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第133章

 余りにも唐突な王妃のフランク伯爵に対する暴言に一同は青ざめる。当のフランク伯爵にも心当たりはないが、今までの略奪ともいえる王家の領地を乗っ取ってきた経緯から恨まれる可能性は否定できないでいた。王妃の娘クラリがフランク伯爵の気持ちを読み取ると、フォローする。



クラリ「お母様今日はご機嫌がよろしくないようですね。出直してまいりますわ。私達は別の部屋でお食事をとりますからお一人でどうぞ。」



王妃「いいえ、そういうことでは無いの。此処に居るこの人はかつて海賊のように人様の土地を強奪して来た悪党なのよ。何故この屋敷にこんなならず者を通したのかしらね!」



 王妃はフランク伯爵を睨みつけながら侮辱し続ける。と、フランク伯爵はこの王妃が何処かで出会ったことがないかと記憶を振り返る。やつれて別人のようだが、よく見るとクレソン女史によく似ているではないか!



フランク伯爵「もしかして貴方は以前私めとお会いしたことがありますか?私には以前お会いしたクレソン女史に思えてしょうがないのですがね。」



 すると先程までフランクを罵倒し続けていた王妃が急に黙り、何事もなかったかのように目の前に並べられているランチの料理に手をつけ始めたではありませんか……今の問いかけをスルーしたということはもしかして図星なのか?とフランク伯爵が王妃の様子に釘付けとなった〜〜〜


 気まずい空気の中、3人は王妃をそっと見守りながら、一旦別室へと退散する。




ーーー☆☆〜〜☆


主治医「皆さん、これが対人恐怖症の典型的な症状の一つで御座います。人に対する恐怖のあまり攻撃行動でガードし、そして言いたい事を全て吐き出すと何事もなかったかのように振る舞う、中々厄介な行動ですよね。」



フランク伯爵「主治医、本当にそうですか?私には王妃の行動にも一理あるのではないかと思えましてね。それと、貴方は我が親友のミケロッティ伯爵にそっくりですし、王妃がクレソン女史の名前を出した途端に黙りこくるのも不思議だと思えてしょうがありません。もっとも、クレソン女史には娘さんはおりませんがね。」



 するとクラリが主治医に対して疑問を投げかける。



クラリ「ねぇ、どういう事なの?あなた何か隠し事してるんでしょう?となると、今まで私がお母様だと思ってきた人はクレソン女史で、主治医の貴方がミケロッティ伯爵?そしてクレソン女史には子供が居ないということは……私は子供の頃から電脳の父と一体誰の子供なのよ?もしかして私もアンドロイドか何かかしら?」



 すると主治医は引きつった表情に無理やり不自然な作り笑いを浮かべながら呟く。



主治医「おおお、お嬢様、そんな事は、だだだ断じて御座いませんよ……こちらのフランク伯爵の勝手なご想像でありますから


お気になさらないで下さい。ハハハ、フランクさんも人が悪いなぁ。」



フランク伯爵「へぇ~、益々怪しいですねぇ!主治医さん、ほらあなたの口元は笑っていても眼が怖いですよぅ〜、下手なお芝居はおやめ下さ〜いッ!」



 フランクが嘲笑うように言うと主治医がたじろぐ。それを見たクラリが確信したのか、急に泣きじゃくりながら呟く。



クラリ「なんなのよぅ〜今までのアタシの人生って、これじゃあ孤児も一緒じゃないのよぅ〜アタシが産まれた時からパパは電脳だしママは分からないし主治医は嘘つきだしィ、こんなVRから早く脱出したいよぅ〜〜〜、アッ。」



フランク伯爵「あれぇ〜?今なんとおっしゃられましたか、クラリ様?「こんなVRから脱出したい」とか、ということはこれは全て仮想空間ってこと?」



 すると何故か主治医とクラリがギクッとマズイ表情を浮かべると、2人は下から透明になってゆくや〜〜〜あっという間になんと消滅してしまいましたッ!あまりの出来事にフランク伯爵は呆気にとられるばかり〜〜〜




ーーー☆☆☆☆☆ー


 不思議な出来事に困惑するフランク伯爵はもう一度自分の頭の中でこの事態について整理してみる〜〜〜


 そもそもミケロッティ伯爵の家で気を失った私が気づいた時には王家に到着していて、2人が消滅したのが事実としてあり、今私はVR空間に居るのだと確認できた。しかし現状がバーチャルであるとしたら果たしてここが王家であるかも定かではなく、或いはVR空間ではなく私はまだ気を失っているのであって、嗚呼……もう私の理解の範疇を超えているぅ〜〜〜


 そうだ、私がいくら考えても埒が明かないのならば、いっそ先程私を罵倒したあの王妃に聞くしかすべはなかろう。まさか彼女までがVRでは無かろう、そうと決まったら……と、早速フランク伯爵は食堂へと駆け出してゆくーーー






ーーー☆☆☆☆☆ー



王妃「あら、まだ何か私に用事でもあって?」


 フランクの今置かれている事情を知ってか、先程とはまるで別人のような王妃の低いトーンに驚きつつ、質問を開始する。



フランク伯爵「失礼ながらご質問させて頂きますが、あの2人が消滅してしまいました。こちらはVR空間なのでしょうか?」



 王妃はおおよそ予測していたかのように諦めた表情で話し始める。



王妃「ええ、そうよ。では正直に申しましょう、貴方の言う通り、こちらはVR空間で御座います。しかし王室には違いはないのです。貴方のお考えの王室とは少々形態が異なりますが。


 ちょっと話は複雑になりますが、こんなにお婆ちゃんになった私は貴方の言うクレソンに間違いございません。あの主治医役はミケロッティ伯爵で、そして今の夫は電脳のみが存在している王様です。あの娘役のクラリは王様の娘という設定ではありますが、既に私がコチラに嫁いだ時からそうなっておりましたので何処のどなたかも存じ上げてはおりません。

 貴方もご存知の通り私には子供はおりませんので、クラリは当然私の子供ではありません。そして彼女はかつて仙人フォーが愛した彼女でもありまして、本当のところクラリは一体何歳であるのやら……とても私の子供とは呼べませんよね。きっと彼女は不老不死のアンドロイドなのでしょう。これで概要はお判りね。」



フランク伯爵「ええと、私は仙人フォーの現状をコチラではお伝えしてはおりませんでしたが何故ご存知だったので?」



王妃「実は〜、それはコレよ。これがあれば全てお見通しね!」



 そう言うや王妃は傍らの白いハンドバックの中から通信機を取り出して見せるーーーそれは間違いなく宗谷が持参していたものと同様のVRコントローラであった。しかし何故彼女が持っているのだろう。宗谷といえば電脳の王様の声がどうしても宗谷の声にそっくりな事が気になっているのだが……フランク伯爵は王妃に続けて質問を投げかける。




フランク伯爵「このVRコントローラはもしや……つまり、貴方の今のご亭主である電脳の王様についてご質問ですが、王様の声がこのVRツアーを企画したウメ婆さんの甥っ子の宗谷の声にそっくりなのです。まさか王様が宗谷だったりはしないですよねぇ?」



王妃クレソン「そうねえ、ま、そういう事にしておきましょうか。そして私はこのラビリンスにて囚われの身。こんな事になるのが分かっていたら、あの時欲張って王室に来るんじゃなかった。そうなの、私は王様と結託することで国の法律の改正を施行し、貴方の領地の所有権を無効化することで巻き上げよう、と企てていたのです。しかし当初の案は王様のものとして取り上げただけでなく、私の人生まで取り上げてしまいました。要するに王の妻として拘束されてしまったのです……」



 またもや感情をあらわにする王妃クレソン女史を見るに、やはり彼女は自分に対して領地を盗もうとしたやましさがあるからこそ、ついフランクに辛く当たったのだろう、と理解したのでした。そして王様が宗谷である可能性については何故ぼやかしたのだろう……



フランク伯爵「例えば宗谷が王様だとしますと、このVRツアーの企画自体がそういうロールプレイングゲームみたいに思えてしまいますが……まさか違いますよね?」



王妃クレソン「ですから、私も詳細については現時点ではとっても申し上げにくいので〜、ならばヒントだけ差し上げたいと思いますぅ。あなたもご存じのようにツアーの案内役の宗谷君はまだ若く、私を妻にするにはあまりにも年齢が釣り合いませんよね。さらに、宗谷は王様として無理があります。我々が知るかつての王から、たまたまツアーで現れただけのドアーフ宗谷が引き継がれて即位した理由でさえも疑問です。私が宗谷君を見知ったのはたまたまドアーフ御一行がドラゴンちゃんに乗って現れた時にお見かけしただけで、好んで妃を演じる義理もないばかりか、私は結局ただこちらに幽閉されているようなものなのですから。」



フランク伯爵「因みにミケロッティ伯爵は先程VRとして消滅してしまいましたが、実在はしているのでしょうか?」



王妃クレソン「勿論ですとも、ほら、貴方のアレルギーを知って毒をもったのですからね。」



フランク伯爵「え、やはりそうだったのですか、親友に対してアイツめッ!しかし私はどうやってこの場所に連れてこられたのやら……クラリの話だと王家へのルートの途中の雪山で遭難していたのを救助された、との事でしたが?」



王妃クレソン「いいえ、あの主治医役のミケロッティが運び込んで来たのよ。どのように王家へのルートを辿ったのかは定かではありませんけどね。」



フランク伯爵「なるほど、ならばこの王家へのルートは、ドラゴンちゃんに乗ってでも来れるような場所なのかもしれませんね?因みに貴方はどのようなルートで来られたのでしょうか?そして貴方は好きでもない電脳と暮らす囚われの身に不満があるのに、何故脱出なさらないのですか?」



王妃クレソン「それは……貴方にも直ぐに分かりますよ、だって帰れないんだもん。王室から無事帰還した仙人フォーはね、ほら、仙人であり魔法使いだから帰れましたけど、我々凡人にはこの城に張り巡らされている結界を解くことなど不可能なのですから、諦めるしかないでしょ!」



 新たなる真実を知ったフランク伯爵は、王妃クレソンのその言葉に凍りついたように固まってしまうのでした〜〜〜






///to be continued!!!☆☆☆〜〜〜



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