第21章
VRツアーに参加したとある精神科医があちらの世界でドアーフってどういうこと?! 第21章
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Scene.30
すっかり昼寝をしてしまったドアーフ達は目覚めると、皆辺りを見回す。
どうやら我々は無事のようだ、と口々に言う。そして呆然とする。
ソルジャーが話し始める。
「今な、オレ変な夢見ちまったんだが、それがこの「ミラージュ市街」が戦火にまかれて大変な事になってたんだよ・・・オレちびりそうだった。」
それを聞いたハイジが目を丸くする。
「オレも何だかリアルな夢を見たんだが・・・それで住民が皆んなこの白亜の城を目指して避難し始めたんだよ。あれ?ソルジャーの夢とかぶってる?」
その言葉にドアーフ一同がざわめく。ナリミーが話し始める。
「私も全く同じ状況の夢であって・・・もしかしてその様子を知ったネロ伯爵がここにいるドラゴン・パトラッシュに乗って救助に向かう、そうだったかい?」
一同がうなずく。不思議な事に皆んな同じ夢を見たようだ―――
思わず鳥肌が立つ一一同。
「これは何かの暗示かも知れないな。」
ソルジャーが神妙な顔つきで口走る。
ウメがキョロキョロと辺りを見回す。
「あれ?フォーは何処へ行ったのかしら?さっきまで一緒だったのに。」
すると食事の片づけを終えたクレソン女史が戻ってきた。
「皆さんお目覚めね。すっかりお疲れのようで。」
「あのー、仙人フォーを知りませんか?」
「ええ、先ほどドラゴンに乗って飛んでいきましたよ。何やら修復の道具を買い出しに行くと仰ってましたが。」
「だけど、あいつお金持ってたっけ?フランクのところのバイト代はナリミーに全部渡していたわよね?」
ナリミーが上着の懐をまさぐる。
「な、無い!」
どうやら懐に入れていた金貨の巾着袋が消えている様子。
「ちょっとぉ~、それってどういうこと?ちゃんと探しなさいよ!」
「確かに此処に入れたはず・・・あ、もしかしてフォーが盗んだ?」
一同はようやくフォーの正体を知るのであった。無給の契約を交わして私達をこの教会に預けて金貨を持ち去ってトンずらしてしまった事を―――
「どうする?こうしてはいられない、追いかけよう。」
「だけど契約では、このドラゴンが生き返るまでは修復作業を続けなければならないし。」
彼らの様子を伺っていたクレソン女史が状況を察する。
「そうなの・・・フォー仙人って酷い人ね。でも先ほどの様子だとまだネロ伯爵が憑依したままだったわよ。話し方で解ったの。」
ウメがしばし考え込む。
「実は先ほど私達はとてもリアルな夢を見ました。それというのも「ミラージュ市街」が戦渦にあっていた頃の様子でして・・・そしてネロ伯爵はドラゴンに乗って住民の救助に向かったのでした。どうやら伯爵が憑依したフォー仙人がドラゴンに乗って飛んでいったのも何か目的があってのことではないでしょうか。」
ウメは立ち上がるとドラゴン・パトラッシュに向かって杖を振り回しながら何やら呪文を唱え始める。すると教会が揺れ始めた―――
「あ、地震か?」
揺れは更に酷くなっていった。一同は慌ててテーブルの下に隠れる。火のともる蜀台が倒れ始め、床に敷かれた段通の絨毯に燃え広がる。クレソンが慌てて火を消しにかかった。
どうしたことかそれにも動じない様子でウメは呪文を唱え続けている・・・
次の瞬間、ヨロヨロと剥製のドラゴンが大きく揺れ始めると、眼から物凄い勢いで閃光が放たれたではないかっ!辺り一面がその光で照らされると皆が眼を眩まされる。
「さ、パトラッシュ、起きたかい?」
ウメがそう言うや、パトラッシュが大きなあくびを放った。そのせいで皆が部屋の隅まで吹っ飛んだではないかっ!!
とうとう火の勢いは辺り一面に燃え広がってしまうと、ウメが皆に合図する。
「さ、みんな。早くパトラッシュの背中に乗りなさいっ!クレソン女史、約束は守りましたので契約は完了ですよね?」
「ええと、教会の修繕の予定でしたが・・・ドラゴンが蘇ったし、状況が状況ですので使用がありませんわ。宜しいでしょう!」
燃え盛る炎の中はまるで先ほどの戦渦を思わせる惨状となって行った。
皆が巨大なドラゴン・パトラッシュの背中にまたがる。クレソン女史も思わず飛び乗る。
パトラッシュは勢いよく大きな翼をはためかせながらステンドグラスの教会の窓目掛けて飛び立ったではないか!
「あ、危ないっ~、ガッシャーン!!」
みんなを乗せたパトラッシュは燃え盛る教会を脱出し空高く飛び立ってゆくのであった。
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VRツアコン宗谷はその様子を固唾を呑んで見守っていた――何ということだ、あの剥製のドラゴンが目覚めたではないか!これは私の辞書には無かったプログラムだが・・・すると、既にVRヘッドによるミッションは私の手から離れてしまっているという意味なのか。やはり本当にこの異世界に私も正式に召還されてしまったという事だろうか!
動揺する宗谷もとうとう霊に憑依されたようになると、三ツ星ホテルのスイートルーム最上階から燃え盛る丘の上の教会をじっと黙ったまま見つめ続けるほか無かったのだった。
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////////// To Be Continued ☆☆☆☆☆




