第20章
VRツアーに参加したとある精神科医があちらの世界でドアーフってどういうこと?! 第20章
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Scene.29
ドアーフ一行は芝生の上で倒れている仙人フォーを担ぎ上げる。
そして伯爵夫人・クレソン女史に案内されて教会の中へと入っていった。
「なんだか薄気味悪いなぁ、この教会!」
ハイジがチビリそうになりながら蜀台に灯をともしたクレソンの後を追う。
真っ暗な教会内部の床が今にも抜け落ちそうにギシギシときしむ。蜀台の光を先へと伸ばしながら細い廊下を奥へと進むクレソンが突き当たりの扉の前まで来ると、木戸をゆっくりと開け放つ。大分前から使われていなかったのだろう、あたりはくもの巣だらけ。それを掻き分けながら一行は教会のホールに入る。クレソンが所々にあるランプに灯をともしていくとようやく全体像が現れた。
「おお、これは・・・」
一行は教会の広いホールの祭壇に立つ大きなドラゴンの剥製に身の毛もよだつ思いで震え上がった。
そ奴は高い天井までそそり立ち、こちらを見下ろしていた。まるで一行に襲い掛からんばかりに・・・・
倒れたフォーをドラゴンの足元の床に降ろす。
クレソンが話し始める。
「このドラゴンはね、ドラゴンたちの奇襲で戦火に見舞われたミラージュ市街を救った守り神としてここに安置しているのです。このドラゴン一頭が敵のドラゴンをやっつけたおかげで、今の平和が訪れたのでありました。」
そう言い残すと十字を切ってドラゴンにお祈りをする。
一行も同じく十字を切る。
すると失神していたフォーがむっくりと起き上がる。
「霊が、霊が・・・・」
なにやらおびえた様子でドラゴンを見上げるフォー。
一心不乱で巨大なドラゴンの足にすがりついた・・・
「霊が・・・おお、我がドラゴン・パトラッシュよ、嗚呼!」
一行はフォーの様子を伺っている。
クレソンが再び口を開く。
「ほら、先ほどフォーさんが言っていた「例の奴」、そう「霊」の奴のお出ましね!
どうやらフォーさんはこのドラゴン・パトラッシュの飼い主である私の亭主・ネロ伯爵に憑依されてしまったようですわねぇ、オホホホ~!」
教会のホールに不気味に響くクレソン女史の笑い声に恐怖を憶え飛び上がる一行。
とうとうハイジはちびってしまったのであった―――
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その日から早速教会の修復は始まった。
ネロ伯爵と化した仙人フォーは、まるで勝手知ったるようにドアーフ一行に指示を出す。
まず一行はくもの巣だらけのホールの掃除から始める。
その様子を見守っていたクレソンは安心したのかフォーにまかせると教会を後にした。
「ほらっ、こっちも綺麗にするんだ!」
「もう何よっ!偉そうに。あんた一体どうしちゃったの?」
ウメが憑依されてしまったフォーに文句を言う。
「いいから働け。ちゃんと契約したんだからな。」
「何よ、契約の内容も聞かされていないし、一体どうなってんの?」
「ん?おおそうか、ならば説明するとしよう。契約書の内容は~~~~
君達ドアーフ一行は我が教会の修復を担当し、ドラゴン・パトラッシュが再び目覚める時に備えて無給で任務を遂行する。勿論生活に必要な費用はこちらで負担する。ドラゴンが目覚めるまでは永遠に此処で雇用される。宜しいかな?」
それを聞くやドアーフ一行は唖然とする。
そしてその契約書にはフォーのサインが記されていたのだった。
「あんた、何でこんな契約むすんだのよ~!私達に相談も無く。」
「ん、別に君達は暇をもてあましてるんだろう?宿泊と食事も付いてるんだから良いではないか。何か問題でも?」
呆れた面々は納得の行かぬ様子でふくれっ面となる。
すっかり掃除する気もうせてしまった。
すると再びクレソン女史が数人の召使いを引き連れて戻ってきた。召使い達はそれぞれお盆に料理を一杯持参していた。
「はぁ~い、お・ま・た・せ~!」
相変わらずふくれっ面の一行の様子に構うでもなく、テーブルに料理の皿を広げてゆく。
「では、ランチにしましょう、ね、アナタ!」
クレソンはネロ伯爵に憑依されたフォーにそう告げるとテーブルに着く。一行もそれに従う。クレソンは食事のお祈りをし始める。
骨付きの大きな鳥のモモ肉に例の如くソルジャーはかぶりつき始める。
「ん、うんめぇ~っ」
「そうね、美味しいね。」
食べ物に弱いドアーフ達はついついクレソンの策略にはまって行くのであった・・・
一同は満腹になったことで睡魔に襲われてゆく。そしていつの間にかそこ此処で昼寝をし始める―――
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「大変だ!もう「ミラージュ市街」まで数百頭のドラゴンたちが押し寄せてきているぞ、皆んな避難しろ!」
「避難って言っても、一体何処へ?」
「そうだ、あの高台の教会へ向かうんだ。早く、早くっ!」
「ダメです、もうドラゴンはそこまで来ています、嗚呼、遠くで炎が立ち上っている。どうやらドラゴンたちが一斉に火を噴いているようす・・・このままでは町じゅうが炎に巻かれてしまいます、助けてぇ~っ」
「何とかならないの?うちのドラゴンたちは一体何処へ行ったの?」
「ドラゴンに恐れをなして逃げ出してしまったのさ。あんなに良くしてやったのに。」
「もしかしたらうちのも、あの軍勢に参加しているのかも知れない・・・どこで育て方を間違ってしまったのか。」
「いいや、しょせんドラゴンなんて飼いならせないものさ。あのブリーダーの連中に騙されたのさ。最初は小さくて可愛いもんだからついつい飼っちゃったがね。」
ドラゴン軍勢の猛攻により街は焼き払われてゆく。空が煙で黒く覆われてゆく―――
ミラージュの住民達は公園で寄り添いながら助けを待っていた。そして目前に迫る敵に煽られるように小走りに丘の上に佇む教会へと向かってゆく。
続々と押し寄せるドラゴンの軍勢。
「よし、パトラッシュ。行こうか。」
状況を見据えていたネロ伯爵は意を決した面持ちでパトラッシュにまたがると、炎に煙る市街へと飛んでいった―――
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VRツアコン宗谷はクレソン女史とフォー仙人の行動がプログラムどおりに進行していない事に驚きを隠せずにいた。一体どこで間違ってしまったのか、これでは私のコントロール下での統治が出来なくなってしまうではないか――――宗谷も何かに憑依されたように三ツ星ホテルのスイートルーム最上階から丘の上の白亜の宮殿を見上げるのであった。
「これは、何かの暗示なのか?どうやらお遊びではなくなってきたようだ。」
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////////// To Be Continued ☆☆☆☆☆




