第15章
VRツアーに参加したとある精神科医があちらの世界でドアーフってどういうこと?! 第15章
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Scene.23
宗谷の急な失踪に困惑を隠せないでいる一同。
誰しも無言のまま、暫くの間居室には静寂が訪れる。
宗谷は我々をとうとう裏切ったのだった。
フランクも仙人フォーにおいては、もともと胡散臭かったから無理も無かったが、まさか宗谷までが・・・一同に不安がこみ上げる。
居室に我々を置き去りにすると退出し、しかも外から鍵までかけて我々をここに閉じ込めた宗谷、ウメはそんな孫息子に怒りを隠せずにいるのだった。
「宗谷め!よりにもよってこのピチピチな老いぼれ婆様を置き去りにしやがって!一体どういう気なんだ、あんなに可愛いがってやったってのに。もう、容赦しないよっ!」
何かのスイッチが入ったのであろうか、大声でわめきたてる悔しそうでピチピチのかつてのババアは、どうしたことでしょう何やら呪文のようなものを唱え始めた。
そういえば、こちらの世界ではウメさんは魔法使いでもあったのだったな。
「ウンデキャクンデナ、カーナヴィッヒ、ウントゥモストモ、クモガクレィ、ヤットコスットコ、ハンディバル、ハンダカチョダカゥ、シュートミマルロゥッヒ、ン~ヤッ!」
すると居室の両開きの窓が一斉に勢いよく開け放たれたではないかっ。
咄嗟に元精神課医のナリミーが眼鏡越しに眼を丸くする。
「こ、これは~!!」
その窓外の景色が先ほどまでの青空を真っ黒に淀ませ始めたかと思うと、いきなり突風が居室に入り込んでくる。そして急速に空が真っ暗闇になるや稲光が起こり始めるではないか!
「ゴロゥゴロンッ、ズッドーンンッ!」
けたたましい轟音と光、落雷が響き渡る。
そして一斉に竜巻までが巻き起こり始めた―――
一体あの老婆は何をしでかしたのであろうか・・・
「ヒューッ、ズドーン!ゴロゴロロ~ドカーンッ!!!」
一同は嵐の真っ只中で窓外からの轟音と豪雨の吹き込みに気がきでならない。
老婆の呪文はいつまでも続いている~~~~~
ナリミーがたまらず老婆に問いかけた。
「あ、あのぅ・・・チョットやりすぎでは?」
「エィッ!黙っておいで!宗谷の野朗ゥ!これからが本番さ、覚悟シィ~ッ!う~わっはっはっあ~~っ!!」
とうとうババアは気がふれたようだ。
ドアーフ一同は成す術もなくぽかんとよだれが垂れんばかりに口を開けて見守る。
こうなったらあの老婆を止めることなど誰も出来ない、と悟ったのだった。
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Scene.24
どれくらいの間壊れていたのだろう・・・どうやらババアの気が治まったようだ。
さすがにドアーフ達も酷い状況に疲れ果てていた。
明日をも見えない我々の行く末、おさまった嵐の窓辺からただそよそよと風が流れ込んでいる。一体我々はこの世界でどうやって生活して行けばいいのだろう。不安が残る。
そして台風一過のような空が次第に明るい日差しを携え始めた。
「さ、みなさん。参りましょう。」
そう告げる老婆の横顔には、先ほどの鬼の形相は消えていた。
CAリンリンが老婆に問いかける。
「参りましょうって、どちらに?」
「そうね、ほら窓の外で彼らはお待ちよ!」
リンリンの問いかけに老婆が問いかける。
元CAリンリンは恐る恐る窓越しへ近づくと眼下を見下ろす。
すると・・・
「ギャーッ!」
リンリンが窓辺から飛びのく。
その叫びに一同がギョットする。
そして何やら大きな二つの顔がニョキッとこちらを覗き込んだ!
「オオッ!ナント!」
それは見覚えのある2頭のモンスターだった。
そう、この間完成した門柱そっくりのモンスターがクリッとした眼差しでのぞいているではないか。先日の恐ろしい青光りをした眼光とは違い、おっとりとした様子で。
キャンが窓辺に恐る恐る近寄る。
「ウメさん、これってどゆことぅ~」
「今日から新たな旅が始まります!この子達が道先案内をしてくれますよ。」
「ということは、ここから脱出できるってこと?」
「そうよ、私がさっき魔法をかけて2頭に命を吹き込みました。さ、この2頭にお乗り!」
「でも怖いよぅ、食べられちゃうんじゃない?」
「いいえ、大丈夫。さっきしっかりと手なずけましたから。こっちの子がヒロト、こっちがメグミよ。今名づけたんだけどネ!」
そんなこんなで誠に身勝手なピチピチのウメに従ってモンスター2頭に分乗する複雑な心境のドアーフ達は、ノイシュバンシュタイン城からやっとのことで脱出することに成功したのだった。
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////////// To Be Continued ☆☆☆☆☆




