第13章
VRツアーに参加したとある精神科医があちらの世界でドアーフってどういうこと?! 第13章
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
Scene.21
その居室で眠りに着いたドアーフ一同は明くる朝を迎える。
寝ぼけ眼の一同の前に従事が現れる。
「夕べはさぞ大変だったでしょうね。それでは間もなく朝食の支度が参りますのでしばしお待ちを。」
すると10名の従事がワゴンに沢山の料理を携えて入ってきた。
良い臭いに我を忘れて一同が朝食の支度を待ちわびながら白いクロスのテーブル席に着く。
パンプキンスープがそれぞれの白い皿に注がれてゆく。
フレッシュオレンジがグラスに流し込まれる。
焼きたてのクロワッサンが配られてゆく〜
腹ペコで我慢の出来ない元自宅警備員のハイジがそれにむさぼりついた!
やがて白いスーツの長身の紳士が現れた。
フランクだ。
空いた席に着くと皆が食事を嗜んでいることも構わずに話し始める。
「以前あなた方にお話しました、この世界に私が償還された時のことですが・・・
例のフォー仙人に償還された私は世直しの為にフォーの特訓によって「白魔術」を身に付けると、あちらの世界で養鶏場を経営していた手腕から農業開拓を経てこの地の生活基盤を確立していきました。モンスターによって退廃の極みであったこの世界では農業が安定するに従い「悪い気」で漲っていたこの地に平静の時が訪れ、やがてモンスターは退散して行きました。
それからこれまで長い平和の時代が訪れたのです。そこで退廃の元凶となった王家の親族である宗谷との話し合いが開かれていったのです。今後の王家の存続について。
そして今やエゴの塊となっていた宗谷が私の成功を羨むことによって彼の中にある悪巧みが起こり始めたのでした。」
ドアーフ一同は話半分の様子でひたすら朝食にありついていた。
唯一ウメだけがフレッシュジュースをすすりながらジッとフランクを見据え続け聞き入る。
「実は宗谷は国王の親族ということを利用し、「悪い気」によってこの世界を牛耳ろうと画策していたのでした。
それと申しますのも・・・話は長くなりますが、宗谷が王家の親族となったいきさつについてお話しましょう。
彼は王の2号さんの、もとい、2番目の奥さんの連れ子でありまして・・・正妻との険悪な争いの渦中において出産した宗谷に英才教育を施して伝授した「黒魔術」の「悪い気」によって、この世界を暗黒社会へと導こうとしていたのです。」
ウメは納得いかない様子で問いかける。
「宗谷は私の孫ですよ。列記とした私の娘の息子であります。ですから2号さんの子供ではない筈なのですが・・・」
「ええ、そちらの世界ではね。ですがね、ウメさん。これは事実なのです。宗谷は言うなれば悪の化身です。そして貴方の脳波をも操って・・・まるで貴方にお孫さんがいたようにさえも仕組んでしまっているのですよ、VRによってね。」
一同はその話を聞くや驚愕する。
黙ってはいられない様子のキャンが切り出す。
「何ナノ、一体?あんたって、朝から縁起の悪い話なんかしちゃってさ!大体アンタこそ詐欺師じゃないのよ。いいから早く報酬を目の前に出しなさいよっ!」
フランクは横目でキャンにニヤリと目配せすると、尚も話を続ける。
「私もフォー仙人によってこちらへ償還された、いわば一人の被害者であるのですよ。あなた方と同じように、人選された一人なのであります。そしてあちらの世界に未だ帰り着けないままでいるのですから・・・
ある意味あなた方とは運命共同体であることに変わりはありません!」
すると、居室の扉が開く。
そこに宗谷が現れる。
VRツアーの説明会以来の宗谷の登場に一同はハッとするーーー
Missionを送信し続けた宗谷との対面はこの世界に来てから始めてのことであったのだから。
元精神課医のナリミーが宗谷を問い詰め始めた!
「一体君って奴は、我々をここに送りつけた挙句に、自分は雲隠れでMissionのみを私達に指令し続け、一体どういうことなんだね?」
「そうですね、しかし私もこちらの世界であまりウロウロしていると追っ手にやられてしまうので・・・こちらの世界では私は悪者の扱いでありますから。ネッ、フランク卿!」
急に矛先を振られたフランクが我慢も限界の形相で言い放った!
「宗谷、オマエって奴わぁ!モンスターを利用して我々の生活を苦しめておきながら、一体何をたくらんでいるのだ?」
「え、ああ。それはね、「黒魔術」を駆使すれば僕の理想的な社会が構築されるのですからある意味当然の成り行きに過ぎませんよ。
大体貴方が描いている世界が果たして誰にとって幸せな社会なのでしょうかねぇ?
「白魔術」だかなんだか私は存じませんが、それこそ民衆を束ねて、そのピラミッドの頂点に君臨して人々を奴隷のように牛耳ろうとしているに過ぎないのではないでしょうか?
少なくとも私の考える理想郷とは、貴方のそれとは全く正反対の、人々に平等な社会の構築が目的なのですからーーー
人々は努力した分を均等に分かち合い、人よりもより豊かな生活を望むならそれ以上の努力をすれば何れ叶う・・・そういう共存共栄の社会なのです。例えモンスターが存在しようとも、彼らにだって生きる権利は平等にある筈じゃないでしょうかね?」
「な、何だと!モンスターが悪事をすることを肯定しようとしているのか?オマエって奴は。」
「悪事ですか、へぇっ!では言わせて貰いますが、この世界においてモンスターがいつ悪事をしたというんですかね?」
「ムムッ、君はそんなことも気付かないほどの悪人として染まってしまったのかねぇ。君にとっての理想のほうがよっぽど不可解だね。」
「これこれ宗谷や、アンタって子は私を差し置いて一体何処に居たんだね?」
「えっと、お婆様、僕はあなた方を常にモニターしていたのですよ。片時も忘れたわけではありません。貴方がたが危険な目に会わないように常に監視させていただきましたから。」
「宗谷よ、あんたはモンスターによって人々を傷つけているそうだけど、一体何の目的で?」
「いいえ、そんな事はありません。フランクの言葉にだまされてはいけません!」
「じゃ私達はいつになったらこの世界からあちらの世界に戻れるって言うのよ!私達にとってあちらの世界の生活のほうがどれだけ幸せに暮らせていたのか解らないの?」
一同はその二人のやり取りをただ見守ることしか出来ないで居たのだった---
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
////////// To Be Continued ☆☆☆☆☆




