第146章
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マドレーヌ扮するクレソン女史はフランク伯爵との交信を終えると、仙人フォーの待つロビーへと歩き出す。さぁ此処からは私の腕の見せ所ね!仙人フォーのヤツをどう調理してくれましょうか!〜〜〜
仙人フォー「おやおや、随分と支度が戸惑っておられたので、ワシはここでついウトウトとしてしまっておったよ。」
マドレーヌ扮するクレソン女史「すみませんね、ついお友達と出会ってしまって立ち話が長引いてしまいまして……御礼と言ってはなんですが、今からリストランテでご馳走させていただきますわ。さぁどうぞこちらへ。」
マドレーヌはそう言うと仙人フォーと連れ立って正面エントランスにチャーターした馬車へと乗り込む。
マドレーヌ「このロッジのある丘の北斜面の林の中に閑静なフレンチが楽しめるリストランテがございますの。私も特別な時にしかそちらにお邪魔しないのですが、平日は席が取りやすいので予約できましたの。」
仙人フォー「ほぅ、フレンチでゴザルか、それはそれは楽しみじゃ!ワシはこう見えてもフレンチには目がないのじゃからして、今宵はじっくりと堪能させていただこうかな。」
マドレーヌ「あら、そうでいらしたの?では何がお好きですので?」
仙人フォー「そうじゃなぁ、まず鶏が好きじゃな、カシワ。それとチョレギサラダ、あと、あの赤いスープなんだっけね、おうボルシチじゃな、あれにパクチー添えると合うんじゃな。それから生春巻きとデザートはずんだ餅なんかどうじゃ?」
マドレーヌ「え?ええと……こちらのリストランテでご用意出来るか分かりませんがお聞きしますね。しかしかなり多国籍に富んでいる内容ですわね。貴方にお聞きした私がパカでした。それじゃ今夜はシェフのオススメでお願いすることにしましょう……」
仙人フォー「久々のフレンチじゃから楽しみだのぅ!」
今宵のディナーを楽しみに待つ仙人フォー。しかしフランク伯爵からミッションを課せられているマドレーヌは話の切り出し方を伺っている。さぁそろそろ始めるかーーー
マドレーヌ「以前にも貴方のような突然の訪問者が来られたことがありまして、彼のお話ですと渡された玉手箱を開けた瞬間にゲームからログアウトした筈が違うタイムリープ先へと飛ばされて、こちらに到着なさったようなんです。」
仙人フォーはふと、このクレソン女史そっくりのマドレーヌと名乗る貴婦人があたかも自分の出来事を予想していたような話を始めたことに怪訝な表情を浮かべる。
仙人フォー「へぇ、そんな事が御座ったのですか。でもワシはちと違うぞよ。この海を泳いでいたらココの砂浜に漂着したのですからな。」
今度は何故か仙人フォーが嘘をつき始めたことにマドレーヌが動揺する。フォーは一体何を企んでいるのかしら?この場合どう話を引き出そうかしら……
マドレーヌ「そ、そうでしたのね……それはそれは大変な思いをされたようで。でしたらそのうち貴方は元の世界に帰らなければなりませんね。或いはゲームのログアウトが出来るような方法を探さなければなりませんから。」
仙人フォー「そうじゃなぁ、そのうちワシラの仲間が迎えに来るじゃろから心配はしとらんがな。ま、こちらの世界も快適そうじゃから当面はお世話になりまする。」
マドレーヌ「ワタシとしては構いませんが、ご家族がご心配なさるんではなくって?」
仙人フォー「家族?元々ワシはVRツアーの中の世界に数百年前に登場してからというもの家族などおらぬがな。強いて言えば我が住まいの近くの城主フランク伯爵が長年の悪友と言うべきじゃ。なにせ彼との付き合いが一番長いのジャから。」
マドレーヌは思いのほかの展開で自分のミッションに到達し始めたことで心のなかでガッツポーズをかます。
マドレーヌ「フランク伯爵という方が貴方の長年の友達なんですね。何だか非常に興味深いのでよろしければその方とはどのようなご関係なのかお聞かせ願いませんか?」
中々探りを入れてくるマドレーヌの様子に仙人フォーの中である疑惑が持ち上がる。だってあまりにもクレソン女史にそっくりである点、執拗にフランク伯爵の事を聞き出そうとし、私の過去のことをほじくり返そうとする点などが不可思議でならない。ここはもう一丁とぼけた答えをかましてこちらも探りを入れてみようかーーー
仙人フォー「ん〜、今の気分からするとアイツの事を話す気になれんな。なにせせっかくのフレンチコースディナーが不味くなる!」
あらら、弱ったわねぇ。このジジィ想定外に中々気難しいんだから。さてどう話を戻したら良いものか……
マドレーヌ「そ、そうなのね……でしたらお話を変えましょう。先ほどVRツアーの世界に数百年前にここられたと仰られていましたが、何故そちらの世界にお越しになられたので?」
世仙人フォー「召喚されたんじゃ。この世界が乱れていた当時に王室からのご要望でワシの過去の経歴から選ばれたようだ。そして当時は旧友フランクも今のようなエゴの塊ではない素晴らしい夢と野望を持った青年じゃった。世界平和のためにね。ワシも彼のために当時ドワーフとして何かと尽くしてきたのジャが、いつしかフランクも伯爵となり懐も豊かになるや、以前の平和な世直しという目的をすっかり忘れちまったようで領土獲得に躍起となり、王室の権利でさえ剥奪しようと企て始めたのじゃ。そして誰もが人が変わったフランクによって奴隷の如くこき使われたことで、やがて各地で民衆の暴動が巻き起こり、その火種から遂には戦争にまで発展していったのじゃ。やがてワシはフランク伯爵をビジネスパートナーとして見切りをつけると、仙人フォーとして伯爵から遠ざかって行ったーーー」
ふむふむ、意外にもこのジジィは話し出すと止まらないのか結構ネタバレしてくれるわ。さぁもっとほじくりかえしちゃいましょ!
マドレーヌ「そうだったのですね、貴方が王室からの依頼でせっかく平和な世の中を築いてきたのに結果として戦争まで勃発したなんて、これじゃまるで逆の状況ですわねぇ。貴方もさぞかし悲しかったでしょう……」
仙人フォー「そうじゃ、だからフランク伯爵の話などせっかくのこのフレンチコースの席で話したくはないのじゃ。」
ほれほれ、人が隙を見せた振りしたらこの女結構食いついてきよるのぅ。貪欲なところも顔だけじゃなくクレソン女史そっくりジャ。さて此処からじゃ、彼女の正体をほじくり始めるかな、白魔術でもかけてみるか。ヒヒッ!
///to be continued!!!☆☆☆〜〜〜




