第22章
VRツアーに参加したとある精神科医があちらの世界でドアーフってどういうこと?! 第22章
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Scene.31
その頃、ネロ伯爵が憑依したままのフォー仙人は大きなドラゴン・トンペイの背に乗って「ミラージュ市街」の自分のバルを目指していた。まるっきり憑依されきったフォーは思う。
私はあの戦渦が治まって暫くして老衰のためにこの世を去ったのだ。
フランク率いるドラゴンの軍勢の猛攻により大きな傷を追ったドラゴン・パトラッシュはその後も「ミラージュ市街」再建のため献身的に働いていたのだったが、後遺症の根は深く間もなくして彼もこの世を去ったのだった―――
私にとってフランクに対する敵意は未だ治まってはいない。志半ばにして私は旅立ったのだが、彼に対する怨念は続いている。
「ミラージュ市街」は彼の脅威から逃れたものの、その後フランクは各地で戦いを繰り広げ急速に領土を拡大していった。今ではそんな事も人々は忘れてしまったのか、プランテーションを成功させ莫大な財産を築いた賢者として人々から指示されているようだが、その実体とは残虐な略奪から成り立ったといえる。奴を赦しておくわけにはいかない!
フォーの横顔は怒りに満ちた伯爵そのものと化していったのだった。
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フォーがミラージュ公園上空に差しかかると、何やら2頭のドラゴンちゃんが曲芸を繰り広げているではないか!
それは先日見たドラゴン・ヒロトとメグミだった。なんだ、どこに遊びに行ってたんだか。
ゆっくりとフォーの乗るドラゴン・トンペイが大きな翼をバタつかせながら降下すると、黒山の人だかりが慌てて広場を空けはじめた。そしていつもの如く「ドスンッ!」とヘタクソに着地すると、その振動でフォーがすっ飛んだ。辺りの観客もその振動で倒れこみ、公園はパニック状態となる。
「やぁ、すまんすまん。トンペイのやつが粗相しまして・・・トホホ。」
先ほどまでのネロ伯爵の威厳も同時に吹っ飛んだフォー仙人の表情に民衆が笑う。
再びドラゴンちゃんの曲芸が始まると、ひとまずフォーもそこに座って眺める事にする。
するとフォー仙人の肩を誰かが叩く。
「お久しぶりです、お元気そうで。」
それはかつてのVRツアコン宗谷であった。どうやら何かにすっかり憑依でもされたような悩ましいその表情に只ならぬ不安を感じる。
「あんた、一体どうしてここに?」
「ええ、実は私もとうとうこの世界に召還されてしまったようでして・・・これまでVRのログアウトでいつでも現世に帰還できると簡単に考えていましたが、どうやら機械の故障か何かでコントロール不能となってしまったのです。」
「なに?お主は何をコントロールしていたというのだ?」
「そのぅ、ツアー一行たちをです。彼らは私の作ったプログラムによってシナリオどおりにミッションをこなす予定だったのです。ところが・・・」
「ミッションだと?一体君は何が目的なんだい?」
「ええ、話せば長い話になるのですが・・・」
「よし、ならばワシのバルで聞こうではないか。さぁ、こちらへ。」
再会した二人はフォーの店に向かうのであった―――
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「あれ、あそこに見えるのはトンペイじゃない?ヒロトとメグミまでいるじゃないの!」
現世でキャバ嬢だったキャンがミラージュ公園にドラゴンがいるのを発見する。
パトラッシュの背中に乗ったドアーフ達が眼下を見降ろす。
公園ではまたもや更に大きなドラゴンが現れた事に危険を感じたのか、黒山の観客たちは慌てて走り去っていった。パトラッシュがバタバタと羽音を轟かせながら降下するや、土煙が立ち上る。砂にまかれたドラゴンたちも慌てて飛んでいってしまった!
パトラッシュは何食わぬ素振りで「ドスンッ!」と着地すると、その衝撃に一同が公園の端っこまですっ飛んでいった。
「もう~何よぅ~っ、もうちょっとそおっと降りれないのぅ~、キャピッ!」
キャンは弾き飛ばされながらも、相変わらずキャピキャピ感を出しまくる。
ウメは例の如く凄まじくすっ飛ばされたお陰で、木の枝にのっかっているではないか!
「ウヘェ~・・・だれかおろしてうぇ~・・・・」
ソルジャがその大木を蹴っ飛ばすや、ウメが無事落下する。
ナリミーが辺りを見回しフォーを探す。
「フォーのドラゴンがここにいるって事はつまり、フォーはこの近くにいるのだろう。するとやはりあの店か?」
今度はCA.リンリンと彼氏のケントが連れ立って先導してゆく。
やがてフォーの前のバルまで辿りつくとドアを開け放った。
カウンターにはフォーと、なんとツアコン宗谷までいるではないか!
二人はすでに仲良く酔いどれ天使であった。
キャンが宗谷に食いかかる。
「あんたねぇ、いったいどゆこと~!私達をフランクの元から助け出しに来たと思ったら、いざとなったら自分だけとんずらしちゃって!」
「ああ、あの時はすまなかったね、ゴメン。」
今度はパトラッシュを蘇らせた魔法使いウメが問い詰める。
「宗谷、アンタは私の孫だろ?一体このババァでキャピキャピなこの女子を差し置いて何事なんだい?アンタが私達をこのツアーに償還させといて、挙句の果てにミッションをさせたかと思ったらほったらかし・・・本当に昔っから出来の悪い子ねぇ。」
「ええウメ婆さん、その通りかも知れません・・・なかなかうまく行かなくて。私が皆さんをツアーに参加させたいきさつは王家からの依頼でありました。しかし「ノイシュバンシュタイン城」城主のフランクが王家よりも強大な権力によって牛耳り始めた事で独裁化が進んでいったのであります。パッと見フランクは農業開拓のビジネスでの成功者とされておりますが、実のところそれは世界中の領地を略奪したことで築き上げた理不尽なものだったのです。ここにおります仙人フォーの猛特訓により身につけた「白魔術」を使って「悪い気」を吹き込んだモンスターたちを操り、理不尽な戦いによって民衆から奪った領土をそのように変えただけなのです。いわば住民達は皆んなフランクの奴隷なのです。このままではいけないと危惧した国王は親族である私にフランク家から領土を皆に返還させるために召還なさったのであります。私一人の力ではそれも無理な話でしたので、人選させていただいた皆さんにミッションという形でお手伝いいただこうとこの世界に招き入れたのであります・・・しかし、」
「しかし、何だね?」
「はぁ、実はこのVRツアーは有事の際に私のコントロールによってログアウトできるようなシステムを構築していたのですが、つい先日からメカトラブルに見舞われたようでそれが不可能な状況となった次第でして・・・」
「ということは、つまり・・・現世に帰れないと?」
それを聞いた元自宅警備員のハイジが切り出す。
「たしか、フォーさんの話だとミッションをこなした暁に手に入れた「祈り」のパワーをによって帰還できると聞いていましたが。」
酔いつぶれていたフォーがすっかりネロ伯爵の憑依が抜けた様子で話し始める。
「うん、そういったかも知れぬが、ありゃワシの勘違いじゃ、ヒヒヒ。」
「なんですとぅ~」
話の流れに堪忍袋の緒が切れた様子のナリミー。
「私は宗谷君の精神化医として彼の治療の一環としてツアーに参加しましたが、どうやら彼の精神状態は手遅れのようですね。もしかして始めからログアウトなんて出来ない事をわかっていて皆を連れてきたんじゃないですかね?」
フォーが宗谷の代わりにその事に対して答える。
「いいえ、帰還する術など幾らでも御座いますよ。但し、それは貴方方が見つけるしか術はないのですから。確かに強引に皆さんを連れてきたのは宗谷君の無責任さによるものでしょう。多分ビジネスとしてね。そしてログアウトの機能も本当に故障したのでしょう。しかし、私も此処に召還された身だから言えることなのですが、本気で帰りたいと思えばいつでも帰れると思います。最も私にとってはこちらの世界のほうがとても居心地が良いのでして帰る気などさらさら御座いませんが。」
キャンが間に入って話し出す。
「みなさ~ん、騙されてはいけませんよぅ!このフォーさんは今までに何回私達を騙したでしょうか?ほら、ナリミーの懐から金貨を奪って逃走した事、忘れてはいませんか?」
皆がフォーを見やると、酔いつぶれて寝たふりを始める。
伯爵夫人・クレソンがフォローし始めるように言う。
「皆さん、フォーさんは悪く御座いません。立場上フランクの下で働いてはいましたが、実のところフランクが王家を乗っ取ろうとしているのが全ての悪の根源なのです。我々のこの「ミラージュ市街」もかつてフランク家によって破壊されましたから。」
元自宅警備員のハイジが切り出す。
「やはりログアウトの方法は我々で見つけるしかなさそうですね。」
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////////// To Be Continued ☆☆☆☆☆




