第128章
ナリミー達のおかげで無事に神への捧げ物にならずに救出されたフランク伯爵。しかし疑問が残るのは、何故ナリミー達はフランクがこちらのタイムリープ先に来ているのだと知っていてスポット的に火あぶりにされる直前のタイミングでの救出が出来たのかということだ。
中々多岐にわたるタイムリープ先の中から選んだスポットに焦点を当てることなど自らの経験値としては不可能であり、何かしら誘引される事象が発生しないと困難であるのが定説である。そこには何かしらの必然性が備わっているのではないかと…………
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ナリミー「お目覚めですかフランクさん、良かったです無事で。」
フランク伯爵「こ、此処は……どちらですか?」
元精神科医ナリミー「ご心配なく、安全なエリアですよ。最もタイムリープ先としてはあなたを火あぶりにしていた先住民の居る世界のままですがね。貴方の願いのお力で、私達を呼んだことで強制的に転送されて来たので、詳細までは分かりきれておりませんが、彼らが容易く我々を探し出すことが困難な場所ではありましょう。」
フランク伯爵「それって、我々が旅したVRワールドに戻ったほうが安全だったじゃないですか。仙人フォーの魔力ならば何とかなるんじゃないですかね?」
ナリミー「あのお方の魔力なんぞヘンテコな人魚のコスチュームなどのアイテムが空から落ちてきたり、お下劣なだけじゃないですか。」
フランク「まあそう言われてみたらそうだね。」
ナリミー「ですがフォーさんは現在コチラには来られておりません。何故ならば彼は我々を差し置いてまでして、例の王家へのルートを昇って行かれたのでしたから。今頃は王家から領土の覇権を分けて頂いているのではないかなと……」
フランク「な、なんですとぅ!あの裏切り者めがワシラに先だってクエストをクリアしたというのですか?もしやあ奴のことだから何かしら悪いことを企て王家に交換条件でも突きつけたに違い無いな。」
ナリミー「でもフランクさんも我々を裏切ってまで王家へのルート探しには躍起になっていたではありませんか?」
フランク「へッ。ま、そんな時代もあったかもしれませんがもう忘れてしまいましたッ!それより何故私の救出のタイミングで来られたのですか?」
ナリミー「実はある島で我々はドラゴンちゃんに分乗して島から続く王家へのルート探しを行っておりましたところ、いつも通り急遽VRモニターが表示されまして。
なんとそれが今回の救出ミッションだったのでした。その際にフランクさんが火あぶりにされかかっている映像が映し出されていましたので、コレは大変なことが起きているな、と思った瞬間に強制的に貴方の居た場所へと転送されたのでありました。こんな現象今までに経験がありませんでしたが、一瞬でコチラに飛ばされて皆動揺しておりましたが……」
フランク「僕はただ天に向かって誰か助けてくれと祈っていただけでした。そしたら君たちが舞い降りてきて、まるで奇跡の瞬間とはこのことだと感謝したのです。成長した僕を見てくださいッ!」
ナリミー「ああ、そうなんですね……それより此処の土地勘が誰もが持ち合わせてはおりませんので、何とか元のVR世界に戻していただきたいのですが、また前回同様にお願いして頂けますか〜?」
フランク「えっ、そう申されても私はただ天空を見上げてお祈りをしただけなのでして。」
ナリミー「じや、それをもう一回。」
フランク「しかしどのように祈れば良いのかと……」
ナリミー「ですから、前回同様に。」
フランク「と申されても困りましたねぇ。でもこちらの世界に住まわれても中々住みやすいかも知れませんよ。ハッ、そうだ思い出した!ジョーだよ、ジョー。アイツを探そう!」
ナリミー「は、何のことですか?誰ですそれ?」
フランク「実はワタシもジョーという友達にこの世界へと召喚された次第でしたね。彼が最初に捧げ物として選ばれたのですが、彼は王家から「3つのお願い」スキルを与えられておりまして、困った時にはそのスキルを使うことで救われる、というものでした。そして火あぶりにされる直前にお願いスキルを使ったそうです。そうしたらですよ、こっちはたまったもんじゃあありませんよ!誰だって心の準備というやつが必要でしょ?なのに奴は何の前触れもなくそのスキルを使った為に、いきなりコッチにふっ飛ばされてきたんだからね!そりゃ驚くや、心臓バクバクだわ、頼むよもうッ…」
ナリミー「そうでしたか、それは災難でしたね。じゃジョーさんを探しに行きましょう!」
フランク「それが駄目なんだよ。第一せっかく先住民の住むエリアから遠ざかったばかりなのに、あそこからそう遠くない場所に彼が居るということと、彼を逃がしたまではよかったのだが、仙人フォーと間違えて幼なじみだからという理由で交渉に乗り出したら、容姿がソックリな全くの赤の他人だった為にミイラ取りがミイラになってしまった状態に成り下がったのでありまして。その際にジョーが直ぐ側で隠れているのに大声で彼に助けを頼んだので嫌われたに違いありませんよ……」
ナリミー「そうでしたか、ならば仲なおりすればよいだけの話ですね。そして最後のお願いを彼にしてもらえば我々は元のワールドに帰ることが可能、そういうお考えなのですね。」
フランク「ハイッお察しが宜しいようで、その通りで御座います!」
ナリミー「あなた本当にそんな事が可能だと思いますか?」
フランク「は?と、申しますと?」
ナリミー「よくお考え下さいよ!もしアナタがジョーさんの立場だとしたら、大事な「3つのお願い」スキルをですよ、時分を裏切った相手の為に使うことなんて出来ますかな?」
フランク「う〜んと、多分ムリ。」
ナリミー「ダショ、そうですよねぇ。だって自分には何のメリットもないわけですからね。ましてや彼の行く手にはもっと恐ろしい試練が待ち受けているやもしれないのですからね!」
フランク「そうだよね、絶対使っちゃ駄目だ、この場合。ありゃッ?でもわかんないじゃんそんなの、もしかしたら赦してくれて一緒に帰ろって言うかもしれないじゃん。」
ナリミー「ならばアナタ一人で探してきてみてはどうでしようか?私達はアナタを無事に救出するだけのミッションを無事にクリアしたのですからね!その貸しはまだ返していただいてはおりませんのでね。」
フランク「なんだよぅ〜わかったよう……じゃあジョーの大好きなカラオケフェスティバルバトルを開催するって聞いたら絶対に乗ってくるはずだもんねえ〜〜〜!」
すると周りで疲れ切って寝ていた元キャバ嬢キャンが乗り出してくるではないかッ!
キャン「なんですとぅ〜〜〜、カラオケフェスティバルバトルを開催するってのはホントにャピッ?」
フランク「おう、キャンじゃねえか、久しぶり!そうだよ、お前も大好きなカラオケ大会の始まりだい!当然お前も参加するよな?」
キャン「当たり前でしょう、フランクだってキャンの居ないカラオケフェスティバルバトルなんて考えられないでしょう♡〜〜プッピキピーッ!」
フランク「ま、そ、そんなとこだな……て、テレルじゃねえか、やめろよぅ~〜〜」
キャン「なに照れてるんですか、お馬鹿さんねッ!チュピッ!」
フランク「や、やめろよぅ人前で〜〜、ほらソルジャーも見てるじゃねぇかよぅ……」
元自衛官ソルジャー「あ〜あ、みーちゃったー!朝からデレデレしちゃって、やめてくださいよ。」
フランク「やぁ、ほんの出来心だったんだヨ、ワリィワリィ……つうか、コイツがチューしてきたんだよ。オレは被害者なの。」
キャン「何よぅ〜か弱き小娘に酷いでシュルルルンッピ!ソルジャー、アンタもカラオケフェスティバルバトルに当然参加するわよねぇ?」
ソルジャー「オレは音痴だからどっちでも良いけど、仙人フォーがいれば喜ぶんだろうなぁ……」
そこへのそのそとやってきたのはウメ婆さん。
ウメ婆さん「どうしたと言うんじゃ朝っぱらから井戸端会議かい?なにっ、カラオケフェスティバルバトルジャと、やったろうじゃないのよぅ、上等よ!」
と、いう訳で結局のところジョーが大好きなカラオケフェスティバルバトルをネタにジョーを誘い出すどころか、ナリミー一行は皆ノリノリで参加することになりました。そして3頭のドラゴンちゃんに分乗してチラシを上空から配布してジョーを誘い込む作戦を取ろう、となりましたーーーー
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翌日の夜、セッティングを終えたナリミー達は大音量スピーカーテストをする事になりました。先ずはウメ婆さんがいつものお得意の十八番を披露すると、遠方からもザワザワと人々が集まり始めました。そして客席からものど自慢を募ると、我先にと観客が押し寄せたのでありました。それを遠くからフランク伯爵は双眼鏡でジョーが来るのを監視していますーーー
ところがジョーは中々現れませんでした、が、思いもよらぬ展開がそこには待ち受けていたのでした〜〜〜
長老ペペロン「おい君たちワシのことを知らないとは言わせないぞよ!のど自慢で鳴らしたワシのビブラートをご披露しようじゃないか〜〜ッ!」
現れたなんとあの悪しき事で名の知れた先住民、長老ペペロンの登場で場の空気が微妙になってきたのでしたーーー
長老ペペロンの配下たちが他の参加者を押しのけてペペロンをステージへ担ぎ上げるや、ウメ婆さんの曲に合わせてマイマイクで歌い始めたではないかッ!
あまりの音程の外しっぷりと、仙人フォーソックリの容姿に誰もがもう疑いを持ちませんでした〜〜〜
ウメ婆さん「ちょいとあんた、こんなとこで何やってんの?ちゃんと人魚のコスチュームまで履いちゃって、ドユコト〜〜〜?」
長老ペペロン改め仙人フォー「ウメ婆さんや、お久しぶり〜〜ッ、ワシャ王家へのルートと間違えてウッカリコッチの世界に迷い込んじまったんじゃが、あんたら何で此処に?」
キャン「ちょっと、アンタホントはフォーなのに、何で幼馴染のフランクを燃やそうとしちゃったの?」
仙人フォー「だってあいつのことキライ。昔っからイジワルなんで丁度よい機会かなと、いっちょ燃やしてやろうかなと……まだコッチに居るのかい?」
///to be continued!!!☆☆☆〜〜〜




