第138章
クレソンはフランク伯爵に老いぼれ呼ばわりされて罵倒された事を根に持っていた。
そして夫の王様にフランクをこのVRツアーゲームから追放するように相談することを画策するのであった。
一方その様子をまじまじと目の前で伺っていた仙人フォーといえば、フランク伯爵がゲームから追放された暁に残されるであろう彼の資産を狙っていたのだった。
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仙人フォー「クレソン王妃、フランク伯爵があなたに対して行った侮蔑について、許してはなりませんぞよ。本来であれば王妃にあのような行為をなさった場合、極刑に処されても当然だと思われます。しかし私めからのお願いですが彼とは幼なじみ故、どうか極刑にだけはなさらないでくだされ……ま、このゲームからの追放が妥当な線かと考えておりますが如何でしょうか?」
クレソン王妃「そんな事、王様が判断することですから知りません!それにも増して私の恨みの原点は、そんな事で始まっているわけではありません。私のフランク伯爵に対する憎しみは元夫のネロ伯爵がアイツのせいで戦火の中命を落としたことから始まっているのですから。」
クレソン王妃の言葉の重さがフォーにも重くのしかかってきた。この人は本気でフランク伯爵を潰そうとしているのだと……仮にも私はフランクと幼なじみ。これまでに数え切れないほどの理不尽なやりとりをお互い演じては来たが、本音のところ悪友といった類であり、クレソンのような恨みの感情など皆無であった。そのフランク伯爵が完全にこのVRツアーゲームからログアウトさせられてしまったら、ちょっと寂しい気さえする。これは難解なことになってきたぞーーー
仙人フォー「そうですか、大変な思いをされていたのですね、クレソン様。ならば彼のことについては私めにお任せ下さい。私は今から王様とこの件について直談判して参りますので、しばしお時間を頂けませんか?」
クレソン王妃「わかりました、よろしいでしょう。くれぐれもフランクには厳罰をと申してください。」
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行く先を告げないクレソン王妃の四頭立ての馬車を見送った仙人フォーは、もと来た道を辿って城へと向う。道すがら大道芸人達が皆を笑わせていた。どれどれ何をやっているのだろうかとふと人混みの合間をくぐってのぞき込むと、何とドラゴンちゃんヒロトとジョーの奴が一緒に皿回しをしているではないかッ!
仙人フォー「なんだよお主はジョーじゃねぇか!お前もついに王家へのルートを攻略したんだな、ところでお前ら何やってんだ?」
ジョー「フォーなのか、まったくお前って奴は人を利用して自分だけのこのこと先回りしやがって!しかし今言ったのは本当か?此処が王家へのルートって話は。」
仙人フォー「お、お前って奴はなんにも知らねぇで此処まで辿り着いたのかよ、ハハッ、お前らしいぜ!ほら、あそこの丘の上に見える城が王様の居城だぞ!」
ジョー「ウッソ、ホントなのか……ならばこうしてはおれん。おいヒロト、お前は此処でお留守番しておれ。なぁフォーや、今から俺を王様に会わせろ!」
仙人フォー「ん、なんで?俺に何の見返りもよこさずに何故俺がお前を王様にご紹介しなきゃならんのだ?」
ジョー「お前そゆこと言うなよぅ〜ほれ、昔から仲良しだったじゃねえか、お前良いのか?お前があの頃人魚のコスチュームで三人娘と踊ってた時の画像を拡散されても?」
仙人フォー「ちょ、ちょっとまったあ〜っ!どうかそれだけはご勘弁を、わかったよぅ、案内するからさ、ほらこっちこっち……」
しょうがなくジョーに言われるがままに王様の居城へと向うフォーは、それでも昔からの旧友に再会できたことに心から安心した気分でもあったーーー
正門の門番に事情を話すとすんなりと中へと通される。すると何処から情報を得たものだろう主治医ミケロッティ伯爵と、給仕で王の娘クラリが待ち構えていた。早速VRコントローラで何処かに彼らの到着を通信している〜〜〜
主治医ミケロッティ「これはこれはフォー殿、お帰りがお早いようで。ところでクレソン様はどちらに?」
仙人フォー「おそらく郊外のリゾートの別邸へ向かわれたのだろう。それよりもワシらは王様との大事な密会があるから案内しろ!」
仙人フォーの不敵な態度にいささか不満な表情を浮かべながらも王様の城を目指す一行。クラリはジョーに城の庭園や湖の事をツアーガイドする。
やがて王の城に入ると回廊を上がった奥に位置する王の間へと二人を招き入れる。いつもながら綺羅美やかな調度品がうず高く鎮座する迷路のような王の間を奥へと進む。そして突き当たりの壁際まで到着すると今度はクラリが何かしらVRコントローラに向かって話す。すると彼らがいる床のエリアがせり上がり始めたではないかッ!天井がスライドし、解放されたその階上へとせり上がると、フロアに到着した。そこは王の間とは異なる見晴らしのよいスカイラウンジであった。そのバーカウンターに人影が見られた。一行が近づくと仙人フォーが驚いて目を丸くする。だってそこにいたのはあの宗谷だったのだから……
仙人フォー「お、お主は宗谷なのか?一体なんで……」
宗谷「ようこそ、我が家へ!ようやくご到着だね、フォー。そしてジョーも!」
仙人フォー「しかし以前私がここに参った時のあの王様は何処におるのじゃ?」
宗谷「そうだね、君が驚くのも無理はないね。それでは私がこのVRワールドの王座についた経緯についてから説明しようか。私が今回の企画であるVRツアーをすることになったのは、私が王様に召喚された事に始まった。その頃の王様はあのフランク伯爵との領地争いによって大分気を病まれていたものだ〜〜〜〜」
〜〜〜宗谷の回想〜〜〜
王様「私はこれまでの永きにわたり平和の名の下に君臨し続けて来たものだが、もう私の余命は間もなくしておしまいになってしまうのだ。
しかし悔やまれるのは私利私欲の塊のフランク伯爵が白魔術を駆使して我が領地ばかりか全ての権限を私から奪取しようと画策したことが発端だ。
もしそれが実現してしまったら、ワールドの人民は皆、永遠に彼の奴隷として利用されてしまうことになろう。ましてや我が王家が存続出来る筈など無い。そこでだ、我々王族の血筋でアチラの世界に居る人物から人選し、宗谷君、君に行き着いたのだ。
君はVRやAI研究において卓越した見識を持ち合わせているばかりか、これまでの人生履歴台帳の記載内容から正義感に満ち溢れてた人物、とされていた。そこで王族会議の選考で君を召喚することになったのだよ。」
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宗谷「それからというもの、私は王座に就くにあたり共に未来を築く事が出来る者達を探し回ったのさ。
そしてVRツアーを企画してメンバーを選考し、ドアーフとして能力を発揮してもらうことで最終選考を実施している次第なんだ。ところがフランク伯爵の奴は何かにつけて我々の事を邪魔するものだから、メンバーの団結心も次第に薄らいでいった……」
仙人フォー「そうだったのか……ところでその後、王様はどうなった?」
宗谷「その後間もなくしてお亡くなりになられたのだが、私の開発したAIによって王様の脳内記憶を全て電脳として保存してある。よって王様の意思は永遠に健在であるとも言えよう。」
仙人フォー「なるほど、流石は宗谷君。しかし王家へのルートの攻略が私が最初なんて、ドアーフの彼らは本当に適任なのだろうかね?」
宗谷「もっともこちらのVRワールドで体験した数々の国々を股にかけ様々な知見が糧として蓄積されれば、ワールドを運営する材料として有益だと考えているから、此処に到着するしないは特に問題ではないのだからね。」
ジョー「じゃあ、我々が到着したのも無駄って話?これじゃああんまりだよ……」
宗谷「ジョーさん、そうではない。もし君が望めば、君にも王家の要職に就くことも可能だと考えているんだよ。
実はね、君たちの行動履歴は全て逐次VR管制室で監視させて頂いているから、そのデータをもとに常に吟味して居るんだ。
もちろんフランク伯爵の慇懃な行動履歴についても存じ上げているから彼が此処に訪れても私は会わないように仕向けたのさ。」
仙人フォー「ところでクレソン王妃からの言付けられておるのじゃが、フランク伯爵を厳罰に処してほしいとね。」
宗谷「私はこう考えているんだ。どんなに悪いやつでも本当に根っからの悪者などいない、とね。だから彼は今頃この王家へのルート探しの旅の暁に城まで辿り着いたにも関わらず王様に会うことすらできなかった事で、今までの自分の行いについて振り返っている筈だろう。人を差し置いて自分の私利私欲の為だけに生きてきたちっぽけな人間だってことに気付かされたのではないかな。」
主治医ミケロッティ「あのう、王様。お言葉ですが私が彼の親友としてこれまでの彼の考え方を見てきましたが、彼は中々骨のある人物ですよ。特にビジネスの場面においての手腕は右に出る者がいませんからね!」
宗谷「その点については理解しておりますよ。だから私は彼のもとにこのVRツアーのドアーフ達を預けたのです。そして仙人フォーを先導者として行動を共にするようにも画策してきました。勿論そのためにはお祖母様に動いていただきましたがね!」
仙人フォー「お、お祖母様って事はおウメさんのことか?そうか、お前はウメ婆さんの甥っ子だから常にVRコントローラで通信していたのじゃな……」
すると宗谷は傍らからVRコントローラを取り出すや、何処かに交信し始める。
宗谷「アーアー、あっお祖母様ですかぁ?今仙人フォーさんが来られたので、そろそろドアーフの皆さんをこちらにお連れして頂けませんか?」
ウメ婆さん「宗谷や。それがな、今ひじょーにマズイことになっておって……ダメなんじゃよ。」
///to be continued!!!☆☆☆〜〜〜




