第19章
VRツアーに参加したとある精神科医があちらの世界でドアーフってどういうこと?! 第19章
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Scene.28
翌朝、仙人フォーの叩くけたたましい鐘の音でドアーフ達は目覚める。
「なんだよぅ、こんなに朝早くから!未だお日様が昇っていないじゃないか。」
ハイジがぐずるようにフォーに文句を言う。
「お前達、職人と言うものは朝が早いものじゃ。朝食はもう出来ている。さぁ早く支度をしろ!」
一同は眠い眼を擦りながら階下へと降りてゆく。
階段の途中から朝飯のにおいが漂ってくる。
「わぁ、いい匂い!キャピッ!」
キャンは朝からハイテンションで階段を駆け下ると、既にカウンターにはモーニングが並べられていた。
「エヘン、本日のモーニングのMENUは・・・フレンチトーストにカリカリベーコンエッグ、スープはパンプキンとなりますっ!」
何故か料理の腕に自信のあるフォーがMENUを読み上げるのが先か、既に頭の天然パーマがくしゃくしゃのままのソルジャーは誰よりも早くガッツいているのだった・・・・
食事後のブラックコーヒーが一同に注がれてゆく。
まったりし始めた頃、準備を整えたフォーが
「さ、皆の衆、いざ伯爵夫人邸へ、レッツゴー!」
そういい残すと外へと出て行ってしまった。
一同もいそいそと後を追う。
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店の前からドラゴンが曲芸ショーを繰り広げていた公園へと向かう。
昨日飛んでいってしまったドラゴンちゃん達はそこには居らず、もう一回り大きなドラゴンが未だいびきをかきながら待機していた。
「オイオイ、起きんかっ!ねぼすけめ!」
フォーは持っていたステッキで大きなドラゴンを叩き起こした。
「ン?ファ~ン!」
大きなあくびを一つすると、一同に吹きかける。
その威力に危うく吹き飛ばされるところだった。
「紹介しよう、コイツはオイラの飼いドラゴンのトンペイじゃ!」
なんだか変てこな名前に全員吹き出す。
そんなこんなで一同は皆ドラゴンの背中にまたがると、ゆっくりとパタパタ羽音を響かせながらドラゴンは伯爵夫人の住む城へと向かうこととなったのだ。
秋空は天高く澄み切っていた。日が昇るころ、遠くの空まで雲ひとつ無い快晴となった。
眼下に広がる赤い屋根の家々が所狭しと丘の上へと密集している。
丘の最上部にひときわ目立つ白亜の豪邸が見える。ドラゴンはそこを目差して遊覧飛行を開始する。
「ナリミー、夕べフォーから貰った金貨はちゃんと持っている?」
「ええ、ほら此処に。」
上着の懐から大事そうに巾着袋を取り出してみせる。
「でもさぁ、あんだけバイト代あるんだからわざわざ仕事しなくたって当分ツアーできるじゃないのよ!」
CA.リンリンがふくれっ面で文句を言う。
「だめだめ、お前達は大食漢なんだから、アッというまに使い果たしてしまうぞ。」
フォーがクスクス笑いながらドラゴンの手綱を叩く。
「ソルジャーが食べすぎなのよ、ね!」
夕べステーキを1kg食べたのを棚においてキャンが言う。
「ヘーン、お前だって一緒だろっ!」
ソルジャーが口先を尖らせて見せる。一同もくすくすと笑う。
やがて白亜の大宮殿が眼前に迫る。上空から見渡すそれは彼の「ノイシュバンシュタイン城」の規模よりも更に一回り大きな城であった。一同はその迫力に圧倒される。
やがてゆるゆると羽をパタつかせながらドラゴンは丘の上の広い芝生の上にドスンと着地した。一同がその反動で四方に飛び散る。
「ん、もう~、どうしてドラゴンって着地がヘタクソなのよぅ~」
CA,リンリンが打ったケツをさすりながら身を起こす。
ぴちぴちババァのウメが一番遠くまで吹っ飛んでいて伸びていた。
一同が救援に向かう。
「お~、ふぅ~、此処はどこ、私はだぁれ?」
頭を打ったわけでもないのにとぼけたふりをするババァに一同が爆笑する。
「それだけ元気なら大丈夫!さぁて、それでは伯爵夫人のところに参ろう。」
一同は目の前の白亜の城の門へと向かう。
「なぁに?さっき凄い音しなかった?も〜ぅ、地震かと思っちゃったわ。」
こちらが声をかける前に門から飛び出してきた伯爵夫人・クレソン女史が一同を城郭へと向かい入れた。
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「それならば話が早い。では契約と言うことで。」
フォーはとんとん拍子にクレソン女史と契約を結んだ。
その詳細は一同には伝えられなかった。
この日一同は広大な敷地の白亜の城を見学することとなった。
それだけでも相当な距離を歩く羽目になり、ウメは足に豆が出来た。
「あたしゃ、もう歩けんよ!まったくババァを連れてこんなに歩かすなんて、人の悪い方々ね。」
ウメが足の豆をかばって歩きながらブツブツ言う。
「何言ってるんですか、そんなにピチピチなケツしちゃって!この中でも若すぎなほうですよ。」
ハイジがウメを馬鹿にするや、ウメが反撃に出る。
「オマエさん若いからって私を馬鹿にすると、お仕置きに魔法をかけてしまうだぁよ!」
ウメの言葉にハイジは少しだけチビッた。
広い敷地の端のほうまで辿りついた一同は、なにやら教会のような塔にたどり着く。
未亡人クレソン女史が話し始める。
「実はね、今日から貴方々に修復していただくのはこちらの私設の教会になります。
もうかれこれ私の主人である公爵がこの城を築城する200年ほど前からこの教会は此処に御座いまして、私の記憶では数度のドラゴンによる戦火に合われたミラージュの町の人々を供養する意味合いで建立されたそうです。予断ですが・・・「出る」というウワサもちらほら。」
仙人フォーがその言葉を不思議に思う。
「その、「出る」っていうと、何が?」
「ですから・・・例のやつです。」
「なるほど。それで例のやつって言うと、アレでござるか?」
「そうねぇ・・・その、アレです。」
「アレっていうと、例のやつですよねぇ。」
「そうです、「霊」のそれで御座いますが、何か?」
フォーは何かを理解した様子でそのままそこに突っ伏してしまったのだった―――
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VRツアコン宗谷はクレソン女史とフォー仙人の会話の一部始終をウメのVRヘッドから送られてくる映像により視聴していた。
しかし、その「霊」が出るという状況に関しては宗谷が設定したプログラムの中には存在していなかったものだった。
宗谷は何かVRヘッドが機械的なトラブルに見舞われたのではないかと、半ば不安に駆られながらも、この件はスルーすることにしたのだった。その後このことが大事になるとは誰も知らずに――――
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////////// To Be Continued ☆☆☆☆☆




