう過去の事は忘れなさいよ!あんたどっからみてもピチピチよ。」
「えへへ、ハイジ欲情しちゃいます~ぅ!」
「もうやだっ、ケントまでスケベな顔しちゃって。鼻の下が伸びてるぅ~」
「おいおい、此処はキャバクラか?」
「そんなこと言ってたら本当に日が沈んじゃうよ。それよりウメさん、貴方は杖を持っていましたよね?」
「ええ、確かここに・・・」
「じゃ、その杖を適当に振り回してみては?」
「ああ、そうだな。魔法使いは杖を上手に使って・・・」
するとウメさんは杖を持って振り回し始める。
何だかピチピチの容姿に似合わないヘッピリ腰でぐるぐる回す。
すると、どうしたことでしょう、此処にたどり着く時に座っていたリクライニングチェアーがオートバイに変わったのだ。
「よし、これで旅に出れるね!」
「やだぁ~私バイクなんて乗ったことなぁ~い。」
「大丈夫、僕が丁寧に教えるよ!手取り足取りね。」
「キャー、もうエッチィ~ッ」
////////// To Be Continued ☆☆☆☆☆