第149章
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ようやく生い茂る林の小道を抜けて広々とした平地が現れわしたものの、未だに現地民とは会わないばかりか、人口の建物すら見かけていないことにドアーフ一行の不安は募る一方であったーーーー
元自衛官ソルジャー「ナリミーさん、本当にVRコントローラのMAPは合ってます?ちっとも市街地になる気配がしないんだけど。」
ナリミー「はぁ、そうですねぇ……何だか私も不安になって来ましたよ……」
元自宅警備員ハイジ「やはり安物買いの銭失いって言葉通り私達は時間をたっぷり浪費しているわけですよね!それもこれもウメ婆さんの甥っ子であるVRツアコンでもある王様☆宗谷が安物VRシステムで構築したおかげですね!」
ウメ婆さん「甥っ子のせいで何だかワシまで責任感じて悪い気がしてきたのぅ……甥っ子のせいでどれもこれも予定通りには行かない。でも楽しいから良いのジャ!」
キャン「そうですわねお祖母様ッピ!カラオケバトルとかすんごい盛り上がって楽しかった〜わわWAWAWA〜ップ!」
ソルジャー「それは能天気なお二人だけだと思うぜ、俺は。」
ナリミー「ええと、まもなくあの突き当たりに見える塀に沿ってを右に進むと、どうやら市街地の入り口があるそうです……ここを右にと、ああ、この塀は一体何処まで続いているのですかねぇ……それにしても長過ぎて先が霞んで良く見えません。万里の長城ってこんな感じですかね?」
CAリンリン「そうね、こんな感じだったかも。でも私達お腹減っただけじゃなく足もガクガクで限界に達しました〜〜〜」
ケント「先ほどからちらほら看板が見えて来ましたが、どこも「ナリミアン@コーポレーション」と書かれたものばかりです。やはりこのツアーのマシンシステムのメーカーだから宣伝活動としてあちこちに使っているのでしようか……」
ハイジ「気をつけましょう、何だか僕には罠が仕組まれているような臭いがするのです。」
ソルジャー「え、お前っていつからそんなに鼻がきいてたのかな?」
ナリミー「まぁまぁいいじゃないですか、私も先ほどからお腹減ってきましたので、とりあえず先を急ぎましょう!」
ようやくこの島で初めての人工物らしき物に出会った一行は少しだけ安心した雰囲気。何処までも続く白壁の向こうはまだ何も見えては来ないがきっと街並みがあって美味しい食堂が点在しているだろうと皆の期待は高まるのでした〜〜〜
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仙人フォーはクレソン女史が言い放った言葉に驚愕していた。だって王様☆宗谷が私利私欲のためにこのVRツアーを企画してワシラを連れて来たとばかり思っていたのだが、ところがそれがよりによってあの紳士的な温厚な態度が好印象の元精神科医であるナリミーこそが、このVRツアーを牛耳っているキーマンなのではないか?とフランク伯爵の調査団が結論付けている事に動揺していたーーーー
仙人フォー「なぁフランク、何かの間違いではないかい?お前さんや王様☆宗谷ならワシラを騙して欲張って独裁者になろうとするのも分かるが、まさかナリミーさんが……」
フランク伯爵「いや、それは心外だな!ま、今迄の行いからすればお前がそう言うのも否定できないがな。しかしワシも調査団の回答に納得できず自らも調べてみたのだが、調べれば調べるほど怪しげな情報が上がってくるので戸惑っているんだ。順序立てて説明してみると、そもそも宗谷はナリミーの精神科の患者として診察にかかっていたのだが、どういう風の吹き回しなのか、こともあろうに患者の経営するVRツアーに参加したのが不思議だった。確かにナリミー本人も宗谷の経過を確認するためとは言っていたが、普通なら患者を信頼して同行など考えはしないだろう。」
仙人フォー「そうじゃな、ワシならば真っ先に断るな。」
フランク伯爵「第二に、宗谷が使用しているVRツアーのマシーンなのだが、「ナリミアン@コーポレーション」という装置メーカーのものらしいのだ。VRツアー分野では有名なメーカーのようだが、最近訴訟問題が多数取り沙汰されているそうなのだよ。どうやら不具合によりツアーに行ったきり帰ってこれないという事故が絶えないらしい。そこで我が調査団が内部事情を精査したところ、なんとこの会社の筆頭株主は、何を隠そうナリミーさんだったんだよ。言うなれば彼がオーナーの会社である。そこから私はある推測をしたのだが、もしかすると宗谷に自分のメーカーの最新装置を格安に売り込んどいて、我々を使って実験台として利用しているのではないか、とね!」
仙人フォー「そんな酷い事を……人は見かけに依らぬもんじゃな。するとこのツアーでログアウトできないのもこの最新マシーンの欠陥から来ているのかもしれないぞよ。中々王家へのルートにたどり着かなかったのも、海賊船に捕らえられたのも、VRコントローラーに致命的な欠陥があるのでは?」
フランク伯爵「一概には言えないが、状況証拠からその疑いはあるかも知れない。」
クレソン女史「私もこの話を聞いてからツアーのリーダー格として信頼していたナリミーさんには悪いのだけれど、何となく疑いの目を向けるようになりました。そこでこちらの世界に何百年と暮らしているフォーさんならば、この世界を守ってくれ真の平和へと導いてくれるだろうと我々は思案したのでして、そしてこちらのタイムリープ先へお連れした時代なのです。」
仙人フォー「しかしワシをマドレーヌとして騙したのは何故じゃ?」
クレソン女史「はい、順序立てて説明しますと、始めはマドレーヌとしての演技でフォーさんの気を落ち着けてから、この真実を打ち明かすほうが驚きが少ないだろうと……ほら貴方は大分ご長老でございますからね。」
仙人フォー「またまた人を年寄り扱いしおって。ワシ自身もまさか仙人になってから歳を取らないのが不思議なくらいじゃが、まだ老いぼれてはおらんからご心配には及ばんよ。よし、話を要約するとナリミーが営利目的で患者の宗谷に近づいて自分とこの装置を売り込んでツアーを企画させてひと稼ぎした、ってところかな。それにしてもこのツアーのドアーフ達はどんな人選で決まったのじゃろか?」
フランク伯爵「まずナリミーは当然装置メーカーの同行者として、ウメ婆さんは宗谷の近親者なので暇だから連れてきたのでしょう。元自宅警備員ハイジはネット界の無駄な知識が利用できるだろうと、ソルジャーは体育パカなのでいざというときの体力に頼ろうとしたのでしょう。あと元キャバ嬢のキャンはナリミーの行きつけで知り合ったのではないかと。そして謎なのは元CAのリンリンと彼氏のケントなのですが、特にこのツアーに参加する必要性に乏しく、ツアーする中で何かと別行動をとりがちでしたから、もしかするとナリミアン@コーポレーションの産業スパイか、或いはCIAか何かが潜入捜査している可能性も考えられるのではないかと……」
仙人フォー「うむ、ワシも薄々二人のことを潜入捜査官ではないかと疑ってはみたものの、カラオケバトルなんかであんなに酔っ払ってさらけ出していた経緯から、ちと違うのでは?」
クレソン女史「まだ分かりませんが、それは一時的なカモフラージュの可能性さえしますよ。」
こうして3人はこのツアーの本来の目的が思いのほか違う方向に向かっているのではないかと不安が募るのであったーーー
///to be continued!!!☆☆☆〜〜〜




