第23章
VRツアーに参加したとある精神科医があちらの世界でドアーフってどういうこと?! 第23章
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Scene.32
元自宅警備員ハイジはログアウトの方法について考え込むと、何か閃いたように言う。
「もしかして、王の依頼で我々が此処に償還されたということならば、フランクの権威を失墜させて王族の支配を復活すれば戻る事ができるかも知れない、と思いませんか?」
ウメが落ち込んでいる宗谷に声をかける。
「宗谷よ、どうなんだい?ワシもそれが得策と思うが・・・よし、それならば一度王家に打診してみては?これから王様に会いに行くってのは?」
ドアーフ一行が宗谷の顔を覗き込む。宗谷がコクリと頷く。
「よし、決まりじゃ!そうとなれば今夜は酒盛りじゃ!フォーよ、さぁありったけの酒を持っておいで!」
聞き耳を立てていたフォーではあったが、気付かぬふりして尚も寝たふりをかましている。が、ウメにひっぱたかれ飛び起きると不機嫌に口を尖がらせながら奥のワインセラーから両脇に抱え込んできたとっておきのビンテージをみんなに振舞う。
「うん、こりゃ芳醇ねぇ。このワイン、産地は何処なの?」
「フランクんとこのブドウ畑の。」
「なんですって・・・みんな、飲むのをおやめ!」
「だって使用が無いですよ、ワイン醸造の権利はフランクが牛耳ってるので・・・」
「なんてこった。」
それでもハイジは呑み続けている。
伯爵夫人クレソン女史が言う。
「もともとは此処「ミラージュ」がワインの産地として名高かったので御座いますが、あのドラゴンの奇襲でこの町の財産とも言うべきブドウ畑は全て焼き払われてしまいました・・・しかし、このワイン、何だか懐かしい味がするわね。皆さん、昔の事は気になさらないで、今夜は呑みましょうよ!」
クレソン女史に促されるように宴は深夜まで続いていった―――
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明くる朝、酔いつぶれた一行はクレソン女史に起こされる。
「さぁ、皆さん。ごはんですよ。」
二日酔いの面々は言われるがままに食卓に就く。
「さぁ本日のモーニングMENUは~~~ポトフと舌平目のムニエル、クラブサンドウィッチでございます~!」
フォーの料理とはレベルが違うぞとみんな興味津々。
食卓に豊かな香りが漂う~~~
皆が極上の朝食にご満悦の様子でしばしマッタリする。
ハイジが宗谷に問いかける。
「それで、王家の居城はここから遠いの?」
「ええ、それはそれは・・・」
「で、どれ位遠いの?」
「この大陸の遥か海の果てにあります。船で何週間も掛かりますよ。」
それを聞いていた仙人フォーが今日も憑依が開始されはじめた様子で、ネロ伯爵となって颯爽として話しはじめる。
「そうですねぇ、かつて私が若い頃に王家にお招きに預かって相棒のドラゴン・パトラッシュの背に乗って海を越えて長い旅に出たのを思い出しますねぇ。遥か何万海里もの距離でしたが、パトラッシュも若かったから苦にもなりませんでしたよ―――」
「地図はありますか?」
「ああ、クレソンが持っているはずだよ。な、オマエ。」
クレソンは思い出したように言う。
「しかしそれは・・・あの火事を出した教会の中にありまして・・・」
「何?それは誠か・・・ならばパトラッシュの記憶だけが頼りか。」
ウメが宗谷に聞く。
「お前もその昔、王家に行ったことがあるんだろ、地図なんか要らないんじゃないか?」
宗谷が首を横に振る。
「まったく相変わらず出来が悪いんだねぇ・・・ま、何とかなるさ!さぁ出発しようか。」
ドアーフ一行は長い旅路に向け食料や荷物の準備に掛かる。キャンはワインセラーから持ち運べるだけワインをカバンにつめ込む。ソルジャーは店の倉庫に吊るさっているスモークベーコンを、ハイジはパンとチーズを詰め込んだ。
クレソン女史は王様への手紙をしたため始める。
「私はこの町の安全を守る義務がありますのでご一緒できませんが、せめてもの思いを手紙にしたためますので、お渡しい願います。」
ハイジがクレソンにうなずくと衣類をそそくさとまとめ始める。
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一同は支度を終えるとハイジを先頭に「ミラージュ公園」へと向かった。
公園では大きな図体のドラゴン・パトラッシュが地鳴りのようないびきをかいている。
その脇では昨日飛んで行ってしまった次に大きなトンペイとドラゴンちゃんヒロトとメグミが遊んでいた。
「それでは皆さん、大荷物をパトラッシュにくくりつけて、皆さんはそれぞれのドラゴンに分乗して下さい。」
ハイジはパトラッシュに荷物をくくりつける終えると、ネロ伯爵憑依中の仙人フォーに案内を任せる。フォーはジジイのくせに颯爽とパトラッシュの荷物の上に飛び乗った。皆もそれぞれ分乗する。
クレソン女史が手紙を書き終えて遅れて到着するやハイジに手渡す。
「それでは、ご無事でありますように・・・皆さん、お元気でね。」
クレソンの言葉に一抹の寂しさを憶える一行。
フォーの合図でパトラッシュがバタバタと砂煙を巻き上げながら離陸し始める。
その砂で目潰しを食らいながらもドアーフ一行も後に続く。
澄み切った晴れ渡る秋空の中へと4頭のドラゴンたちは朝陽に照らされながら一筋に連なって、王家の住む城を目指して旅立ってゆくのだった――――
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////////// To Be Continued ☆☆☆☆☆




