第134章
フランク伯爵はクレソン女史と別れると、王室の自分の住処の棟へと向う。もう一度彼女の言った言葉を繰り返しながらも、気になって仕方ないーーー
クレソン女史の言う「王室から二度と出られない」とはどのような意味を持っているのだろうか?確かにこちらの王家へのルートについても世界中くまなく探しても見当たらず、魔石を8つ集めても誰もたどり着くことができなかったのだから。例外として、仙人フォーだけがたどり着いたようだが……
なにせ魔法使いだと当人が言っていたからな。しかし私が昔こちらの世界へと召喚されて間もなくしてVR Missionに表示された内容だと、確か仙人フォーは「神の化身」だと言ってたっけ。そしてどんな事があっても彼に従えとも言ってたな……しかし私はあのわがまま放題のジジィの体たらくさに我慢しきれず、ある時点で遂に彼を裏切ったのだった。そして自分の城内に半ば幽閉するような形で彼からの権限を奪ってた。もし彼が本当に「神の化身」めあるとすれば、王家へのルートの往復すら容易くこなせるに違いないのだが、いざこの状況になってみるとあながち本当だったとも思える……
フランク伯爵は部屋の手前まで来てみると、先程VRで消えたはずの主治医の格好をしたミケロッティ伯爵と給仕クラリが何事もなかったかのように出迎えるのであった。
主治医役ミケロッティ伯爵「おかえりなさいませ、ご主人様!よくご無事で!」
いささかフランク伯爵の出方を伺っている様子がどうしてもわざとらしく受け取れるのは一体何故だろう。クラリは黙ってミケロッティ伯爵の影からこちらの様子を伺う。
フランク伯爵「君たちねぇ、勝手にあの場所から消えるなんてどういう事なんだい?クレソン女史が全て暴露してくれたぞ!どうせお前らはバーチャルな存在なんだろ?」
主治医役ミケロッティ伯爵「クレソン女史?何をおっしゃられているのか私どもには理解できません。当然我々は実在しておりますが……」
フランク伯爵「だって……おい、ミケロッティ伯爵、お前何とぼけてるんだよっ、さっき私を湖畔の食堂棟に案内したのは君たちじゃないか!そして王妃であるクレソン女史に引き合わせた後に君たちは私を取り残して勝手に消えたんだろッ!」
主治医「王妃のクレソン?そして私がミケロッティ伯爵?一体何のことでしょうか?確かに湖畔には食堂棟があり、王妃はそちらの一室にいらっしゃいます。しかし彼女はあなたの言うクレソンというお方でもなければ、とても他人様にお会いさせられる精神状態では御座いません……」
フランク伯爵「なんだって?また私を騙そうとしてるのだな?もうその手には乗らないぞ!」
主治医「そんな…滅相も御座いません。多分あなたがお会いした王妃に騙されたのでしよう。しかしあなたをあの場所に連れて行ったというのは一体何者なのでしょうね。我々とそっくりな容姿の誰か、と言うことですよね……クラリ、君は何か知ってるかい?」
クラリ「私は……何も知りません……」
クラリの様子が動揺しているように見えたフランク伯爵は勝ち誇ったようにまたもや主治医に問いかける。
フランク伯爵「ほらね、彼女は正直でしたねぇ〜!きっと何かを隠しているんだよ。だから自信なさそうな表情だ。やはり君たちは実体のないアンドロイドか何かなんだろ?」
///to be continued!!!☆☆☆〜〜




