第113章
「アンタ柴犬のくせになんで喋れるのよゥッピ!だったら 名前くらい名乗りなさいよぅルレッヒッ!」
不気味に思うキャンが思わず柴犬に叫ぶと、その犬の足が止まる。
そして振り向くや、
「オイラの名前だと?仙人ローダに決まっとろうが。
この間「スナック南国」で盛り上がったのに忘れたか?」
この柴犬の言葉にドアーフ一行は驚く。
「だって……ローダは仙人フォーにそっくりな容姿だったし、さっき仙人フォー本人が認めていたのよッペ〜……」
「何を言っとるんじゃ、オイラは昨日も今日もこの格好のままじゃよ。
さては、お主たちこの地下都市で大量生産されているVRアバターに騙されてはおらんかな?」
ーーー***ー
ナリミーは今や柴犬と化したローダの話から推測すると、実は我々ドアーフはVRアバター達に騙され、何かしらの理由で利用させているのかもしれないと思いを巡らせ始める。
「なるほど、仙人ローダさん、すみませんでした。
でも、その場面がVRだったとは信じがたいですね。でも、確かめる方法がありますか?」
ナリミーが尋ねると、ローダは興味深そうに耳を垂れて考え込んだ後、
「お主たちが持つ魔法の宝玉を使えばよいのではないか?
VRではない現実の世界では、その力が影響を及ぼすはずだ!」
ナリミーは柴犬仙人ローダの言う魔法の宝玉が魔石のことを指していることだろうと察する。
しかし、何故我々が魔石を持っていることを仙人フォーでもないのに知っていたのかは疑問が残ります……
ナリミーはローダに向かって、今は手元に魔石を持ち合わせていないことを告げます。
「今魔石は持ち合わせていません。でも、他の方法もきっとありますよね?」
そう尋ねるとローダはしばし考え込んだ様子で、
「それは困ったなぁ… もしかすると、この地下都市にあるあの魔法の泉に行ってみれば、別の方法での可能性が見つかるかもしれんがね!
泉の水はVRではない世界の真実を映し出すと言い伝えられているから、何かしらのパワーを秘めているに違いない筈さ。」
そこでドアーフ一行は柴犬仙人ローダに先導されながら女神の泉に向かう事にしましたーーーー
ーーー***ー
到着した一行。早速ハイジは泉に向かって問いかけます。
「この中で一番嘘つきなのは誰ですか〜ッ?」
すると泉の水面は無反応で波打つ事もありませんでした。
ドアーフ達の背後の草むらがガサガサと揺れるや、そこから四人組の何だか安っぽいキャップとサングラスで変装した黒装束の連中が現れる。
次の瞬間、何と湖の真ん中から噴水が湧き起こるや、黒装束の四人組目掛けて放水するではありませんか!
これには四人組もあっけに取られるばかりでした……
ドアーフ一行は驚きながらも、噴水が湧き出る様子に目を見張りました。
黒装束の四人組もびっくりして後ずさりする中、柴犬仙人ローダは水面に向かって怒りの表情を浮かべます。
そして柴犬はまるで噴水を止めるために誰かに合図をしているような、怪しげな仕草でお手を振りました。
すると噴水は突然止まり水しぶきが散る中、再び静寂が戻ります。
「どういうことジャ?一体お前たちは何者なのジャ?」
ローダが厳しい態度を変えぬまま尋ねると、黒装束の四人組のリーダーが答えました。
「我々はこの地下都市の秩序を守る者たちだ。
しかし最近私達の女神の泉が何者かによってコントロールされているとの情報が入り、調査に来た次第だ。
お前は誰の断りもなく噴水を勝手に止めたのを、今、目の当たりにしたのだが、君のその行動の意図を知りたい。」
すると柴犬仙人ローダがハイジの方に駆け出してゆくと、何やらヒソヒソと彼の耳元で囁いている。
「おい、決して奴らの言う言葉を鵜呑みにするではないぞよーーーー
女神の泉とは、いっつも、誰にとっても正直者なんだからジャ。
きっと奴らはVRアバターであるから、正体がバレた時点で何れ消滅するのであろう!」
ーーー***ー
柴犬で仙人のローダは、安っぽい黒装束のVRアバターと思しき四人組と対峙しながら、深いため息をつく。
するとドアーフたちに近づき、あることを伝え始めるのでしたーーーー
「みなさん、この地下都市で起こっていることは、君たちにとってあまりにも奇妙であり、且つ危険なことばかりなのです。
我が「スパイラルワールド」の住民たちの共有財産でもある、何でも願いを叶えてくれる言い伝えの「女神の泉」が悪用され、さらにはこのような黒装束のアバターたちまで現れるてなんというか…これは事件ですっ!」
彼の言葉に、一同が静かに耳を傾けていた。
「そもそもVRアバターとは、我々の脳波を読み取り、その情報をもとに私たちの記憶の中から人物の容姿や行動パターンをチョイスして、本人に成りすます、そういう存在なのです。
つまり、彼らは我々の意識の中にある虚像を借り、実体として現れることが可能なのです。
だが、その存在はあくまで現実ではなく、私たちの心に深く刻まれた思い出やイメージによって変幻自在に姿を変えることができる、心理的に親近感を利用するアバターなのです!」
ローダはドアーフ一行に静かに語り聞かせました。
一同が驚きの表情を浮かべる中、彼はさらに続けました。
「ですから、我々は彼らの言葉や行動を鵜呑みにせず、冷静に状況を見極めなければなりません。
そして女神の泉の乱用やこのような黒装束の者たちの出現は、きっとVRアバターによるものである可能性が高いのです。
我々は彼らの罠にはまらず、真実を見極めなければなりませぬっ!」
ーーー***ー
柴犬仙人ローダによって正体を明かされたためか、VRアバター達はそそくさと其の場から姿を消していった。
彼らの目的はというと、この地下都市「スパイラルワールド」へと我々を導き、なんと、奴隷として終身隔離するためなのでした。
そこで親しみのある既知の人物に成りすます手法を用いて、我々を捕獲しやすくしたのでしたーーーー
しかし時既に遅し、もうこの地下都市「スパイラルワールド」からの脱出を試みることは不可能なのだ、と仙人ローダからの説明によると、ナリミーはハイジとキャンに、ワールドの外界からの救援を手配するための相談を開始します。
話がある程度まとまったところで、ナリミーはすぐに行動を起こしました。
「そうか、このスパイラルワールドから脱出することはとても難しいかもしれないが、外界からの救援を呼ぶ手段があるはずなんだね。
ハイジ、キャン、さぁ一緒に考えよう!」
ハイジとキャンも同意し、一同は即座に行動に移りました。
ナリミーは外界への通信手段を探し、ハイジはスパイラルワールドの地図を分析します。キャンは周囲のセキュリティを調査することになりました。
しばらくの間、一同は懸命に手を尽くしましたが、外界との通信手段を見つけることは容易ではありませんでしたーーーー
「もしかしたら、外界との通信手段を持っているのは、この地下都市の支配階級ではないのかな?
もし彼らが外界とのコンタクトを持っているのなら、それを利用して救援を呼ぶことができるかもしれない。」
一同がナリミーの提案に賛成する中、彼らは地下都市の支配者たちとの接触を試みることを決意しました。
すると〜〜〜〜
どうしたというのでしょう、いきなり3人の安いサングラスと思われていたレンズに、なんとVRミッションが表示され始めるではあ〜りませんかっ!
〜〜MISSION〜〜
ドアーフ諸君、お久しぶり!
君たちの困難の様子はとくと拝見させて頂いた。
そこで一つ注意点なのだが、目の前の仙人ローダ、こいつに惑わされるではないぞよ。
ローダの居ない隙に皆で人魚のコスチュームに着替えて湖の底にある洞窟から脱出するのだ〜っ! では。
〜〜〜〜〜〜〜〜
一同は驚きの表情を浮かべながら、突然表示されたVRミッションを見つめました。
そしてそのミッションの内容を確認しました。
「これは一体…どゆこっピピピ?」
キャンが首をかしげながら言いました。ハイジも動揺しているナリミーを何とか落ち着かせようとしています。
「ナリミー、ここは運を天に任せて、今はミッションの指示に従いましょう。
もしかするとローダがいない間に脱出する、まさに今が唯一のチャンスなのかもしれませんからね。」
一同は迷わずミッションに従い、湖の中に潜り込んでいきました。
水中で人魚のコスチュームに着替えると、スイスイ泳ぎやすくなったおかげで、洞窟の入り口を目指します。
途中ピラニアに襲われそうになったり、数々の仕掛けが待ち受けていたのですが、一行は力を合わせ洞窟の奥へと到達しました。
そして洞窟の奥には明るい光が差し込み、外界への脱出口と思しき場所が見え始めます。
一同は喜びと興奮に満ちた気持ちで、外界への脱出を果たすために一歩を踏み出すのでした。
果たして彼らは無事に外界へと脱出することができるのでしょうか。
VRアバター達が尚もしつこく追って来ているとも知らずにーーーー
///to be continued!!!☆☆☆




