第141章
久しぶりに親友ジョーと出会ったフランク伯爵はジョーと共にクレソン女史も来ていると聞き、意気揚々とクレソンの居る砂浜へとドラゴンちゃんにお願いして向かってゆくのだったーーー
フランク伯爵「なぁジョー、それにしてもあんなに気難しいクレソン女史がなんだってお前さんの為にこの楽園までの最短ルートを案内してくれたんだろうね。」
ジョー「気難しい?僕にはそんなふうな対応しなかったけど、何かの間違いでは?或いはお前さんが嫌われているのかな、ハハッ!」
フランク伯爵は思い当たる節があり過ぎて次の言葉が出ないでいる。そうこうしているうちにドラゴンちゃん親子は砂浜に差し掛かるとクレソン女史を探す。
ジョー「あ、いたいたほらあそこ。あれ待てよ……誰かと一緒だが……え、何でフォーが此処に居るの?」
砂浜に降り立つドラゴンちゃんに乗ってきた一行にクレソン女史と仙人フォーが驚く。と、いきなりフランク伯爵が仙人フォーに食ってかかる。
フランク伯爵「なんだってお前がクレソン女史と一緒に居るのだ?王様☆宗谷とグルになって僕らを騙してきたくせに!」
仙人フォー「フランクや、変な言い掛かりは辞めたほうが良いぞよぅ〜お前さんはウメ婆さんから王家に伝わる大事な「人生履歴台帳」を盗んだのだろ?白状せいっ!」
フランク伯爵「へ?何のことやら……何それ。」
仙人フォー「とぼけやがっていいから早く出しやがれ、何処に隠したのじゃ!」
フランク伯爵「だからぁ、何のことでしょうか。私にはさっぱりわかりかねますが。」
クレソン女史「ほらフォーったら、お辞めなさいな。フランク伯爵は何も知らないようですし、貴方の勘違いなんじゃありません?」
仙人フォー「あれぇ〜、クレソン女史はあんなにフランク伯爵の事を嫌ってたのに、急に何故かばうのかな?おかしいですねぇ、もしや真犯人は貴方では?」
クレソン女史「私が持ってたらさっき話したみたいに私の人生履歴が暴露されてしまうことを恐れたりしないでしょ!」
仙人フォー「それもそうじゃなぁ……じゃ、ジョー。お前なのか?」
ジョー「あのう、お言葉ですけどそういう貴方が一番怪しいと僕は思うのですが皆さんもそう思いますよね?」
その場のフォー以外の全員とドラゴンちゃんが首を縦に振る。それを見た仙人フォーがたじろぐ。
仙人フォー「な、何をバカなことを。ワシが隠し持っている事など不可能なのはじゃ、王家に居たときだからウメ婆さんのところまで飛んで行けよう筈ないじゃろ!」
フランク伯爵「お前さんなら可能だよ、だって私の白魔術をコントロール出来る唯一の存在なのだからな。」
仙人フォー「ムムッ、なんですとぅ?お前さんは白魔術を行使出来るから王家から領土をさんざん奪ってこれたが、ワシにはそんな事出来よう筈が無いんじゃ!だからワシは盗んではおらんぞよ。」
仙人フォーがそう言うが先か、彼のポケットの穴から何かの鍵が砂浜に落ちる。クレソン女史はすかさずそれを手に取ると鍵のネームプレートを読む。
クレソン女史「これは……確かウメ婆さんの泊まってたホテルの名前……何故此処にあるのかしら?ってことはよ、アンタが台帳を盗んだということに自動的になるわよね!」
皆の視線が仙人フォーに集まるやたじろいだフォーが後ずさりする。
仙人フォー「い、いやそのぅ……これは違うんじゃ、前泊まった時に返し忘れちゃって……」
クレソン女史「あらそう、じゃあ直接ウメ婆さんに事情を聞いてみてもいい?あ、もしもしウメ婆さん?貴方が台帳をなくした時に泊まったお部屋の鍵は何号室でしたか?やっぱり。うん、犯人は分かったのででは後ほど。」
フランク伯爵「もしや今VRコントローラで通話した相手はウメ婆さんで?」
クレソン女史「そうよ、それでね、このキーには205号室と書かれて居る。そしてウメ婆さんが宿泊したのも205号室で、その部屋の鍵も見つからなかったそうなの。台帳を保管していた金庫の鍵とも連動しているから間違いなくこのキーね。そして仙人フォーが持っているということは必然的に台帳を盗んだと断言できますわね。」
仙人フォー「そうかなぁ。でもクレソンや、もしワシではなかったら君の個人情報などの履歴が世の中に知れ渡ってしまう事になるが、大丈夫かな?」
クレソンが一瞬ギクッとたじろぐ。
フランク伯爵「それはお前がその内容をバラさなければそんなことにはならないよ。お前さんは昔からいい奴だからそんな事は良心の呵責から出来ない筈だよな?」
仙人フォー「ま、お前さんの詐欺まがいの悪事についても全て台帳に記載されているから、これが出回ると一番マズイのは君の方じゃないかね?」
フランク伯爵「ムムッ、フォー、お前って奴は……」
すると、その様子を見ていた母親ドラゴンちゃんが後ろから仙人フォーの首根っこをくわえて振り回すと、フォーの着ていたコートのたもとから、なんということでしょう、台帳が落っこちたではありませんかッ!これには一同度肝を抜かれる。
ジョー「ほうらこの通り、コレは何ですかぁ〜?やっぱりお前さんが盗んだという証拠に違いありませんね。」
仙人フォー「ヘンッ、バレちまっちゃしょうがねぇ。そうじゃよ、ワシが盗み出したのじゃよ。これさえあれば誰もが俺に楯突くことなどできやしないからねぇ!
だがなその台帳が君たちの手に渡っても、お前らの過去についてはしっかりと調べさせてもらったからな、全てワシの頭の中にインプットされているのじゃ!いいかい、バラされたくなかったら今日から俺の言う事を聞けッ!」
一行は仙人フォーを睨みつけるものの、半ば手も足も出ない状況に陥ったのだった。
するとどうしたというのでしょう、母親ドラゴンちゃんは仙人フォーのコートの首根っこをくわえたままの状態で上空へと舞い上がるや、子ドラゴンちゃんを連れて何処かへと消え去っていったではありませんかーーー
その後暫くしてからウメ婆さん一行がクレソン女史のVRコントローラで通信した位置情報をもとにこの場所を突き止めると到着した。ようやく盗まれた台帳が再びウメ婆さんの手元へと収まる。
ウメ婆さん「取りあえず台帳が戻ってきたので一件落着じゃな。仙人フォーが我々の人生履歴を見たとしても、あ奴のもうろくした頭の中にそう永く残ることなど不可能じゃから心配するなって!」
それを聞いた一行が安堵の表情を浮かべている。
フランク伯爵「それにしましてもフォーの奴、ドラゴンちゃんに何処まで連れて行かれちゃったのですかな?」
ウメ婆さん「きっとフォーは甥っ子の宗谷の前に突き出されるのじゃ。そうなれば裁判の結果こちらのVR世界からは完全に追放されてしまうのじゃろうがね。」
元自宅警備員ハイジ「ということはですね〜、それってもしやログアウト、という意味にもなりますよね?
もしそうだとしたならば、彼が一番得をしたことになりますよ!何故なら我々よりも先にこのVRツアーからログアウト出来たって事になり、いわゆるそれって「すごろく」で言うところの「あがり」という事だからねッ!」
一同はハイジの話を聞いた途端に嫌な脱力感にさいなまれるのであった。もしフォーが意図的にこれを仕組んだのであれば、我々は彼のログアウトに利用されただけなのだからーーー
///to be continued!!!☆☆☆〜〜〜




